第184回:~はじめての留学特集 vol.15~「挑戦への第1歩がトビタテでの留学だった」下地言奈さん
2021.09.15
「海外初チャレンジ枠」で留学したトビタテ生を取り上げて,留学の動機や留学中の話,そして,留学が与えた影響に関して紹介する「はじめての留学特集」。
第15回は,大分県地域人材コースでイタリアに留学した下地言奈さんです。大学入学後すぐに地域人材コースに応募した下地さん。「自分を変えたい!」と思って決意した留学生活はどのようなものだったのか,そして,帰国後から現在に至るまでの下地さんの活動についてお聞きしました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】
目次
今回のトビタテ生
名前:下地言奈
トビタテの期・コース:大学9期・大分県地域人材コース
留学先:イタリア
留学テーマ:地域の誇りとまちづくり
留学後は大分市と共同で「ベンチプロジェクト」を行い,積極的に地域活性化に取り組んでいる。トビタテコミュニティでは,同窓会組織「とまりぎ」の九州支部で活動している。
挑戦への第1歩がトビタテでの留学だった
― 留学しようと思ったきっかけは何ですか?
大学の1つ上の先輩がトビタテで留学したことがきっかけです。大学に入る前から留学したいという思いはありました。私は沖縄県出身で,周りに海外の人が多い環境でした。それに,友達も中学や高校から留学している人もいました。そんな私にチャンスが巡ってきたのが大学生になってからだったのかなと思います。入学してから,「何かチャレンジしてみたい」とか「自分を変えたい」という気持ちが強くなって,身近な先輩が留学したことをきっかけに自分も留学しようと決めました。
― トビタテで留学しようと思った決め手は何ですか?
大学の先輩がトビタテで留学していたという安心感が大きかったからだと思います。それと,高校の時にも友人がトビタテで留学していたのを見て,素直に楽しそうだなと思っていたからというのもあります。
入学してすぐに地域人材コースの存在を知りました。5月が地域人材コースの応募締め切りだったので,大学の先生に相談しながら,すぐに書類を準備していました。あの時が1番行動力があったなと思っています。
― 留学先にイタリアを選んだ理由は何ですか?
建築学科に所属していて,街づくりに興味があったからです。イタリアには空き家を利用したホテルである「アルベルゴ・ディフーゾ」といったような独特な街づくりをしている例がありました。そんなイタリア独自の街づくりを自分で見て,調査したいと思ったんです。
特に決め手となったのは,イタリアも日本と同様に少子高齢化が進んでいることです。日本と社会状況が似ているイタリアでどのような街づくりをしているのかということを知りたかったんです。自分がいる大分県も過疎化が進んでいる地域なので,留学で学んだことを大分県の活性化に活かせたらいいなと思いました。
*アルベルゴ・ディフーゾ:イタリア語で「分散したホテル」という意味。空き家をリノベーションして,レセプション・客室・食堂などをそれぞれの機能を棟に分散させることによって街を1つのホテルのようにしている。
イタリアでのフィールドワーク留学
― イタリアではどのようなことをしていたんですか?
1ヶ月間の短期留学でイタリアに行きました。実戦活動として,先ほど話したアルベルゴ・ディフーゾに泊まって,インタビュー調査をしました。私が泊まったホテルのオーナーの方はイタリア人ではなくて,ベルギー出身の方だったんです。しかも,住人が40人程度の小さな村だったんです。そんな小さな村なのに,外国人のオーナーを受け入れていたので,どうしてなのかなと思っていたんです。そうしたら,「自分たちの街を活性化してくれるのであれば,イタリア人以外の人も受け入れています」と地元の方がおっしゃっていました。街の活性化は地元の人じゃないとできないということはないんだなと思いました。
それに,ホテルには街の女性たちが食事の準備や洗濯,掃除などをするスタッフとして働いていました。街の中で雇用を生み出して,経済を活性化させていることもアルベルゴ・ディフーゾのいいところだなと感じていました。泊まっている方もホテルに泊まっているのに,その街に住んでいる気分が味わえるので楽しかったです。
― アルベルゴ・ディフーゾでの調査以外にはどんなことをしていたんですか?
留学の1週目と4週目にローマ大学に通っていました。授業を受けたり,自分がどんな留学をしているのかということをプレゼンしたりしていました。授業は建築,街づくり,林業,イタリア文化に関する授業を取っていました。講義は全部英語だったので,イタリア語が話せなくても大丈夫でした。でも,はじめての海外で英語もそんなにできる訳ではなかったので,聞き取ることに必死だったのを覚えています。
あとは,美術館の改修建築を見に行ったり,ルビエトというスローシティで有名な都市や,イタリアで震災の被害にあったラクイラに行ったりしていました。特に,日本でも大きな震災があった後だったので,ラクイラには震災後にどのように街の復興や街づくりをしているのかということをフィールドワークしていました。
インタビュー調査やフィールドワークを通してたくさんの人と交流が持てたのでとても楽しかったです。イタリアの人はフレンドリーでアンケート調査も快く答えてくれましたし,「案内してあげるよ!」って話しかけてくれてすごくうれしかったです。
*スローシティ:地域の食や農産物、生活・歴史文化自然環境を大切にした個性・多様性を尊重する新たなまちづくりを目指すもの
― 留学中に大変だったことはありますか?
イタリア語での会話です。特に,私が泊まったアルベルゴ・ディフーゾは地方にあったので,英語が話せる人が少なかったんです。辞書を使って調べたり,インターネットを使って翻訳したりして会話していました。
私はイタリア語に自信がなかったので,インタビュー調査の時は事前にイタリア語で質問を書いたボードを作って,シールを貼ってもらう方法でアンケート調査をしていました。
― 留学中の印象的な出来事はありますか?
はじめての海外だったので,海外での何気ない日常生活が印象に残っています。特に,イタリアではドアの鍵を開けることが難しかったんです。全然開けられませんでした。夜にホテルの鍵が開かなくなって,ネットで「イタリア 鍵 開かない」って調べてどうにかしようとしました(笑)。でも,イタリア人にしか分からないコツがあるみたいで,全然開かなかったんです。「夜なのに,どうしよう!」って思っていたら,おじさんが通りかかって,「助けてください!鍵開けてくれませんか?」って頼んだら,一発で開きました。「えーーー!」ってびっくりしました。その日は1歩も外に出ませんでしたね。「外に出たら,鍵が開かなくなる!」ってビクビクしてました。
あとは,イタリアの人の地元に対する愛の強さも印象に残っていました。アンケート調査をしていたときに,「自分の住んでいる街に誇りを持っていますか」という項目には,100%で「はい」と答えていました。それは,日本人にはあまりない考えなのかなと思いました。私の周りにいる日本人に同じ質問をしても,「別に……」って帰ってくることが多かったです。インタビュー調査をした場所は全然都会でもないですし,普通の街だったんですけど,それでも,自分の街が1番だと思っていることはステキだなと思いました。
行動することの大切さを学んだ
― 帰国後に変化したことはありますか?
自分に自信が持てるようになったと思います。トビタテに合格したり,はじめて海外で1人で生活したりしたことで,「自分もできるんだ」と思えるようになりました。
― そんな下地さんが留学後に始めた活動は何ですか?
大分市と大分県の建築学会が運営していた街にベンチを置くことによって,どのように活性化していくのかということを調べる「ベンチプロジェクト」に参加しました。イタリアにはいろんなところにベンチがおいてあって,そこに座っておしゃべりをしている人がたくさんいたんです。その光景がとても印象に残っていたので,大分市でも似たような活動があるということを知って,参加することにしました。そのプロジェクトを通して,ベンチを置くことによって,人との交流が生まれ,コミュニティが形成される効果があることが分かりました。治安の観点からベンチが撤去される事例もあるのですが,私はベンチで街が変わる可能性があると思ったので,もっとベンチのある場所が増えたらいいなと思います。
トビタテコミュニティでは,1年半くらい前から同窓会組織「とまりぎ」の九州支部で活動しています。自分でイベントを企画して,九州にゆかりのあるトビタテ生と集まっていました。「とまりぎ」の活動を通して,企画力を身に着けることができましたし,トビタテ生との繋がりも増えました。
― トビタテで留学してよかったことはなんですか?
全国に知り合いができたことです。とまりぎでの活動を始めてさらに知り合いが増えました。学校の友人に相談できない悩みを相談できたり,共通の悩みを持っている人と話せたりすることができました。
それに,トビタテは縦の繋がりが強いところがいいところだと思います。先輩トビタテ生から,留学経験を通して学んだことや,トビタテコミュニティでの経験を教えてもらうことができましたし,私自身もそういうのを伝えることができるということはトビタテならではだなと思いました。
さらに、トビタテ生だからという理由で中高生に向けて自分の留学体験を話す機会もたくさんありました。そういう経験ができるのもトビタテコミュニティの強みなのではないかなと思います。
― 下地さんの今後の展望やVisionを教えてください。
今は大学院進学を目指しています。現在、建築学科でデザイン系の研究室で勉強していますが,大学院では都市計画を含んだ街づくりを専門に勉強したいなと思っています。私が今まで大学で学んできたことと絡めて,もっと広い視点で建築を学んでいきたいです。私は街のみんなが使える建物を設計したいと思っているので,一級建築士の資格を取りたいです。その資格があると,公共建築を建てることができるようになるんです。
社会人になって,自分が建てた建物がみんなを笑顔にする空間になったらいいなと思っています。それが私の夢です。
― 留学を夢見る学生へメッセージをお願いします。
私はトビタテで留学をして,行動することの大切さを学びました。留学したいなと思っているだけじゃ,自分が変わることはなかったんじゃないかなと思っています。コロナ禍で,留学の見通しがたたない人もいると思います。それでも,留学したいと思っているのであれば,この間に語学を勉強するとか留学に必要なことを自分ができる範囲で続けていくことが大切だと思います。今は留学ができなくても,その機会は必ず巡ってくると信じて,今できることを全力でやってほしいです!
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