第22回:海原 拓朗さん(理系、複合・融合系コース 8期生)

今回は、8期で香港とアメリカに留学していた海原さんにインタビューしました!留学を終えて社会人となった海原さんに留学時代を振り返って頂きました。

 

インタビューアー:海原 拓朗さん

横浜国立大学 卒業
留学期間: 2018年7月~2018年12月
留学先:香港・香港理工大学
アメリカ・サクラメント、カリフォルニア州立大学

 

留学のきっかけ

川口)インタビューの協力ありがとうございます!僕と同じ高専出身なんですね!

海原)よろしくお願いします。はい、地元の高専で,情報工学を専攻していました。卒業後は大学へ3年次編入をして、電気電子工学を広く学びました。専攻を変えた理由は,ソフトウェアとハードウェアのどちらも理解できるエンジニアになりたいと考えたためです。大学の研究では,双方の学問を学んできた中で特に興味を持った「パワーエレクトロニクス」という分野を選択しました。

川口)なるほど、簡単に言うとどのようなことを研究していたんですか?

海原)電気自動車に搭載されるバッテリに関して,走行中の充電と放電のタイミングを最適化するという研究をしていました。効率よくバッテリを利用できる動力回路の制御方式を考案し,シミュレーションを通じて理論の検証を行いました。

川口)電気自動車、ホットな領域ですね…! 早速ですが、留学のきっかけを教えてください!

海原)長くなりますが…!笑

まず、大学の学部4年に進級するという段階で,将来の進路に関して悩んでいました。電気電子工学という学問は,その多くの技術が社会へ実装されるものですが,その実状を知らずに研究を続けることに疑問を感じていました。ここで,大学院に進学せずに就職するという選択肢を持ち始めます。またそうした葛藤と同時期に,エネルギー問題に強い関心があって,個人的に調べ学習をしていたんです。

 そこで,日本という国がエネルギー利用に関して他国とは大きく異なる特徴を持っていることを知りました。日本は電力の安定供給という観念から震災以降,化石燃料の利用に頼りがちになっていて、その間に欧米では再生可能エネルギーの利用推進へ,政策方針や世論が大きくシフトしています。環境に良いとされる発電事業にお金が流れる動きもあります。一方で持続可能なエネルギー利用という命題に、火力発電が「悪」で、再生可能エネルギーが「正義」という二元論的な認識を持つ方が増えています。私はどの発電方式にもメリットとデメリットがあると考えていて,再生可能エネルギーが果たして持続可能なのか,判断できずにいました。

例えば太陽光発電は、気象条件によって発電量が大きく変動するため、電力の安定供給という観点ではまだまだ課題があります。また,ここ数年で太陽光パネルがハイペースで設置された関係で,製品寿命を向かえる20年~30年後に,一気に産業廃棄物に様変わりするといった問題もあります。

 こうした思考の中で,社会に出る前に日本以外の国に長期間滞在して「今世界はエネルギー問題をどのような認識で捉えているのか」「問題の解決に向けてどのような対策を考えているのか」把握したいと思うようになりました。そのため,大学院へは進学せず,さらに1年ギャップ・イヤーを設けて,その期間で留学をするという決断をしました。

川口)確かに、自然エネルギーには関心があったけど、その視点で考えたことなかったなぁ。言われてみれば確かにそうかも。それで、再生可能エネルギーに関係のある留学先を選んだんですね!

 海原)そうですね、留学では主に2つの地域で活動しました。1つ目はIAESTEという団体を通じたインターンシッププログラムへの参加です。配属先である香港理工大学の研究所で,省エネルギーに関連した技術について研究しました。2つ目の活動として、母校の横浜国立大学の交換留学制度を利用して、カルフォルニア州立大学サクラメント校で環境科学を学びました。サクラメントはカリフォルニアの州都で,エネルギー政策の先進地域であり,持続可能なエネルギー利用について議論したり思考するには最適な場所だと考えて決めました。

 

 

留学の内容

 

香港・香港理工大学

香港でのインターン同期と集合写真

 

 実際に作製した実験装置

 

川口)まず、香港理工大学での留学の内容を教えてもらってもいいですか?

海原)日本と同様に電気自動車のバッテリに関する研究です。日本ではバッテリそのものの運用に向けた制御を研究していたのですが,こちらではバッテリ内部のセル(小さなバッテリ)の制御回路を研究しました。バッテリが充放電すると,バッテリ内部にある沢山のセル間に電圧差やエネルギー残量差が生じ,故障を誘発します。この問題を解決するバランス回路の構成について研究をしていました。2ヶ月間の研修の中で,前半は先行研究や参考資料を読み、シミュレーション解析、後半は実験まで行いました。

川口)すごい!2か月間で実験までやるって大変だったでしょ!

海原)そうですね…でも、実験の最中に,製作した回路にエラーが生じてしまって、それを修正しきれずに研修期間を終えてしまったので、当時は結構落ち込みました。シミュレーションを通じて理解はできたように思えても、実験ではシミュレーションで考慮しきれていなかった現象が生じる場合があることを,身にしみて感じました。それに加えて,研修先は英語でコミュニケーションを取らねばならず,言語上の困難を感じました。研修期間中には自身の考えを指導教官にうまく伝えられず,研修時間を浪費してしまったことが多くありました。

川口)そうだったんだね、2か月でそこまでしてすごいと思うけど(笑)プライベートな時間はどうでした?

海原)参加したインターンプログラムにはヨーロッパの学生が多く参加していて、週末は彼らと一緒に都市部やビーチへ遊びに行ったりでき,すごく楽しかったです。ヨーロッパ出身の彼らはライフワークバランスに関してとても「真面目」で,就業時間は必ず超えずに働いて、日常の余暇や週末を存分に楽しんでいました。自分も業務に根詰めて取り組みがちだったのですが,今後は彼らを参考に,業務と休暇のメリハリをつけていきたいなと思いました。

川口)僕もドイツにいたとき、5時になったら追い出されていたな(笑)研究室の人は、週末に他のヨーロッパの国に旅行に行ったりしてたな~。人それぞれでいいと思うけど、こんな働き方もあるんだと思ったね。

 

 

アメリカ・カリフォルニア州立大学サクラメント校

授業でカリフォルニアの電力事情について発表

 

留学先でのボランティア活動

 

川口)カリフォルニア州立大学では、どんなことをしていたんですか?この大学を選んだ動機も教えてほしいです!

海原)サクラメントはアメリカ・カリフォルニア州の州都で、省エネや環境政策にとても積極的な都市です。2040年までに電力源を100%再生可能エネルギー由来にするという目標を掲げるカリフォルニア州の電力事情に興味がありました。この大学では研究はせず、主に環境科学に関する授業などを5つほど取りました。授業では「究極に持続可能な建物を作る」ことをテーマにしたコンペに参加するためにアイディア出しや議論をしたりしました。また授業と並行して、持続可能なキャンパス作りに取り組む大学機関に所属し、3か月間ボランティアを行いました。

川口)座学というよりはアクティブで楽しそうだね!ボランティア活動って具体的にどんなことをしていたの?

海原)例えば、キャンパス内の落ち葉を集めて発酵させることで発電に使えるバイオガスを生成する手伝いをしました。実際は腐葉土みたいなものを定期的にかき混ぜたりっていう地味な作業なんですけど(笑)他にも、果物・野菜を育てる槽と魚用の水槽の2つを組み合わせ,魚のフンを循環させて野菜を育てる設備作りも手伝いました。

川口)めっちゃ楽しそう!サイエンスの知識を実際に自分たちの手で使って実装して、アウトプットする経験ってあまりないし、そういう経験を通じて環境について関心が強くなりそう。

 

 

印象的なエピソード

川口)印象的なエピソードはありますか?

 海原)11月にサクラメント北部で大規模な山火事(Camp Fire)があって、大学が2週間休講になってしまいました。サクラメント北部といっても実際は200kmほど町から離れていたので私自身に身の危険はなかったのですが、火事の煙に町が覆われてしまって,大学の寮に閉じこもる生活を送りました。

川口)日本でもニュースになっていたよね。あの時期に近くにいたんだね、大変だったね。

海原)カリフォルニアは山火事がよく起こる地域だと知ってはいたのですが,まさかここまでとは…という感じでした…。原因について当時調べてみたのですが「地域の送電設備で生じた火花が有力だ」とのことでした。さらに調べてみると,山火事が長期化した原因に「乾季の長期化」があると知りました。カリフォルニア北部は例年10月ぐらいに乾季から雨季へ移るため,従来山火事は10月以降あまり起きていなかったのですが,この年は12月に入るまで全く雨が振りませんでした。さらには州や設備会社も,深刻化する山火事への対策費用を前年に計上したというタイミングで、予想を超える大規模災害が起きてしまいました。

地球温暖化を示唆する現象は,随所に現れ始めていることをそのとき肌で感じて,災害予防やエネルギー問題解決に向けた取り組みに一層注力していかなければと思うに至りました。

川口)そうだよね、電力設備は特に高いエネルギーを持った電気を扱う場所だから、小さなことでも大きな事故を招きかねない分野でもあるよね。それに、地球温暖化が原因の一つとなると、再生可能エネルギーの推進や,環境にやさしい持続可能な社会のシステムを構築していくことがとても重要になるよね。

 

 

留学後について

川口)帰国した今は社会人1年目ということですが、留学を終えての目標や活動について考えていることはありますか?

海原) 今は電機メーカに勤めていて、発電に関する事業に携わっています。この事業は元々火力発電が主な対象でしたが、昨今の社会情勢を受けて,持続可能な社会を構築していこうと、新しいビジネスを創出していく段階にあります。私はその新事業開拓のグループに加わることによって,会社の新しいビジネスモデルの創出,ひいては社会の持続可能なエネルギー利用の実現に寄与していきたいと思っています。

 川口)日本って、火力発電所に電力の多くを頼り続けていたりと、環境配慮についての世界の潮流と逆の方向に進んでいっているところがあるよね。一気に変えるのは難しいと思うけど、是非地球にやさしく持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいってほしい!

 

インタビューアー:川口 佑磨

佐世保工業高等専門学校 電気・電子工学科 卒業
豊橋技術科学大学大学院 電気・電子情報工学専攻 卒業
City College of New York, Electrical Engineering PhD
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