第5回 宮川裕基さん(1期 理系、複合・融合人材コース) 後半

2021年10月26日

現在の仕事

齋藤)会宝産業では現在どういう仕事に携わっていますか?

宮川)各国の顧客との中古部品販売の交渉や、自動車の違法廃棄が起きている国において、環境保全と雇用促進を目的に、工場設備、生産工程、技術・経営ノウハウを総合したリサイクルシステムの構築に携わっています。

齋藤)今は2年目だと思いますが、1年目から同じ仕事をしているのですか?

宮川)いえいえ。配属先の海外事業部は、海外での自動車リサイクル事業展開を中心となって推進する部署です。まず私自身が自動車解体技術を知る必要があり、1年目はとにかく現場で自動車の解体作業について一から学びました。

2年目に入ってからは、仕入れを除く、生産、在庫管理、販売に到るまで幅広い業務を経験しつつ、JICAさんから業務委託を受けている自動車リサイクル技術研修の業務統括責任者を担当させてもらいました。

具体的には、マレーシアにおける自動車リサイクル法を2020年に制定すべく、マレーシアの行政官、大学教授、民間企業に対して、リサイクル技術研修を提供します。

その他には、自動車リサイクルという社会的にまだまだ認知の低い自社事業の内容を国内外に発信すべく、先輩方の協力を受けながら自社のSDGsへの取り組みをレポートにまとめたり、関連アワードに応募したり、社外発信も積極的に行なっています。

結果、自社のSDGsへの取り組みが特に顕著な成績を残したことから、第2回「ジャパンSDGsアワード」において外務大臣賞を受賞することができました。

写真:マレーシアにて、車のリサイクル技術研修を行なっている様子①

 

齋藤)すごいですね!本当に。

宮川)いえいえ、まだまだ何も残せていないので、これからです。SDGsアワード受賞に関して、世界へ自動車リサイクル事業を展開し、環境保護とBoP層の雇用創出を行うことは、国内では衰退産業となる自社にとっての「生き残り戦略」だと思っています。

だから、必然的に本業を通じた社会課題解決型のビジネスになっているんだと思います。今展開中のブラジルにおける事業では、2022年までにブラジルにて年間10万台規模の自動車リサイクルとリサイクルのエンジニアを15,000人輩出することを目的としています。

こういった途上国での環境改善活動と雇用支援活動が評価され、日本の中小企業としては初めて国連開発計画から「ビジネス行動要請(Business Call to Action)」にも昨年認証されました。

写真:マレーシアにて、車のリサイクル技術研修を行なっている様子②

齋藤)おめでとうございます!4月からは3年目に入ると思いますが、どういった仕事を任される予定ですか?

 

宮川)弊社はインドで合弁会社をこの春に設立予定で、大気汚染が深刻な社会問題となっているデリーにて自動車リサイクル工場を立ち上げる予定です。海外事業が進んだ際には、現地駐在員としてこれまで学んだノウハウ等を現地移転させることを担当する可能性もあります。

齋藤)大変なミッションではあるけど、やりがいは大いにありそうですね。

留学経験と現在の仕事

齋藤)話を聞くに、留学したことで現在の仕事選びに大きな影響を与えたと思います。

宮川)もしあの時、東ティモールに行っていなかったら、普通に大学院に進学し、メーカーで技術職として働いていたのかなと思いますが、それはそれで楽しい人生を歩んでいたかもしれません。でも、やはり自分の意思で選んできた選択だからこそ、毎日ゲーム感覚で日々の仕事に取り組めますし、今の仕事が楽しくて仕方がないです。


齋藤)そうすると、フランスでの留学経験というよりは東ティモールでの留学の方が印象的でしたか?


宮川)実は、フランスでの留学経験も今の自分に大きな影響を与えると思います。というのも、留学先のコースは、Erasmus Mundusという留学奨励制度に採択されており、世界各国から学生が集まる、自分にとっては異質な環境でした。

写真:フランスでは数多くの国々の人々と切磋琢磨して学んだ

彼らとのコミュニケーションの中で異文化への理解が広がり、それが現在の顧客であるバイヤーや行政官とコミュニケーションを取る中で活きていて、海外との折衝も臆せず取り組めています。

宮川)その他にも、トビタテでは留学中は「とにかく飛び込め」と言われ、パリで当時の下村文部科学大臣宛に留学内容のプレゼンをしたり、会いたいと思っていた本の著者に突撃訪問したり、様々な経験を通じて、たとえ行政官の前でプレゼンするとしても億劫にならなくなった。

ある意味トビタテ事務局の教育方針にうまく私のキャリアが当てはまったような気がしていて、「周りと違っていい」「やりたいようにやれ!」といった事後研修でのメッセージが自分の選択の後押しをしてくれたと思うんだよね。

写真:留学時のプレゼン経験を経て自分と歳がいくら違おうが、プレゼンでも物怖じしなくなった

齋藤)分かるなぁ。私も周りと違っていいというのは今も響いている。最後に、留学になかなか踏み出せない高校生・大学生にメッセージをいただけませんか?

宮川)まずは「やりたいようにやれ!」とトビタテ事務局の皆さんに言われたことをそのまま贈ります。

大学生にはとりわけ、これから日本の国内人口が減る中で、海外人材が国内に増えたり、逆に日本人が外に出ないと仕事にならない環境は確実にくるだろうと思います。

そんな時代に、日本しか知らないのは危機感を持たないといけないのかなと。「親が反対しても、感謝の気持ちと共に受け止め、あとは自分のやりたいことに向かって突き進んだ方がきっと人生楽しい」と伝えたい。

高校生には、部活の顧問や親といった障害がある中で、想いをぶつけて欲しい。今はきっと大変かもしれないけど、周りと違う選択を自分の意思で行い、アクションを起こしたからこそ見える景色がその先にはきっとあると思うので。早ければ早い方がきっといい。

齋藤)高校生・大学生にはぜひ留学に挑戦していってもらいたいですね。今日はお忙しいところ、ありがとうございました!

編集後記
SDGsという視点はここ最近のビジネスのキーワードになっている中、トビタテ生の留学内容はSDGsと親和性があり、社会問題の解決を意識した留学内容が非常に多いです。

トビタテ生の留学プランはSDGsが掲げる17分野、全ての分野を網羅しているのも特徴的です。留学後に社会的ステータスや賃金を考え、結局日系大企業に勤める人が多い中、宮川さんは留学で得た気づきに実直になり、大企業ではできないであろう「想い」を持った仕事や、ベンチャー企業では資金的に難しくてできないこともここでならできると感じ、会宝産業に入社されました。

こういった決断ができることだけでも尊敬の念で一杯ですが、自社のSDGsへの取り組みを加速させるべく、社内外でSDGs推進を行う姿に感動しました。海外事業が大成功されることを祈念いたします!

▶︎宮川裕基さんインタビュー記事前編はこちら