【SDGs特集 Vol.3(前編)】宮川さん:インドへ飛び立て!大量生産・大量消費・大量廃棄時代のリサイクル革命に挑む〜(第138回)
2021.04.08
トビタテ事務局インターンの福永です!
SDGs特集第3弾では、持続可能な社会の実現に必要不可欠な「リサイクル技術」に着目したインタビュー記事をお届けします。「大量生産・大量消費・大量廃棄」の時代に生きる私たちは、1消費者としてどんなアクションを起こすことができるのか…
フランスの国立科学院連合エコールセントラル・ナント校の修士課程にてロボット工学を学び、現在は自動車中古部品の輸出販売・自動車リサイクル事業を展開する会宝産業株式会社で働くトビタテ1期生理系人材コースの宮川裕基さんにお話を伺いました。
宮川さんの過去インタビュー記事はこちら:
第5回:宮川裕基さん(1期 理系複合・融合人材コース)前半

1991年滋賀県生まれ。 ・会宝産業株式会社海外事業部 新卒入社(2017年) ・海外自動車リサイクル事業の事業開発を中心に、幅広い業務に従事。 ・会宝産業が2019年にインドに設立した合弁会社 Abhishek K Kaiho Recyclers pvt ltdの駐在員として、2021年より赴任予定(コロナで渡航延期中)。 ・同社の自動車リサイクル事業の海外展開を通じて、自動車リサイクルのバリューチェーンの構築を通じて資源循環社会の実現・雇用創出を目指して活動中。
「本当に必要な技術を必要な人に届ける」
福永:本日はよろしくお願いします。早速ですが、宮川さんが現在働いている会宝産業株式会社(以下会宝産業)とどのようなきっかけで出会ったのでしょうか。
宮川:よろしくお願いします。就職活動をしている中で「自分の選択は本当にこれでいいのかなあ」とモヤモヤしていたときに、TICAD VI(第6回アフリカ開発会議)の出展企業リストを見ているとユニークな事業をやっている会社が目に入りました。
ちょうど会社説明会をやっていたので「気分転換にとりあえず石川に行こう」というノリで訪問したその会社がすごく「面白い会社」だったんですね。
福永:宮川さんが今おっしゃった「面白い会社」というのがもしかして…!
宮川:はい、私が働いている会宝産業です。福永さんは、自動車リサイクルってどんなことをするかご存知ですか?
福永:うーん、全くイメージがつかないですね…
宮川:自動車リサイクルは、使わなくなった車を解体し、まだ売れるものは中古部品としてリユースし、残ったスクラップは素材として回収するというものです。解体の際には、オイルやフロンガスなど環境に有害なものは適正処理を行います。
決してハイテクな技術ではないですが、この会社に出会った時、これからの世界、特に環境問題が深刻化している新興国のどこにいっても必要とされる技術だと感じました。何より私がトビタテで渡航した東ティモールで何かできないかと考えていた時に、現地で走っていたトヨタ車がふと目に浮かび、自動車リサイクルならこの国の一産業になるのではないかと思い、気づけば入社を決めていました。
就職活動では自分が学んできた専門知識を活かしつつ「本当に必要な技術を必要な人に届ける」という想いで、開発コンサルタント職に絞って就活を行っていました。しかし、最終面接を前に「何か違う…」と思うようになりました。その理由は「クライアントに助言・指導を行うコンサルタントという立ち位置ではなく「現場の最前線で自ら事業を開発し、推進するプレーヤーとして働きたい」という価値観があったのだと思います。

ジブチのゴミ山。車だけでなく様々なゴミが集められ、処理される目処は立っていない
開発コンサルタントの仕事は国に大きな影響を与えますが、日本政府と現地政府の合意の元、JICAがプロジェクト化し、ODA(政府開発援助)ありきで事業を進めていくケースが多いという認識です。政府トップダウンで実行していく側面が強い一方で、ビジネスは相手に「ありがとう」と言われる価値を創れば事業の自由度は自分たち次第で無限大です。
会宝産業のカルチャーの一つに「やりたいことはなんでもやらせる」があります。私にとってはコンサルタントではなく、現地のビジネスパートナーと一緒に多様な事業を自由に一緒に作っていくことのほうが楽しそうだ、と思えたんですよね。
そんな中で「世界のあとしまつ」というミッションを掲げるこの会社に強く共感し、中小企業だからこそ、自分次第で若いうちから裁量を持って仕事ができ、ベンチャー企業では資金的に難しくてできないことも幅広くできるのではないかと思いこの会社に入社しました。
[社会課題解決の最前線]
福永:就職活動で「ここだ!」とピンとくる会社、自分のやりたいことにフィットする会社を見つけるのってすごく難しいですよね。宮川さんは会宝産業でどのようなお仕事をしてきたのでしょうか?
宮川:入社した直後は生産現場で自動車の解体業務に関わりました。例えば、タイヤ運びや車のオイル抜きなど、暑い日も寒い日も現場に張り付いて仕事をしていました。
福永:私が想像していた仕事とかなりGAPがあります。まさか宮川さんが一年目はタイヤ運びをしていただなんて大手の企業だと新入社員のための研修の機会が用意されているイメージがありますが…。
宮川:現場でのOJTが終わってからは、海外人材の技術研修統括、海外顧客との折衝、海外事業展開の市場調査、事業モデルの検討、工場設備の調達交渉など、海外事業展開の遂行全般に関わっています。最近は自動車リサイクル業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)という文脈で、工場のIoT化プロジェクトを社内提案して進めています。やりたいことはなんでもやらせてくれる会社で、スピード感もあるので、非常にやりがいある環境です。

社会人3年の期間を経て、インドの合弁会社が設立され、現地駐在員としての出向が決まりました。入社当時から思い描いていた「収益を上げつつ、新興国の環境問題を解決するビジネス」を立ち上げるべく、いよいよスタートに立てる…!と思っていたら…
福永:コロナがやってきた、という訳ですね。
宮川:はい、そんな石川県在住の社会人4年目です。
[ インドでの挑戦のスタート地点 ]
福永:インドで合弁会社を作るに至った経緯を教えてください。
宮川:新興国の多くでは、自動車リサイクルの関連法規制がないのが現状です。その結果、インフォーマルセクターが廃車からお金になるものだけ回収し、オイルは垂れ流し、フロンガスは大気解放するなど環境問題が深刻化しています。例えば、私が技術研修を過去に担当したマレーシアでは、放置車両が溢れて社会問題となっています。そのような現状を政府も良く見ておらず、対策を打つべく、各国で自動車リサイクル法の策定が進められています。
そのような中、インドでも同様に自動車リサイクル法を制定し、一定期間を経過した車両については強制的に廃車とする政策ができるという話を現地パートナーが聞きつけ、自動車リサイクル事業展開を行いたいので当社と合弁したいとの申し入れがありました。日本では当たり前のように自動車はリサイクルされていますが、インドでは適正処理される仕組みが整っておらず、解体業者のライセンスを取得している企業もインド全土で一社しかないと言われています。ここに私たちも参入し、日本で50年以上に渡って培ってきたノウハウを現地パートナーと展開予定です。

合弁契約の調印式の様子。インドの現地パートナーと何度も打ち合わせを重ね、ようやく辿り着いた契約の調印(左:インド現地パートナー。右:会宝産業 会長、社長。)
最初のモデル工場で事業が上手くいけば、各州で事業の横展開を行い、一台でも多くの廃車を適正処理し、同時に雇用創出にも貢献できればと考えています。
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