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第117回:ユニークな国留学特集~あなたは何しに○○へ?~第1弾星野愛花里さん【農民組織の研究】

4期かほ

4期かほ

2020.12.15

みなさんこんにちは!

大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木です! これからユニークな国留学!という特集で

地図ではみたことあるけど。。。。
名前は聞いたことがあるけど。。。。
実は全然どんな国か知らない!!といったようなユニークな国に留学をしたトビタテ生にスポットライトを当てて、その国の魅力や、トビタテ生の活躍をご紹介していきたいと思います!

そんな特集の第一弾!今回のユニークな国は。。。。。
「キルギス」です!!
中央アジアに位置するこの国がどんな国かは皆さんご存知ですか?
キルギスは、私が留学していたロシアと同じく、旧ソ連の構成国ですが、日本人とよく似た顔立ちの人々が多く暮らしています。

今回はそんなキルギスに留学した大学9期の星野さんにインタビューしてみました!

 トビタテ留学JAPANでの留学

星野愛花里さん

大学9期  

地域人材コース(北海道)

遊牧民が作る農民組織?星野さんの研究テーマに迫る!

 鈴木)星野さんがキルギスに留学しようと思ったきっかけと研究のテーマを教えてください!

星野)私はもともと、食料生産や貧困、食べ物がどう作られ世に回っていくのかに興味が有りました。特に、これから発展していく地域においてですね。

様々な国から支援がされていると思うんですけど、それを地元の人のこれからの発展につなげるには、そこで暮らす人たち(主に農民)の共助組織が大事だと思ったんです。

その大きなものの一つが農協です。
それで、農民の組織というものを知りました。農村開発において、どのように人が暮らしていくことができるのか知りたくて研究をしていました。

キルギスを選んだのは、自分の所属する研究室がキルギスとの繋がりがあったということにくわえ、基本的には農村中心に存在している農民組織を、キルギスでは現在定住している遊牧民が作っているという独特な形がそこにはあり研究をしに現地に行って見てみたいと思うようになりました。

写真①

現地では首都ビシュケクでキルギス協同組合連盟(CUK)に通う2カ月を送りました。会長のアイヌラさんのもとには各地の農協組合長が通ってきて、コンサルティングを受けます。私も覚えたてのキルギス語を使い、軽く質問をさせてもらったりしながら研究を行っていました

          キルギス協同組合連盟(CUK)で撮った会長アイヌラさんとの写真

 

 キルギスとはどんな国?

鈴木)キルギスは、私が留学していたロシアと同じく旧ソ連の構成国です。しかし、私はキルギスに行ったことがなく、遊牧民が多い国という以外に予備知識がありません。キルギスについて教えてください!

星野)正式名称はキルギス共和国です。ユーラシア大陸真ん中辺りの中央アジアに位置し、面積は日本の半分、人口は約600万人です。民族は7、8割がキルギス人です。主な宗教はイスラム教スンニ派ですが、ソ連だったのでロシア正教の影響もあり、クリスマスも祝うなど緩いところがあります。キルギス語が国語であるほか、公用語がロシア語で、どちらの言語も共存しています。

日本人と顔が似てる人が多いため、町に溶け込むこともできました。キルギス語で話しかけられることも!!笑
あとは、山岳国で、私が住んでいた地域も標高1800メートルでした。


鈴木)そんなに高いんですね!息がし辛そうです…

星野)首都の緯度は北海道の札幌と同じくらいで、農業が主要産業です。
農村では畑と牧畜をどちらも行っています。農村人口が7割ですが、農業以外に主要産業がなく、、、ロシアへの出稼ぎ労働者も多いんです。

フィールドワーク

鈴木)現地ではどのような活動、学びがありましたか?

星野)最初は、農家から直接話を聞くことを目標に首都でキルギス語を勉強しました。
授業がない時間には、都市部にあるキルギス協同組合連盟に通い、全国の農協組織のデータをもらい、現状をレポートにまとめたり、事業内容や構成員の性格から類型ごとにモデル化などの提案をしたりしました。

その後、農村部に移動し、イシククリ有機農協でインターンをしました。
インターンでは、組合員やその他の農家に聞き取り調査を行うほか、自分の日常生活も「参与観察」として毎日日記で記録し、のちの研究に役立つようにしていました。

これらを通して、現地の農家が農耕を牧畜を組み合わせて自給的に行っていること、そしておそらくGDPには表れていないのですが、草地を活かした家畜(ライブストック)を中心とする経済が回っていることを体感的に学ぶことができました。

鈴木)現地にいったからこそわかったことですね!!

星野)そうなんです!農協の課題は、そもそもそれを構成する現場農家の経営や生活の様子を把握しなければ分からないものなので、初歩的な理解に留まりましたが、大きな一歩だったと思います。

写真②

6月にはイシククリ有機農協の組合員宅を回り、作付けの調査を行いました。この時期には家畜が放牧地へ行っており、畑に野菜や穀物、牧草が植えられています。どのお宅でも自家製の牛乳やパン、ジャム、乳製品、トマトとキュウリの塩サラダ等でもてなしていただき、キルギスの文化を体感しました。

有機農協組合員さんとの一枚

 

 

現地での活動経験

鈴木)現地で大変だったことは何ですか?

星野)キルギスについて修士論文を執筆し、今年の10月に研究会で発表しました。現在、大学に籍を置きながら、札幌市から車で1時間の栗山町で、町の農業振興の計画を5年ごとに立てるという仕事をしています。

鈴木)留学で身に着いたのはどのようなことですか?

星野)地元の人たちとと関係を築きながらも、感情に流されすぎずに客観的にデータを見る力が身に着いたと感じます。

キルギス滞在中は、調査協力の対価を求められたり、栽培技術を教えてほしいとお願いされたり、自分ができないことが現場では求められていると感じる場面が多々あり、研究に自信を無くすことがありました。

しかし、事実を丁寧に把握するのは今は自分にしかできないと思い直し、めげずに顔を合わせに行っていたら、自然と話をしてくれるようになり、とても嬉しかったです。

また、人を動かす上で、組織を作る時に何が「求心力」になるか、組織化した先に何をするかという「餌つけ」を上手にやることが大切だと実感しました。

もちろん、一番はお互いの信頼が大事なのですが、どの人もそのような関係が築かれているという訳ではないので、生活が大変だったりある程度満ち足りていたりしたら善意では動いてくれませんし。。。
現地では、そういういろいろな人がいる「多様性」を前提として動く必要がありました。ただ、思った以上に生活がカオスでルーズな社会でしたね…で生活するうえでびっくりすることが多々ありました…

鈴木)ロシアでも、組織間で情報のやり取りができてなかったことを思い出しました…(笑)人を動かすために何をしたらよいかを考えるのがポイントなんですね。

星野)ロシアも似ているかもしれませんね(笑)一方で、そのようなキルギスの人達との交流から、考え方にゆとりを持つのも大事だと学びました。何か突然予想外のことが起きても、それのあたりとの折り合いをつけることも大切だというか学びました。何か起きる方が普通なので、もとから予定を詰め過ぎず、焦らずその場の流れに身を任せるというのも良いなと思いました。その場合、そこにいる人たちとのコミュニケーションがその場を乗り切る重要な手段という感じがしましたね。

 「求心力」

鈴木)星野さんが考える、キルギスと日本の「求心力」の違いは何ですか?

星野)日本国内でも農協のあり方に違いがありますが、それでもキルギスに比べると稲作地帯所以の地縁社会がまだまだありますし、それが求心力の一つになっているように思います。

キルギスは遊牧民の国ということもあり、人も土地への考え方も流動的で、組織の在り方など、将来や先のことに信用がありません。そのため、現地の人達は、長期間のスパンでの計画をたてない、現金の貯蓄など組織の維持に大切なことをしないなど、その時の状況に応じて生活していました。

キルギスでの求心力は、当たり前かもしれませんが、売れる農産物を作るなど、ゴールがはっきり見えることだと現時点では思います。今の段階では難しいかもしれませんが、インフラ整備がされていったら主体的に組織立っていくのかもしれません。戦後の日本では食料が少なかったので、安定的に食料を作ろうとすることが国の目標でもあり農村の課題でもあったので、それがある意味求心力になっていきました。キルギスは大陸で他の地域から物が手に入りやすいのか、中国から、ロシア、旧ソ連から、物資が入ってくるので、ある程度の生活を送れていて、飢えてる感じがありません。また、元は氏族社会で家畜を放牧して生きてきたので、そのような感覚は組織内の人間関係にも少なからず影響していそうでした。なので、出口が見える求心力でないと農業をやってくれない所があります。

現地では、文化社会が違うと他の人と協力しにくい、と打ちのめされることもありました。一方で、キルギスの人達の、その日のうちに計画を立てるなど、臨機応変さに関してはすごいと感じました。

鈴木)私もロシアで似たような経験をしたことがあります。

星野)ある程度同じ文化や価値観であるから、またはそれを知っている人だから滞りなく今まで続いてきたものってあると思うんですけど、他の人に対して排他的になってしまう面もはらんでいますよね。 

例えば、日本でも、現在新しく農業をしようとする人が来るなど、外部からの”異文化”を持つ人が来た時にそれが初めて認識されて、現地の農村社会の不文律を説明しないといけない場面が出てくることがあります。

でもその過程は、より多様な人を受け入れられるようになった、という事ですよね。

現代になってからそのアップデートはより頻繁に、多方面で行われているのではないでしょうか。そしておそらく、キルギスのような古くからの交易地では、それがもっとダイナミックに、起こり続けているのではないかなぁと思います。言語も未熟なので私が見えていないものはたくさんあったとは思いますが、キルギス国内では同じ文化のキルギス人どうしは元より、ロシア人や中国人とそこにいる少数民族、周辺のテュルク系民族などと、絶え間なく関わりがあります。それゆえの受入れ方なのかもしれないですね。最初は衝撃でしたが、学ぶところがありました。 

鈴木)留学の経験を活かした上での将来の目標は何ですか?

星野)キルギスの交流活動を続けていきたいです。キルギスは北海道と気候が似ている上に、繋がりもあります。

たとえば、主にJICAですが、北海道の士幌町とキルギスはベリーの加工や栽培技術などで協力していますし、乳加工においても、そして農民組織化という点でも長年の付き合いがあり、日本のことを勉強したり訪問したりしたキルギス人OBもたくさんいます。ソフト面の研究は時間が必要ですが、そういった実働的な方面でもコンスタントに関わっていきたいです。

写真③

11月になると村はすっかり白銀の世界となります。この頃は家畜が放牧地から自宅に帰ってきているので、近隣住民と一緒に毎日自宅近くの土地に放牧させに連れて行き草を食べさせます。私もそのお手伝いをさせもらいながら、話を聞きました。写真はその時に毎日顔を合わせていたムルザベックさん(写真左側)とミディンさん(写真右側)です。

近隣住民のムルザベックさん(左)とミディンさん(右)と撮った雪の日の一枚

 

編集後記

私が留学していたロシアと近いだけあって、共通点も多いと感じました。しかし、遊牧民のお話は、星野さんならではのお話で大変興味深かったです。

留学での経験を活かされて地元北海道で頑張る星野さんを応援しています!!

今後もトビタテ生のユニークな国への留学を特集としてまとめていくので皆さん楽しみにしていていください!

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