第181回:~はじめての留学特集 vol.14 ~「トビタテでの出会いは人生の宝物」半井翔汰さん
2021.09.06
「海外初チャレンジ枠」で留学したトビタテ生を取り上げて,留学の動機や留学中の話,そして,留学が与えた影響に関して紹介する「はじめての留学特集」。
第14回は新興国コースでタイに留学した半井翔汰さん。将来のことを第一に考えて,大学生活を送ることを決意した半井さん。周りとのギャップを感じながらも,自分の将来にプラスになると留学を決意しました。そんな半井さんが送ったタイ留学の様子,そして,留学後に始めた活動と,将来の夢を聞きました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】
目次
今回のトビタテ生
名前:半井翔汰
トビタテの期・コース:大学6期・新興国コース
留学先:タイ
留学テーマ:タイで成長したい!
2017年に大学のプログラムを利用し,タイに留学。帰国後はインターンシップ事業の運営やハーバード大学生とのディスカッションイベントの運営などの様々な活動に関わる傍ら,同窓会組織「とまりぎ」関西支部コアメンバーとして活動していた。
後悔する学生生活を送りたくなかった
― 留学しようと思ったきっかけは何ですか?
将来に対する漠然とした焦りを感じた大学2年生の時に留学を決意しました。もっと海外に行きたいと思ったんです。
― その当時感じていた「焦り」とはどのようなものだったのでしょうか?
目標を達成できないという気持ちだったと思います。自分は受験に失敗して進学したかった大学に行けませんでした。それに,ずっと続けていた野球も大学進学を機にやめてしまったんです。そんな風に大学生活が始まりました。なので,自分の中では,受験に失敗した分,納得のいく就活をするという目標があったんです。そこからは将来の役に立ちそうな英語を伸ばすためにE.S.S.(英語研究部)という部活に入りました。そこで,ギャップを感じるようになったんです。部活外の友人や、学外の友人が自分のやりたいことを実践して活躍している姿を見て,今のままの環境だったら,自分が最初に立てた目標が達成できないと思ったんです。それが自分の中での焦りでした。
ー そんな焦りを感じていたときに,もっと海外に行ってみようと思ったのはなぜですか?
実際に英語が話されている国で自分の英語力を試してみたいという思いがあったからです。2泊3日の海外旅行に行ってみたり,夏休みに10日間のフィールドワークにマレーシアに行ってみたり,トビタテで留学する前にも海外に行っていました。海外に行くたびに「もっといろいろなところに行ってみたい」「英語を使って何かをしたい!」「将来に役立つような経験をしたい」と思っていたんです。
その時に,自分が通っていた大学に,英語を使って海外で仕事をするプログラムがあるということを知って,応募しました。
― トビタテに応募しようと思った理由はなんですか?
奨学金がもらえるなら,応募してみようかなって思って応募しました。自分が応募する前の年くらいから,大学でトビタテで留学する人がちらほら出始めていたんです。プログラムで留学に行くことは決まっていたので,ちょっと応募してみようかなという気持ちでした。
でも,実際にトビタテで留学した人の話や受かった人の話を聞くと,奨学金をもらえるということ以上の価値があるということをよく言っていたんです。それを聞いて,コミュニティに入るということも含めて,自分が入学当時に立てた目標に近づけそうだなという期待を持って応募しました。
― 留学先にタイを選んだのはなぜですか?
東南アジアに派遣されるプログラムで派遣先が7つくらい選択肢があったんです。その中で,1番ビジネススキルを磨けると感じたのがタイだったので,タイを選びました。海外で働くという体験ができると思ったことが決め手です。タイに行きたくてタイを選んだのかというと,そうではありませんでした。
自分が留学していた2017年はすでにタイに日本企業が進出してきている時代でした。さらに,少子高齢化が日本よりも速いスピードで進んでいくことが予想されている時代でもありました。国の産業を発展させるために,タイの東の港町に工業区域のようなものを作って,企業を誘致していこうとしていたんです。そんな国で,学生のうちに働けることは滅多にない機会だなと思っていました。
タイで成長したい!
ー タイではどんなことをしていたんですか?
日本とタイの交流を促進するという目的のNGO団体で働いていました。そのNGOはタイ政府の省庁が昔作った機関で,日本企業で働くタイ人とタイ企業で働く日本人に研修やセミナーを開催していました。加えて,語学学校の運営もしていました。自分は研修やセミナーの開催の手伝いをしたり,現地の日本人社長や日本人工場長にインタビューをするリサーチ活動をしていました。そのころから人材系の職業に興味があったので,現地に住んでいる人を育成して働いてもらった方がいいのか,外部から経験者やスキルのある人を呼んで来た方がいいのかということをテーマにリサーチ活動をしていました。
― NGO団体はどんな環境だったんですか?
500人くらいが働いていたんですけど,日本人は2,3人いました。その方たち以外はみなさんタイ人でした。一緒に働く人たちのなかで英語が話せる人が2,3人くらいしかいなかったんです。なので,コミュニケーションは見よう見まねで覚えたタイ語を使うことがありました。相手も英語を積極的に使ってくれていました。
仕事も,セミナーのゲストのアテンドや翻訳業務,資料修正や意見だしなど,結構いろんなことをやらせてもらっていました。
でも,あまりいろんな人と関わる機会が少なかったので,自分から外に出ていかないといけないなと思い,リサーチ活動を始めました。
― 留学中の印象的な出来事はなんですか?
いろんな人に会ってきたなかで,大学のOBOGの方との繋がりが増えたことです。自分の母校のOBOGのタイ支部活動がすごく盛んで,タイの子会社の社長や工場のトップとして赴任している方も多かったんです。日本の大手メーカーのタイ支社の社長の方や,有名音楽プレイヤーを世界に広めた人の話を聞く機会もありました。「どんな気持ちで海外に働きに来ているのか」といった話を聞いている時に,時間をかけて考えながら行動して,目の前のことをちゃんと積み重ねていった先にこの方たちの生き方があるんだなと感じました。なので,自分とすごいことをしている人を切り離して見て「この人にはなれない」「この人は違う」って思うのではなくて,自分の延長線上にいる人と捉えたら,自分がなりたい姿にたどり着けるんだということをすごく感じました。今でもその人たちの話を鮮明に覚えています。飲み屋さんの雰囲気も覚えているくらいです。
トビタテでの出会いは人生の宝物
― 留学後に変わったなと思うところはどこですか?
すごくアクティブになりました。留学中に自分一人で何かを生み出すことができなかったという葛藤があったんです。事前研修とかで出会うトビタテ生って留学がちゃんと手段化されていて,留学後のVisionも決まっている人がたくさんいたんです。そんな人たちを見ながら「自分には彼らほど明確なものがない」って自分の中では思っていました。でも,話していくうちに「こんなことやってみたいな」「何かを生み出したいな」と思うようになって,その気持ちで留学しました。だから,そんな思いがあったのに,留学では生み出せなかったなという葛藤がありました。でも,同時に自分はまだそういう段階にいなかったんじゃないかなということにも気づかされました。
それに気づけたこともありましたし,留学をきちんと終えることができたという自信もついたので,行動を起こすことに対するハードルが低くなりました。
それと,トビタテで出会った仲間の影響も大きいかもしれません。自分が突き詰めたいテーマとか興味関心に向けて,アクションを起こしつづけている姿勢がすごく印象的でした。そんな人たちから刺激をもらっていたのかもしれません。
― 留学後の活動について教えてください。
トビタテコミュニティでは同窓会組織「とまりぎ」の関西支部のコアとして1年間活動していました。「とまりぎ」の活動はすごく楽しかったです。文部科学省での合宿もとても盛り上がっていたことを覚えています。社会人になってからも,同窓会の司会とかで関わっていた時期もありました。
トビタテコミュニティ以外でも,起業塾のようなものにも通っていて,事業を運営してみたこともありました。そこで,団体を立ち上げてインターンシップを運営していました。それに,ハーバード大学の学生と3日間ディスカッションをするという大学のプログラムにも選ばれて,参加していたこともありました。自分が参加する前は小規模なプログラムだったようですが,自分たちの年は,企業の協賛をもらって,大きな会場を取って,高校生をゲストに招いて開催しました。ハーバード大学の学生は論文に基づいて,会話を進めていくんです。それが,とても印象的でした。ハーバード大学の学生と話す機会なんて,なかなかない機会だったので,とても刺激になりました。
今,振り返ると,トビタテがきっかけになって,外の繋がりが増えたのかなと思っています。E.S.S.っていう大学内のコミュニティから始まって,トビタテをきっかけに,大学の外にまでコミュニティが広がって,そのおかげで興味の幅が広がって,さらにコミュニティが広がったなと思っています。
― トビタテで留学してよかったなと思うことは何ですか?
繋がりができたことです。今年,異動で東京に引っ越してきたんです。そのタイミングで,トビタテ生3人とシェアハウスを始めました。留学している時だけじゃなくて,今でも,「何しているの?」とお互いの近況が知りたくなるような人とたくさん出会えたということは人生の財産だなと思っています。
最初のきっかけは支給型の奨学金ということに魅力を感じたからでした。でも,本当にそれ以上の価値がありましたし,心から感謝できるプログラムだなと今でも思います。
― 半井さんの今後のVsionは何ですか?
シングルマザーの支援をしていきたいなと思っています。自分が大人になるにつれ、家庭環境が変化していきました。時には実家に帰ることがしんどい時期もありましたが,兄弟もいなかったので,自分の立場を理解してくれる人は決して多くありませんでした。あとから知ったことですが,この時期,苦しかったのは自分だけではなく,両親も同じだったんです。そのことを聞いて,「他人の家のことには首を突っ込まない」ということが要因で,誰からも救われていない,もしくは放置されている家族の問題があるんじゃないか,それは結構大きな問題なんじゃないかなと思いました。
詳細はここでは割愛しますが,1つのアプローチとして,母親が子育てと働くことを両立しやすい世の中になれば,家族の問題で悩むことが少なからず減るんじゃないか,そして,生き方の選択肢が増えるんじゃないかと思いました。
なので,母親が子育てをしながら,働けて,経済的に自立ができる,そして,生き方のバリエーションを増やすことをしていきたいなと思っています。
―最後に留学を夢見る学生へメッセージをお願いします。
「ピンチはチャンス」だと思います。世の中には誰もやらないからこそ価値があるものがあると思います。だからこそ,留学に行ったということの希少価値が増している時代だと思っています。こういった状況でも何とかして留学に行ったという経験は何物にも変えられないくらい今後の人生に生きると思います。越境体験や逆境を乗り越える力を鍛えることを留学の本質だと捉えると,留学という機会を勝ち取るためにどうやって逆境を乗り越えるのかということは留学に行くためにはもしかしたら必要なステップなんじゃないかなと思います。
もし,留学に行けなくても,自ら選択肢を作りにいったという経験は残ります。それに,留学でやりたいと思っていたこと,新たにやりたいと思ったことが自分の力で実現できるのかということが試されている瞬間だと思います。留学だけにとらわれずに,自分が本当にやってみたいこと,どんな自分になりたいのかということに向き合い、なりたい自分に少しでも近づけることを応援しています!
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