
こんにちは!『ごちそうさん』のトビタテ10期 近松勇門、「異文化発信」プロジェクト トビタテ10期 山下萌です。先日開催しました、「お米トーク!世界のお米を語る。」の開催報告をいたします!
今回は「異文化発信」プロジェクトと『ごちそうさん』とが共催で、イネ研究に携わっている「お米博士」こと岡本卓哲さんをお迎えし、トークイベントを開催いたしました。岡本さんがなぜイネ、お米を研究するのに至ったのか伺いながら、世界の田んぼを巡り、お米を食べてきたご経験をもとに「お米」の楽しさを再発見してきました。どうぞ最後までお付き合いください!
ゲストスピーカー

岡本 卓哲(おかもと)
トビタテ9期生。フィリピンにある国際イネ研究所(IRRI)に研究留学、アフリカ中部や東南アジアでインターンしながら各地のお米を食べ歩く。現在は名古屋大学大学院生命農学研究科博士後期課程にて化学肥料に頼らない、微生物を利用したイネ栽培の研究を行う。
[聞き手]

Megumi(めぐ)
トビタテ12期。2020年春に小児の心臓手術をテーマに留学予定だった。現在は自分の専門を熱烈に愛しているトビタテ生たちのお話を聞くことが楽しく、トビタテ生の魅力を伝える企画に携わる。

Chihiro(ちーちゃん)
トビタテ8期。2018年夏から北ドイツの都市ブレーメンに1年間留学。留学中より現在、古い建物を使って循環型社会を実現することを目指す。お米屋さんでアルバイトをしたことをきっかけに、お米の魅力に心奪われる。
岡本さんのお米との出逢い、イネ研究の道を歩む
早速ですが、岡本さんはなぜイネの研究をしようと思われたのですか?
東海地方の地元紙である中日新聞に、お米の収量を増やす遺伝子について名古屋大学の研究記事が載っていたんです。それを読んで「すごいな」と、お米の可能性を感じたのがきっかけです。
特別、お米がすごく好きって訳ではなかったんですけど、もともと生物、農学に興味がありました。農学の中で何をやろうかと考えた時に、お米が一番大事なんじゃないかと思ったんです。
お米が一番大事、なるほど。食糧に携わることにこだわる理由があるとのことですが…?
はい、アフガニスタンのかんがい事業を行っていた医師の
中村哲さんの言葉を大切にしています。
道路も交通網も、学校も女性の権利拡大も、大切な支援でしょう。でもその前に、まずは食うことです。彼らの唯一にして最大の望みは『故郷で家族と毎日3度のメシを食べる』です。(アフガニスタンでは)国民の8割が農民です。農業が復活すれば外国軍や武装勢力に兵士として雇われる必要もなく、平和が戻る。『衣食足りて礼節を知る』です。
食べたいものが十分に食べられる世界がやってくれば、みんな豊かな生活になって、それはすごく良いことなんじゃないかと僕自身は信じています。だから自分は食の中でも大事な主食のお米の研究をやっています!
岡本さんの経験を通じてお米の魅力に迫る
世界の稲作・お米事情について
これまで岡本さんが訪れた国の稲作と、その国のお米にまつわる食文化について解説してもらいました。今回ご紹介ただいたのは、フィリピン、インドネシア、タイ、カンボジア、ラオス、カメルーン。田んぼの風景とご飯の写真を見せていただきながら、エピソードを伺いました。

世界遺産フィリピン・バナウエの棚田
フィリピンの稲作は日本と似ています。平野では機械化が進み、綺麗な田んぼが広がります。田舎では、水牛を使うこともあります。 フィリピンの食文化で面白いのは、お米がないと食事とみなさないこと!ハンバーガー屋さんでも多くの人がお米とチキンのセットを注文しているほどです(笑)

インドネシア・ジョグジャカルタの田んぼ
インドネシアの田植えは手植えが多いですが、写真のようにイネがとても綺麗に並んでいます!収穫でも機械を使わないので、ここまで綺麗に植える必要はないはずですが(笑)インドネシアは人口が多いため、今もお米を輸入しています。インドネシアのお米料理としては、ナシゴレン(炒飯のような料理)が有名ですね!

カンボジア・コンポンチャム州の田んぼ
カンボジアの田んぼの特徴は、田んぼの中にヤシの木が残っていることです。ヤシの木から得られる利益を優先して、残しているようです。カンボジアのご飯は、日本料理と似ています。食感は、タイ米(パサパサ)と日本米(もちもち)の間くらいで、甘みもあるので、おかず無しでご飯だけでも楽しめます。

ラオス・サワナケート県の山間地で栽培されたもち米
ラオスの稲作の多くは焼畑で、陸稲が栽培されています。平野が少ないので斜面で育てています。育てているのは、うるち米よりも収量が少ない、もち米です。ラオスは日常の食卓に、もち米が並びます。収量は少なくても好きだから、もち米を食べていると聞きました。麺も、もち米で作られています。もちもちして美味しいです。もち米というと、日本ではお祝いの日によく使われますね。他の国でも、特別なお米という位置付けで食べられることがあります。例えば、タイでは、もち米とマンゴーのデザートが食べられます。

NERICA3の脱穀風景 カメルーン・首都ヤウンデ郊外にて
カメルーンはもともとお米を食べる文化ではありませんが、最近はNERICAというお米が陸稲栽培で育てられています。このNERICAは日本政府が普及を進めてきました。脱粒性が高い種類なので、機械を使わずに手で脱穀することができます。ただ、手作業は結構大変です。
最近はカメルーン国内ではお米の人気が上がっているようです。また北の地方では台湾米が育てられていたりと、カメルーンの稲作については支援した国の影響が大きいと言えますね。
世界のお米は多種多様!
世界に目を向けると、実は日本で食べているお米以外にも赤米、黒米、うるち米、もち米などをはじめ多くの種類があるそうです。
僕の留学先でもあるのですが、フィリピンには歴史ある米の研究所「国際イネ研究所(IRRI)」があります。IRRIでは、飢餓の撲滅を目的として研究されており、「緑の革命」に使われた“IR8”という品種の米もここで生まれました。
お米の種類は、粒の色、大きさに注目すると多様なことがわかります。世界のお米は、温帯ジャポニカ米、熱帯ジャポニカ米、インディカ米の3つに大別されます。日本で食べられているのは温帯ジャポニカ米です。寒さに強くて、食感は粘りが強いのが特徴です。熱帯ジャポニカ米は温帯ジャポニカ米とインディカ米の中間くらいで、リゾットやパエリアに使われる米です。スペインやイタリアのお米料理は少し日本米と似ているかもしれません。インディカ米は長い米で食感はパサパサしています。
気候によって育てられている米の種類も違うんですね。
「緑の革命」とは農業革命のひとつで、1960年代半ばにイネ、コムギ、トウモロコシの品種改良がなされた。収穫量の多い新しいイネの品種が開発され、肥料の投入や灌漑(かんがい)の整備がなされて、東南アジア諸国ではたくさんのお米が収穫できるようになった。
日本のお米の意外な一面!
日本人に馴染み深いお米の魅力。普段、食べていると気づきにくいのですが、それはお米に含まれる豊富な栄養だといいます。
お米はただの炭水化物ではありません。栄養も豊富です。実はタンパク質・ミネラル・ビタミンも含まれます。ちなみに、お米に足りない栄養は大豆を食べると補えると言われています。
昔ながらの日本食で、白米と一緒に大豆食品を食べるのは理にかなっているんですね!
ところで世界の研究と比べると、日本のお米、イネ研究は少し異なるとのことですが?
はい。日本では戦後に米の自給が実現できたので、「減反政策」が取られるようになりました。つまり、多収を目的とした研究が禁止されたということです。これを機に、研究の目的が「多収」から「美味しさの追求」に変わりました。
実は、「コシヒカリ」の美味しさが注目されるようになったのも、このときからです。それまで、コシヒカリは育てにくく、収量が少ないと見なされていましたが、その美味しさが注目されたことで、今では日本一多く育てられるお米になりました。最近では地球温暖化の影響を受けて、「暑さに強い米」の研究・開発も盛んに行われています。
たとえば、富山県の新品種「富富富」の特徴は、コシヒカリの遺伝子が多く含まれていることに加え、その他に4種類の特徴的な遺伝子が交配によって導入されていることです。病気に強い遺伝子や、暑くても米の品質が低下しないようにする遺伝子も入っています。このような気候変動対策(温暖化対策、節水栽培、乾燥耐性、洪水耐性、耐塩性)は、世界の研究テーマとしてもトレンドになっています。
次ページに続く。
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