第146回:~はじめての留学特集 vol.4 ~「留学で芽生えた『1歩外に出る』気持ち」藤谷雄紀さん
2021.04.26
「海外初チャレンジ枠」で留学したトビタテ生を取り上げて,留学の動機や留学中の話,そして,留学が与えた影響に関して紹介する「はじめての留学特集」。
第4回は理系,複合・融合系人材コース(未来テクノロジー人材枠)でドイツに留学した藤谷雄紀さん。留学後にも,国際学会で発表や,とまりぎでの活動と精力的に活動している藤谷さんの行動力の原点は何なのか,そして,留学を通して起きた変化,将来の夢などを聞きました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン・大学12期)】
目次
今回のトビタテ生紹介
名前:藤谷雄紀
トビタテの期・コース:大学11期・理系,複合・融合系人材コース(未来テクノロジー人材枠)
留学先:ドイツ・ハノーファー
留学テーマ:IoTを支える無線通信の研究者を目指して〜ドイツの研究者との人的コネクションの確立〜
2019年10月からトビタテ生の同窓会組織「とまりぎ」の東海支部で活動する。2020年度は東海支部の代表として活動。帰国後は国際学会などへの論文発表などを精力的に行い,初めての国際学会発表でベストプレゼン賞を受賞した経験をもつ。2021年4月からは大学院に進学し,研究を続ける予定。
夢への通過点としての留学
― 留学しようと思ったきっかけは何ですか?
大きな理由の1つは受験に失敗して高専の専攻科に進むことになったことです。ずっと同じ学校にいて同じことをやっていていいのかなと思ってたんです。そんな思いを持ちながら,学校のプログラムでドイツのハノーファー大学に行ったんです。その時に漠然とこういう環境で1回勉強してみたいと思ったんですよね。
僕は将来,無線通信の分野で研究職に就きたいと思っていて,「無線通信の研究=藤谷」となれたらいいなとも思っています。そういう夢を叶えるには海外で研究したという経験は持っておきたいなと感じて留学を決意しました。
それに, 研究室の指導教員の方も僕の思いを知っていて,「海外の研究者とコネクションができることは将来の役に立つ」と言って背中を押してくれたことも要因でした。
― トビタテで留学しようと思ったきっかけは何ですか?
留学に行きたいけど,両親に負担をかけたくないなと思っていたときにトビタテを知ったっていうことが大きな理由です。その時に,決め手となったのは「海外初チャレンジ枠」があったことです。1年とか長期留学で支援してくれる奨学金はたくさんあったんですけど,短期の留学でも奨学金がもらえる可能性があること,そして,海外経験が少なくても,トビタテに受かる可能性があるということを知って,トビタテに応募しようと思いました。
― ドイツに留学しようと思ったきっかけは何ですか?
自分の通っていた高専との協定校がドイツにあったということが理由の1つです。実践活動先を自力で探すことって大変だなと思っていたこともあって,ぶっちゃけ弱気な選択だったんですけど,協定校だったハノーファー大学に留学を決めました。それに,ヨーロッパの中でドイツは工業や工学の分野ではトップクラスなんですよ。自分の研究分野である無線通信の分野でもドイツは進んでいます。とくにハノーファー大学はTU9にも選ばれていて,工業系に強い大学だったんです。
研究面以外の決め手をいうと,日本との似ている点が多いことです。気候や産業構造,国土面積や人口とかが日本と似ていたところも面白いなと思いました。
*TU9:ドイツを代表する9つの工科大学が結成している連合体のこと。ドイツの技術者の約50%がTU9の中のいずれかの大学の卒業生である。
今まで知らなかったこと,できなかったことに出会えた
― ドイツではどんなことをしていたんですか?
ハノーファー大学で2ヶ月間インターンという形で研究していました。留学期間が2ヶ月という短い期間だったので,ドイツのIoT研究者と人的コネクションを確立することを目的に活動していました。
最初,高専で行っていた研究を発表したんですよ。学外かつ英語で研究発表をすることが初めてだったんです。だから,ドキドキでした(笑)それでその発表をもとに2ヶ月間実験することを決めてもらいました。
― 具体的にはどんな研究をしていたんですか?
高専では,計算とかばかりであまり装置を使った実験をしていなかったんです。でも,現地の教授と話し合って,ドイツではFMCWレーダーの実験とかをしていました。アンテナなどの装置を使った実験をさせてもらえたのはいい経験でした。僕が行った実験は学生実験の資料として使われたようです。
*FMCWレーダー:連続派レーダーの一種。送信波と反射波の周波数差から距離を求めるレーダーのこと。
― 留学中の印象的な出来事や思い出はありますか?
「メンザチャレンジ」と題して,全く知らない大学生や留学生に話しかけて,交流の場を自ら設けたことです。
基本的に2ヶ月間研究室にいるので,現地の大学生や留学生と交流の場を作るのに苦労したんです。そこで大学内にある「メンザ」と呼ばれる学生食堂に目をつけたんです。「ここならいろんな学生が集まっているし,交流できるかも!」と思って(笑)急に知らない学生の対面に座って「何してるの~?」って話しかけて,お昼の時間を過ごしていました。そうやって話しかけた現地の学生と連絡先交換したり,中国・インド・イラン・ベトナムからの留学生とも話したりすることができました。
日本にいるときはそんな知らない人に話しかけまくるとかはしないんですよ。僕の性格から想像できないくらい積極的でしたね。「何かやらなきゃ!」っていい意味で追い詰められていたのかもしれません(笑)
留学で芽生えた「1歩外に出る」気持ち
― 留学から帰ってきて何か変化はありましたか?
留学の影響かどうかは分からないですけど,半年以上煮詰まっていた研究が進んだんですよね。
それに留学中に英語で発表したという経験が自信になって,「もっといろんな人から意見をもらいたい!」と思うようになったんです。その心境の変化もあって,国際学会に論文を発表するようになりました。そして,初めて国際学会で発表したものがベストプレゼンテーション賞をもらえました。こういった経験がさらに自信に繋がって4月にも国際学会で発表します。この調子で「修士のうちに博士レベルの実力つけてやろう!」と思っています。
― 帰国後に始めたことはありますか?
とまりぎコアとして活動を始めました。トビタテ生って学校では出会えないくらい幅広い分野で活躍していて,おもしろい人たちがいっぱいいるんです。そんなおもしろい人たちと留学が終わってしまったら関われなくなるのかと思ったら,もったいないなと感じたんです。それで,たくさんのトビタテ生と繋がりたいと思ってコア活動を始めました。
2021年4月からはとまりぎ全体を束ねる立場となるので,トビタテコミュニティ・とまりぎコミュニティの魅力をもっと多くのトビタテ生に伝えていきたいです。「トビタテで留学してよかったことはなんですか?」って聞かれたときに,トビタテ生みんなが「トビタテコミュニティに入れたこと」と答えてくれたらうれしいですね。
とまりぎ合宿の様子
― 留学は今の自分にどんな影響を与えましたか?
留学前は自分でなんでもやろうとしたり,自分のできる範囲で頑張っていたりしたんですけど,留学してみたら,生きていく上で「人」って大事なんだなと思えるようになりました。留学の決意をするときに背中を押してくれた研究室の教授や,悩んでいるときに助けてくれるトビタテ生仲間とか。留学前はあんまり人との出会いを大切だとは思っていなかったんです。けど,自分の決断の裏には人との出会いがあるなと思ったときに大切だと感じることができました。そのことに留学は気づかせてくれました。
あとはトビタテ的にいうと「comfort zoneを飛び出せ!」の感覚が分かるようになりました。1回1人で海外で研究したという経験から,日本だけとか閉じた空間で威張っていてもしょうがないなと思って,国際学会で発表してみようと思いました。それに,とまりぎの東海支部の代表とか,とまりぎの副代表に挑戦してみようとも思えるようになりました。
自分の中で芽生えた「1歩外に出るか!」という気持ちが行動のすべてを後押ししています!
― 藤谷さんの今後の展望・visionを教えてください
僕は自分の中に2つの軸があると思っています。1つ目は日本企業で研究職に就きたいということです。これは留学前から変わっていません。「日本企業の研究者として無線通信の分野で世界をとる!」は言い過ぎかもしれないですけど(笑)グローバルに活躍したいと思っています。
2つ目は自分でプロジェクトや事業をしたいなということです。これは自営業をしている父の影響ですね。研究もしながら,自分で事業やプロジェクトを運用することって面白いなと思っています。
― 最後に留学を夢見る学生へのメッセージをお願いします。
留学ってどれだけ準備しても準備不足になると思っています。なので,語学力とか不安要素が多少あったとしても,「とりあえず,飛び出せ!!」って言いたいです。僕は実際に留学に行ってみて思ったのは,「パッションとノリで何とかなる!」ということです。英語で研究発表もしたことなかったけど,できたし,英語で知らない人に話しかけてみたり。それも全部パッションとノリでできたことだと思います。「留学=すごいこと」「留学はすごい人しかできない」って思っている人が多いと思うんですけど,どんな動機でも行ってみるといいと思います。実際に行ってみたら,楽しいし,パッションで何とかなります!!
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