第 136回:ユニークな国留学特集~あなたは何しに○○へ?~第10弾 田中舜さん【寄生虫の研究】
2021.04.02
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂で す!
ユニークな国留学!という特集で
地図ではみたことあるけど。。。。
名前は聞いたことがあるけど。。。。
実は全然どんな国か知らない!!といったようなユニークな国に留学を したトビタテ生にスポットライトを当てて、その国の魅力や、トビタテ生 の活躍をご紹介しています!
そんな特集の第 十弾!今回のユニークな国は。。。。。 「スイス」です!!
スイスは、アルプス山脈にあるヨーロッパの国です。
今回はそんなにスイスに留学した大学4期の田中舜さんにインタビューし てみました!
目次
トビタテ!留学JAPANでの留学
田中舜(たなかしゅん)さん
大学4期 理系(自然科学系)、複合・融合系人材コース
テーマ:寄生虫の研究
専門分野について、技術が進んだ国で学びたい
鈴木)田中さんがスイスで留学をしようと思ったきっかけを教えてくだ さい!
田中)私は大学4年の時に、大学の付属研究所のプロジェクトに応募して アメリカのカンザス州立大学獣医学部に三週間ほど短期留学しました。 元々海外へ興味があったこともあり、海外の獣医学が日本とどう違うの か、獣医学が日本よりも進んでいる国でどのように研究されているかを学びたいという気持ちが強まりました。
鈴木)きっかけはアメリカでの留学だったんですね!
田中)はい。当時大学の先生に留学をしたいと相談したところ、いくつか候補となる国を挙げていただきました。専攻の寄生虫病学を学べるのはスイスだけで、なおかつ候補となる国の中でも最先端の技術が学べると思ったのでスイスのベルン大学寄生虫学研究所を選びました。
鈴木)スイスで獣医学の技術が進んでいるというのは新たな発見でした。
<スイスで日本紹介の様子>
写真①滞在中、日本食を作る機会がありました。日本食と考えた時にお寿司など思い浮かびましたが、ヨーロッパにはそのようなものが食べられる日本食レストランは少なくないと思い、カレーパンを粉から作ることにしました。
カレーパンが日本食なのか?という問題は別にして、普段あまりしっかりと料理をしない私ですが、美味しいと言っていただけて安心しました。
現地で作ったカレーパン
グローバルな研究環境のある国
鈴木)スイスはどのような国でしたか?
田中)国内では4つの言葉が使われていました。ドイツ語が共用語なのですが、そのほかにもイタリア、フランス語などが使われていました。
鈴木)私は外国語学部出身なので、複数の言語が使われている国のお話は興味深いです。田中さんもドイツ語を使われていたのですか?
田中)実は、研究所全体では主に英語を使っていたので、ドイツ語はあまり使っていません(笑) グループミーティングでは、スイス人同士でも英語でした。
鈴木)それはそれで国際的な環境だったのですね!
田中)そういえば、スイス全体としても、ヨーロッパ各国から研究者が集まっていたことが印象に残っています。
鈴木)だから、共通言語としては英語をメインに使っているのですね!納得です!
ネオスポラを防ぐワクチンの開発
鈴木)留学ではどのようなことを学んだのですか?
田中)寄生虫学研究所で、主にエキノコックスとネオスポラという寄生虫 を研究していました。
鈴木)エキノコックスが北海道のキタキツネの体の中にいるということを聞いたことがあります。キタキツネには絶対に触ってはいけないとよく 言いますよね。
ネオスポラとはどんな寄生虫ですか?
田中)実は、存在を認識され始めたのが1980年代くらいという比較的新しい寄生虫です。妊婦さんが感染したことがあるかどうか検査すること もある「トキソプラズマ」という寄生虫はご存知ですか?かつてはトキ ソプラズマと似ているので、同じ寄生虫だと考えられていた時期もありま す。
ネオスポラの終宿主(寄生虫が有性生殖を行う動物)は犬です。犬がネオスポラのオーシスト(いわゆる卵のようなもの)をうんちの中に排出した後に、牛がネオスポラのそれを偶発的に食べてしまうことによって感 染します。しかし、牛の中では中間宿主(寄生虫が卵を作らない生物) になります。
牛がネオスポラを食べて終宿主となることはないのですが、流産を引き起こす可能性があります。牛の流産の原因はわからないことも少なくな いのですが、ネオスポラが関与するものもあります。留学中は、このネオスポラの感染を防ぐワクチンの開発も行いました。
鈴木)私は文系でこの分野については疎いのですが、ワクチンはどのように開発するのですか?
田中)寄生虫が宿主体内で増殖したり、感染を維持するために重要なタンパク質を作っているのですが、それを標的にし、生成を止めるワクチンの有効性を評価していました。いきなり牛で感染実験をするのは大変なため、今回はマウスにワクチンを投与し、その後交配させたマウスにネオスポラを感染させ、流産や生まれたマウスでの異常など、その症状をどれだけ抑えることができているか確認しました。
鈴木)ワクチンの開発にネズミが使われているというのは勉強になりました。
写真②留学の最終日に研究所の人と撮った写真です。留学中は写真の左の女性の方と実験を進めていきました。最初は分からないことも多かったのですが、ボスを含め、研究所の皆様に丁寧に理論や実験方法などを教 えていただきました。途中からは実験の重要な部分も任せられるようになり、本当に有意義な経験になりました。
研究所の方々と
現場で仕事をしたい
鈴木)帰国後はどのような活動をされているのですか?
田中)帰国後すぐは、留学中に行った研究を大学のゼミで発表しました。
大学卒業後は、某大学の研究所で研究しました。しかし、実践的な現場での仕事をしたいという思いが強くなったので中退し、おととしの10月から香川県庁家畜保健衛生所で家畜防疫や検査業務に携わっています。
香川県で勤務するまで半年くらい時間があったので、国家資格を活かし、岡山市の臨時職員として、と畜場で牛豚のと畜検査業務を行いました。
鈴木)専門分野を活かして活躍されているのですね!
現地での経験が活きていると感じるのはどのような場面ですか?
田中)社会人になってから、職場の人と連携する際に活きています。日本の研究室では一人で黙々と研究することが多かったですが、留学先では同じ研究室の人と綿密なコミュケーションをとってみんなで研究を進めていくことが多かったです。
鈴木)技術面だけでなく、人間関係においても留学中の経験が役立っているんですね!
留学の経験を活かした上での将来の目標は何 ですか?
田中)業績発表や調査研究をしていくのですが、寄生虫病に着目して現場にを還元できたら、と思います。
アカデミックな研究からは離れましたが、現場で問題が生まれないと研究が行われないということを学びました。現場の状況を見ないと分から ない事も多いんです。病原体がどんな症状を引き起こすか教科書に書いて あっても、現場の農家さんや先輩獣医師に聞くと、それは見た事がな い、もっと困っていることがあるとおっしゃることもよくありますし ね。
写真③
所内でのゼミの風景を写真に撮っていました。これ以外にも、実験の待ち時間やデータミーティ ングやコーヒーブレイクの時などにディス カッションを多く重ねて、様々な人の意見を参考に実験を進めていました。当たり前のことにはなりますが、このような仕事の進め方は、現在も大切にしている事の一つです。
所内でのゼミの風景
編集後記
お話を聞いていて、田中さんの寄生虫研究への熱意が伝わってきました。
文系の私にも分かりやすくて、興味を引くようなお話でした。
今後も田中さんの活躍を応援致します!
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