第5回:宮川裕基さん(1期 理系複合・融合人材コース)前半

2021年10月26日

皆様、こんにちは。トビタテ留学JAPAN1期生の齋藤です!トビタテ生の同窓会組織である「とまりぎ」のHPにて、インタビューを通じたOB・OGの活躍を紹介しています。

5回目のインタビューは会宝産業株式会社(以下会宝産業)で働く宮川さんです。会宝産業は主に自動車リサイクル・中古自動車部品の輸出・販売を行う企業で、最近では第2回「ジャパンSDGsアワード」においてSDGs推進副本部長賞(外務大臣賞)を受け、国内におけるSDGs推進のトップランナー企業として、注目を浴びています。宮川さんにはトビタテを通じた留学、今の仕事内容、留学と今の仕事との関係について聞いてみました。

齋藤) お久しぶりです。今日は金曜日の午前中という貴重なお時間をインタビューのために割いてくれてありがとう。

宮川)いえいえ。久々に話せてうれしいよ。

齋藤)初めてお会いしたのは、お互いの留学先フランスでしたね。当時流行っていた「ヤドカリ」を使って、ナントに住む宮川さんのお家に泊めていただきました。

宮川)確か、前日夜に連絡をくれたよね。しかも、いざ会ってみると他にフランス人が二人いて、それ以来会うたびに、事前通知なしに互いに知らない人を連れてくるノリが二人の間でブームだね。

齋藤)あの時は急なお願いで失礼しました。。。それ以来、一緒にジュネーブに遊びにいったり、当時の文部科学大臣下村博文さんがパリにご出張中の際、留学内容のプレゼンを同じ会場でしたり、欧州での接点が多くなりました。

宮川)そうだね。フランスではトビタテの留学派遣生とも仲良くなれたのは良い思い出だなぁ。

齋藤)宮川さんの場合、フランスへの留学に加え、その後東ティモールにも行かれましたよね。今日はその点も含め、留学内容、現在の仕事、留学と仕事内容の関わりについて聞いていきたいと思います。

(左から2番目が宮川さん、フランスナントにて)

留学内容

齋藤)まずは留学の背景や留学の内容について、簡単に教えてください。

宮川)元々所属大学院では機械工学を専門とし、フランスのÉcole centrale de Nantesのダブルディグリープログラムを通じて、当時特に関心を持っていたロボット工学を学びました。

その背景にはロボット義手といった「人の生活を豊かにするものづくり」に関わりたいという気持ちがありました。また、ロボット技術は、超高齢社会を迎える日本を初めとした先進国で今後必要とされる、将来性ある技術なんだろうなと思っていました。

だから、これを勉強しておけば人の生活に役立ち、専門性としても潰しがきくんじゃないかな的な漠然とした考えでした(笑)

東ティモールについては、留学前に「Design for the other 90% 」という本に出会い、技術に対する関心の幅が大きく変化したことがきっかけです。

この本が言わんとすることは「世界中の大半のモノは10%の人口しかない先進国の人間のために作られている」という社会の現状です。そして、取り残された90%の人のための技術とはなんだろうと考えるようになりました。

「人々の生活を豊かにするものづくり」と言っても、自分が関わりたい技術のその先には、一体どういった人がいるのかと自分の中で悶々とする思いが出てきたんです。

これまで自分が目にしてきた物の大半は10%の先進国にあたる人を対象に作られたものであった一方、物以前に必要とされている技術が届いていない人がいるのだなと。

そんなことを考えていたら、残された90%の人々がいる国に飛び込んでみたいと好奇心が芽生え、友人から紹介を得て縁があった東ティモールに飛びました。

写真:ロボット工学を学びにフランスへ留学された

齋藤)なるほど。そういった背景で東ティモールに留学されたんですね。ちなみに東ティモールではどういった活動をされましたか?

宮川)持ち運びできるバックパックラジオの開発を行う団体でプロボノ活動を実施しました。

スマホと小型の送信機とアンテナさえあればラジオ放送ができるため、現地で入手できる資材を用いて、格安で、すぐに放送できるラジオ災害時にも役立つラジオキットが役に立つのではないかというアイデアから立ち上がったプロジェクトです。

現地で入手できる資材を使って実際にアンテナを調整したり、現地住民に技術ニーズの聞き取りを行ったり、このプロジェクトを通じて、途上国におけるものづくりを考え、実践する機会を持ちました。

帰国後も、途上国向けのものづくりへの関心はますます高まり、フィリピン、タイ、インドネシアなど様々な国に行きました。その間にまた一つターニングポイントがありました。ものを作るという観点でしかこれまで物事を見ていませんでしたが、途上国のどこに行っても目にするゴミ問題から見えてくる、後始末の必要性です。

社会を豊かにするために作られたはずの自動車や家電、生活廃棄物が大量に捨てられ、そこに残ったのは、異臭が漂い、周辺に住む人々の生活環境に被害を与えるゴミの山。

これがものづくりの結果かと。


何か役に立ちたいという考えできっと人はものづくりをしているのに、行き場のない途上国のゴミ山を見て、どこにもぶつけようのない、もどかしい気持ちになりました。

だから、いつかは自分が見てきた息を飲むような美しい自然環境を守りながら、雇用も作りつつ、本当に必要な技術を必要としている人に届けるような仕事がしたいなという気持ちになったんだよね。

齋藤)そういう文脈で、自動車リサイクルを扱う会宝産業へ入社されたんですね。

▶︎後編に続く。