第126回:ユニークな国留学特集~あなたは何しに○○へ?~第3弾小笹瑞季さん【シャーマン研究】
2021.01.22
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木です!
ユニークな国留学!という特集で
地図ではみたことあるけど。。。。
名前は聞いたことがあるけど。。。。
実は全然どんな国か知らない!!といったようなユニークな国に留学をしたトビタテ生にスポットライトを当てて、その国の魅力や、トビタテ生の活躍をご紹介しています!
そんな特集の第三弾!
今回のユニークな国は。。。。。
「カザフスタン」です!!
カザフスタンは、中央アジアに位置する旧ソ連の国です。
今回はそんなカザフスタンに留学した大学3期の小笹さんにインタビューしてみました!
目次
トビタテ!留学JAPANでの留学
小笹瑞季(こざさみずき)さん
大学3期 新興国コース
留学テーマ:シャーマン研究
カザフスタンでシャーマンになる
鈴木)お話をうかがって驚いたのですが、小笹さんはカザフスタンで「シャーマン(霊媒師)」になられたのですか!?
小笹)はい(笑)
私は外国語大学に在籍していたので、元々留学をする前提でいました。
シャーマンは、悪魔祓いやお祈りなどで人の病気を治す人で、世界中に存在します。
科学技術の発達やソ連時代の宗教政策によって姿を消したと思われていましたが、近年になって復活してきています。大学の授業で古代の中央アジアで遊牧民が信仰していたシャーマニズムについて学び、図書館で本を読むうちにシャーマンに絶対に会ってみたい!と思い、カザフスタンに留学しました。
鈴木)面白そうですね!実は私も文化人類学に興味があります!
二面性のある国
鈴木)カザフスタンはどのような国でしたか?
小笹)中央アジアに位置する旧ソ連の国で、ロシア語とカザフ語が公用語です。元は、かつて遊牧民が暮らしていた草原地帯ですが、二面性のある国だと思いました。
アルマトイやヌルスルタンは、西洋風の発展した町ですが、ちょっと車で走ると建物ひとつない大草原が広がります。草原や砂漠の気候なので、夏は50度、冬はマイナス25、30度と気温差が激しいです。
鈴木)冬はロシアと変わらないですね…
小笹)はい、ヌルスルタンは世界で二番目に寒い首都です。
鈴木)意外でした。
シャーマンを探す日々
鈴木)留学ではどのようなことを学んだのですか?
小笹)現地のカザフ国立大学の国際関係学部と、留学生の外国語習得をサポートする準備学部に所属して、カザフ語やロシア語、国際政治や経済について学びました。
また、現地のつてでシャーマン探しをしました。「シャーマンなんてもう存在しない」と馬鹿にされることもありましたが、「実は私、昔シャーマンに病気を治してもらったことがあるの」という人が見つかり始め、シャーマンや、民間療法師に行き着くことができました。
①写真
鬼を題材にした日本人の宗教観について、カザフスタンのシャーマニズムと通ずるところがあると論文を書き、第1位を受賞しました。
カザフ国立大学、全国学術論文コンクール
鈴木)読んでみたいです!ロシアにも、正教とキリスト教以前の「異教」の影響が見られます。
小笹)ロシアにもシャーマンがいますね。旧ソ連の国々で魔術師が取り締まられていて、その人たちがロシアに流れて行っているそうです。
カザフスタンに戻り、シャーマンになる
鈴木)帰国後はどのような活動をされているのですか?
小笹)留学を機にシャーマン研究に目覚め、大学院に進学しました。進学後、カザフスタンに滞在して現地調査をしました。シャーマンのように、外国人に対してクローズドにされている対象に辿り着き、研究協力を得るには信頼関係がいりますが、人脈やカザフ語など、トビタテで培った力が役立ちました。
そして、修行を見たりさせてもらったりしているうちに、ある人から「君もシャーマンにならないか」と言われてシャーマンになりました(笑)
②写真
留学後は進学し、研究を続けました。旧ソ連の国々でシャーマンや国家組織に取材をしました。
現役カザフ人シャーマンの方々と
人を幸せにするテクノロジーの在り方
鈴木)留学の経験が活きているのはどんな時ですか?
小笹)テクノロジーの在り方を考える時です。
留学を通じ、シャーマンは病気を治すだけでなく、不安を取り除くための社会構造として機能していると思いました。
カザフスタンの人々は、具合が悪くなると近代的な医療体制の病院に行くのが一般的ですが、シャーマンに頼る人もいます。
現地には、ソ連時代の軍医の価値観がまだ残っています。ちょっと足が悪いから診てもらいにきただけなのに、医師から足を切断することを強引に勧められたりすることがあります。戦争に効率よく兵士を送るため、治療期間を長引かせず、戦地への復帰を優先させるという考えなのです。また、同じくソ連時代の影響で、医学用語のほとんどがロシア語から借用されていて、病院ではカザフ語があまり通じません。そのため、ロシア語が喋れないカザフ人の中には、病院はよく分からなくて怖いところだと思う人もいます。
一方、シャーマンはというと、患者の話や不安を親身に聞き、カザフ語で話すので、一部の人々にとって安心感があります。
私はシャーマン研究を通じ、技術は本当に人を幸せにしているのだろうか?と疑問に感じ、テクノロジーのあり方に向き合う活動を始めました。
その一つが、アスタナ万博(2017年)の日本館における勤務です。テーマは、未来のテクノロジーでした。
写真③
アスタナ(現ヌルスルタン)万国博覧会で働きました。日本の未来のエネルギーである水素発電の技術などをお客様にご説明していました。
2017年、アスタナの万国博覧会で、日本館にて
現在私はIT企業で働いていますが、留学を通じて、テクノロジーといえども血の通うようなやり方で人を幸せにしたい、と思うようになりました。
新型コロナウイルスの流行を通じ、技術がオンラインコミュニケーションを可能にしてくれたとしても、直接顔をつき合わせて会話をするような生身の交流には完全には代わりえないと実感した人々は多いと思います。
就活時にそのような問題意識があり、技術を人間の幸せの為に使っている会社を探し、現在働いている企業に行きつきました。
シャーマンという究極のアナログを研究した結果、私は現代に生きる人間の本質的な幸せについて考えるようになり、人に寄り添い幸せにできるようなテクノロジーのあり方があるはずだと信じ、シャーマンとは真逆のITの世界に行きついたわけです(笑)
鈴木)近年巷で「進歩」という言葉をよく聞きますが、そもそも進歩とは?進歩して人は幸せになるのか?ということは私も感じていました。
小笹)イタリアでも、病院ではなく教会に駆け込む人々が年々増えているそうです。技術が「進歩」すればするほど、こういう現象が世界各地で増えてくるのではないかと思います。
鈴木)留学の経験を活かした上での将来の目標は何ですか?
小笹)人を幸せにできるテクノロジーのあり方を探りつつ、人間を不安にさせないサービスを自分の手で作っていきたいです。
編集後記
古いものは新しいものに取って代わられるべき、と言われがちな現代社会ですが、本当にそれが正しいのかは、ロシア革命以降急激な変化を余儀なくされたロシアや旧ソ連圏の歴史を学んだ私としても考えさせられるものがありました。
今後も小笹さんの活動を、心より応援いたします!
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