とまりぎ とまりぎ ートビタテ生の拠り所、トビタテ生の和を作るー

第107回:トビタテ!アフリカ留学特集!第11弾:深内百合子さん【私が欧米留学をやめ、アフリカで得たもの】

2020.10.09

吉田
吉田
こんにちは!トビタテ8期・事務局インターンの吉田です!

先週より再開したトビタテ!アフリカ留学特集!
本日は、南部アフリカのボツワナ🇧🇼 に留学された深内百合子さん(9期・理系人材コース)です!

現在は鳥取大学大学院の農学部に在籍し、植物の品種改良に関する研究に励む深内さん。
1度のトビタテでのボツワナ留学後、二度目の留学を決心したがコロナ禍で無念の帰国。

それでも「途上国の開発に携わり続けたい」と心の炎を絶やさないそんな彼女の留学の決め手は?
留学中の驚くべきハプニングとは?欧米留学をやめアフリカにいった理由は?
などなど、深内さんの留学秘話に迫ります!

20代のうちに1度はアフリカへ行って欲しい

吉田
吉田
百合子ちゃん、本日はよろしくねー!

事後研修以来だね!こちらこそよろしくー!
深内
深内

吉田
吉田
トビタテ生でボツワナに行ってる人初めてかも!ボツワナ留学の決め手は?

ーん、気づいたらボツワナに上陸してたんだよね(笑)でも思い返せば、留学に至った背景は、国境なき医師団としてコンゴ民で活動経験のある母の影響がとても大きいかな。「20代のうちに1度はアフリカへ行って欲しい」って言われて、欧米留学をしようと思ってた私の考えを変えたんだよね。
深内
深内

吉田
吉田
お母様は医療分野に携わられていたんだね。しかもコンゴ民でのご活動経験…

母は「医療は病気を治すことはできるけど、飢餓や栄養失調に苦しんでる人々の問題を根本的に解決するにはまず食べ物がないといけない」と活動中に葛藤していたらしくて、それもあって私は農学部への進学を決めたの。先進国の最先端の技術を使って、途上国の農業を変えることはできないかな?と思って、最初は欧米留学を目指してたけど…
深内
深内

吉田
吉田
でもお母様の一言でアフリカに目を向けるようになったのか。

そうそう!欧米に行きたかったけど、母が「自分が将来どういう土地に還元していくのかを見ないと、現場のニーズに合わない研究をすることになる」って言ってくれてね。じゃあまずは現場に行こう!と思って、学部3年次にボツワナと共同研究をしてる研究室への配属を決めたんだ。
深内
深内

吉田
吉田
どんなことを研究していたの?

研究室では、バイオ燃料植物のジャトロファについて!ボツワナは乾燥と冷害のために作物の生長が遅いんだけど、バイオ燃料として有望なジャトロファをどう生産性を高いものにできるのか、遺伝子組み換えを行ったりしてるよ。留学先となったボツワナ農業大学とも連携してるんだよね!
深内
深内

写真:留学中にお世話になったボツワナ人の友人

吉田
吉田
その関係でボツワナに留学することになったのか!

あとは鳥取大学にボツワナ出身の博士課程の学生がいたんだけど「ボツワナいいよ」って勧められて、より一層行きたくなったの。修士1年の時に教授のボツワナ出張に同行して、ボツワナ大学の関係者に直接「留学させてください!」ってボストンバックいっぱいのお菓子とともに交渉したら承諾していただいた!(笑)
深内
深内

トビタテ生に感化され、2度目の留学へ

吉田
吉田
実際に行ってみて、どうだった?

「本当にボツワナ人のためになってるのか?」とモヤモヤしたまま不完全燃焼で帰国したな。現地では、ニーズに合わせた技術協力支援みたいなことをやっていて、TAをしたり実験方法を指導したり…でもその中ですごく受け身な姿勢でいる自分に気づいたんだよね。
深内
深内

吉田
吉田
例えばどんなことがあったの?

ただ「これやって」と言われたことをこなすだけではなくて「自分で考えたものを提案したいな」って思ったんだよね。私は、先進国の最先端の研究を知ってる身として、知識を駆使してアイディアを提供することが求められるんじゃないかなって…でもそれが出来ずに留学を終えてしまった。自分で考えた「ボツワナに本当に必要なこと」を新しいアイディアのもと、提案したいと強く感じたな。
深内
深内

吉田
吉田
それで不完全燃焼だったんだね。

そう。でもトビタテの事後研修で「もう一度留学先に戻る」って言ってた同期が結構多くて「あ、もう一度行くのもありなんだ」って気づかされてね!モヤモヤしたまま終わらせたくない気持ちが強くて、去年末にまたボツワナに戻ったんだよね。本当は夏までいる予定が、コロナで今年3月に帰国になったけど…
深内
深内

写真:事後研修後の打ち上げにてトビタテの同期と

吉田
吉田
トビタテ生に背中を押されたんだね!二回目は最初の留学と比べて手応えは会った?

自分のアイディアの交渉を粘り強くしたら、最終的に実施することになったんだ!ボツワナって乾燥地帯で雨量が少ないから、水がなくても収量を高くして生育することが大切で。その方法を「日本の最先端の技術を使って解決する」ために国内で、論文を読んだり実験をしたり、教授に相談したり準備して行ったよ。
深内
深内

吉田
吉田
アイディアを持った上で2度目の留学に行ったんだね。

そうそう「カウピー(ササゲ豆)」という、アフリカにおける重要なタンパク源のマメを用いた実験を現地で行いたいと思って、ボツワナ農業大学の教員に提案したの。でもメールでは事前に承諾を頂いたのになぜか、現地に行ったらダメって言われて…せっかく2度目の留学をしに来たのに帰国する羽目になりそうだったんだよね。
深内
深内

写真:実際に実験に使用したカウピーの豆たち

写真:最寄りのスーパーでは色んな豆の缶詰が売り場ぎっしり

吉田
吉田
そうだったんだ…

でも自分の研究の意義をプレゼンしたり、時には真面目な話から入るんじゃなくて、日本のお茶とかお土産を持って相談に行ったり…粘り強く交渉し続けたら「やってみたらいいんじゃない?」って言ってくれて!実験中も自分が主体的に動かしてたから「やっとボツワナの農業のために何かできている」と思えたな。
深内
深内

写真:プレゼンをする時は農学部のほとんどの教職員が聴講に

吉田
吉田
その粘り強さは百合子ちゃんの強みだね。

ううん、実は弱みを打破しようともがいていたんだよね…トビタテ生とか主体的に動く人多いでしょ?でも自分は受け身の姿勢でいることの方が多かったから、それをコンプレックスに感じていたんだよね。
深内
深内

吉田
吉田
全然そうは見えなかったけど、そんなふうに感じてたんだね。

結果的にコロナ禍で帰国する羽目になって、実験は最後までできなかったけど…初めてこんなにも能動的に動くことができたし、弱みを乗り越えようと奮闘できたと感じてる!
深内
深内

吉田
吉田
なるほどね!弱みを自覚して努力してきた姿に圧倒されるな。ボツワナへの貢献もそうだけど、自分の成長にも繋がった2度目の留学だったんだなと感じるし、かっこいい!

ありがとう!(笑)
深内
深内

不条理を前に痛感した限界

ボツワナでは青年海外協力隊員の方々ともよく関わっていて、コミュニティ開発を目的とした南部アフリカ布の製品開発の話もよく聞かせてもらってたりしてたんだよね。でも、どんなに「よくできた」と思える製品を作っても国内のマーケットが小さかったり、需要やコストの問題でどうしても頭打ちしちゃったんだよね。
深内
深内

写真:テーラーさんがオーダーメイドで服を作ってくれる

写真:南部アフリカ布を使ったワンピース

吉田
吉田
なるほどね…作っても売れなかったら意味がないもんね。

うんしかも一個人としてできることに限りがあると痛感したなあ。自分は農学分野にこれからも携わっていくつもりだったけど、市場を開発するためには農学だけではできないなって思ったの。インフラとか、大きな規模での投資とか…他分野と連携していかないと現地の人にインパクトをもたらすには限界があるし。
深内
深内

吉田
吉田
結局自分ひとりの力じゃどうにもならないって無力感に苛まれたこと私もあるなあ…

うんうん。私がボツワナでやっていたカウピー豆の栽培プロジェクトも「ボツワナの農業に貢献する」という大きな目標を達成することは結局できなかったし…単純作業を一人で地道にやっていて限界を感じた。これがもし大きなプロジェクトだったら、与えられる影響も大きくなるはずだよなって…
深内
深内

吉田
吉田
課題が根深いからこそ、解決は容易ではないよね。やっぱり国レベルでの大きな改革が求められてるって感じた?

すごく感じた。ボツワナ農業大学でいつも優しくサポートしてくれた現地学生がいたんだけど、経済的理由で大学を中退してしまったんだよね。ボツワナは若年失業率が40%もあって、大卒でも院卒でも、まともな仕事に就けなくて負の連鎖が起きてるの。「途上国」ならではの理不尽に立たされた時は、どうしようもない気持ちになったな…
深内
深内

写真:仲良しの現地学生と
(真ん中)中退してしまった同級生
(左)修士を卒業したが未だに仕事を見つけられずにいる

吉田
吉田
でも、もし予定通り欧米留学にいっていたら、そんなことも感じなかったかもしれないよね。

本当にそう!私は導かれるようにボツワナに留学したけど、母の言葉のようにまず「現場に足を運ぶ」ことは本当に大切だと感じてるな。特にアフリカへの留学って反対する人もいるかもしれないけど、私は本当に行ってよかったと思ってる!南部アフリカは偏見じみた「アフリカ」像を覆すほど都市は特に発展してるし、現地に長く深く身を置いたことでしか得られない現場目線を養えたことは、私の強みだと感じてる。
深内
深内

写真:首都ハボロネの一角で、週末に開かれる音楽イベントの様子

写真:観光客向けに、伝統的な装いをしたダンスも見ることができる

吉田
吉田
私の留学してた南アフリカのケープタウンは息を呑むような美しさだったなあ…短期間でもいいから未知で偏見も多いアフリカだからこそ、行ってみる価値があるよね。

そうだね。しかも現地に行って、現地の人の声を聞くことで独りよがりにならないと思う。研究室でやっていたプロジェクトも「すごいことしてる!」って気だったけど、実際現地に行くと、ニーズとの不一致を見聞きしたの。しかも最貧困層へのアプローチは全然できてなかったし…だから何よりもまず「現場に足を運ぶ」ことは大切だと感じてるな。
深内
深内

写真:都市の現代化の一方で、農村部はインフラが整ってないところも

吉田
吉田
私も賛同する。そしてお母様の言う通りだったね!

ほんと!「20代のうちに1度はアフリカに行って欲しい」という言葉に込められた「現場経験の価値」は、今になってその意味や重さが分かるな。まだまだこれからだけど!
深内
深内

ここがすごいぞ!ボツワナの三大魅力

吉田
吉田
そんなボツワナに何度も足を運ぶからこそ知っている、ボツワナの魅力を聞きたいです!

オッケー!じゃあ【ボツワナの3つのすごい!】を紹介するね。まず1つ目が、アフリカの中でも特徴的な観光資源が豊富なことです!「世界最大の扇状地:オコバンゴデルタ」は、乾燥したカラハリ砂漠の湿地帯で、珍しい動物もたくさんいて世界遺産に指定されてるくらい。
深内
深内

写真:オカバンゴデルタ。木をくりぬいたゴンドラ(モコロボート)で遊覧!

あとは「世界最大級の塩湖:マカディカディパン塩湖」「アフリカゾウの生息密度が世界一のチョベ国立公園」があることで有名なの。
深内
深内

写真:マカディカディ塩湖でキャンプ

写真:マカディカディ塩湖の側で自生している立派なバオバブの木

吉田
吉田
すごーーい!めっちゃ絶景。国立公園もあるんだよね?

うん!ここが「チョベ国立公園」と呼ばれるサファリにもなってるんだよね。像の大群を目当てにくる観光客がとても多くて有名だよ!
深内
深内

写真:チョベ国立公園の像の群れ

写真:チョベ国立公園でゲームドライブ

吉田
吉田
像可愛すぎる〜行ってみたい!2つ目のすごい!は何?

2つ目は、ボツワナが「アフリカで最も平和な国の1つ」だということ!イギリス経済紙が毎年発表している世界平和度ランキングというものがあるんだけど、それに30位にランクインするくらい、治安もよくってね。(ちなみにアフリカ大陸では2位で、日本は7位)
深内
深内

吉田
吉田
え、知らなかった!ボツワナが平和と言われる理由は何?

ズバリ「人種差別が少ないから」が理由の1つだと思う。独立後のボツワナ初代大統領がイギリスに留学していて、白人女性に恋をしたっていう話があってね。隣国の南アフリカではアパルトヘイト(人種隔離政策)の真っ只中だったから、宗主国の反対を受けたんだって。でも大統領はそれを押し切って、異人種間恋愛をして、その女性と結婚したの。
深内
深内

吉田
吉田
へー!

ボツワナの国旗には水色、黒、白の3色が使われているんだけど、それぞれ意味があって。まず、水色は雨降らないから水が大事という意味で、白と黒は、白人と黒人の融和を表していると言われてるの!ボツワナの国の動物にシマウマが指定されてるのも、白人と黒人の融和の象徴らしい。だから、ボツワナにはアジア人に対する差別や、「チャイナ!チンチョン!」ってからかわれる事もほとんどないんだよね。
深内
深内

写真:「融和の象徴」であるボツワナの国旗

吉田
吉田
アフリカは植民地時代の歴史があるから人種にはセンシティブだと思ってたけど、ボツワナはそんな背景が独立当初からあったんだね。全然知らなかった!

だよね!最後のすごい!は「ボツワナは政治が比較的腐敗していない国」であること。ボツワナは政府がとても優秀で教育、福祉、医療が全部無料なの!驚きなのが外国人も無料で、薬代も無料だから、保険に入らなくても無料で医療を安心して受けられたんだ。すっごく住みやすいんだよ。
深内
深内

吉田
吉田
豊富な自然、差別のない国、そして住みやすい環境も整ってるなんて!ボツワナ気になってきた(笑)

コロナが終わったらぜひ来てみて!案内するよ!(笑)
深内
深内

ボツワナに留学したからこそ見えた将来像

吉田
吉田
最後に、2度のボツワナ留学を経て、今後の展望を教えてください!

来春からJICA(国際協力機構)の職員として働く予定です!ボツワナで一個人の限界を感じて、国単位での大きなプロジェクトに携わりたいって思ったんだよね。あとは、農業だけではなく、他分野とも連携して手広く途上国の開発に関われるから、とても楽しみ!アフリカ、特に南部アフリカにはこれからも携わり続けたいし、現地でお世話になった人たちに恩返ししたいなって思うな。
深内
深内

写真:大学の教職員の皆さん

写真:モーリシャスで出会ったアフリカ各地から来た学生たち

写真:大学の友達。南スーダンからの留学生も沢山

吉田
吉田
内定おめでとう!お世話になった方々はボツワナ人ってことだよね?

ありがとう!そうだね。ボツワナ人はもちろん、現地で青年海外協力隊の方々にもたくさんお世話になったから、協力隊事務局にもいきたいって考えてるんだ。現地に深く長く根付く隊員は、日本にとっても現地にとっても必要な存在のはず。だけど、なかなかサポート体制が完璧ではないと感じてね。隊員さんの力をもっと最大限発揮できるような体制に整えたいって思うな。
深内
深内

写真:お世話になったJICA海外協力隊員の皆さんと

吉田
吉田
ボツワナに行ったからこそ、より明確に、そしてより情熱的に夢や目標に向かって走り続けられているんだね。今日はたくさんお話していただきありがとう!これからも応援しています。

こちらこそありがとう!また話そうね!
深内
深内

編集後記

吉田
吉田
ボツワナで大活躍した深内さんのインタビューはいかがでしたか?過去にもアフリカに留学したユニークなトビタテ生を特集したので、要チェックです👀

吉田
吉田
こんな面白い人たちと繋がりたい!というトビタテ生はぜひトビタテ!アフリカ会へ!トビタテ生によるトビタテ生のためのアフリカコミュニティです。

次回のトビタテ!アフリカ留学特集は10月16日(金)公開です!
ゲストは、カメルーン🇨🇲のUNHCRでインターンをし難民支援に携わったトビタテ生。
現地ではどんな経験をされたのでしょうか?乞うご期待です!

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