第185回:~はじめての留学特集 vol.16~「思いがけない出会いが私を成長させてくれる」れいかさん
2021.09.24
「海外初チャレンジ枠」で留学したトビタテ生を取り上げて,留学の動機や留学中の話,そして,留学が与えた影響に関して紹介する「はじめての留学特集」。
第16回は大学8期でイギリスに留学したれいかさんです。高校時代に海外の友達が出来たことがきっかけで留学を決意したれいかさん。留学中のボランティアの傍らに行っていた活動や帰国後,留学経験を活かして始めた活動などをお聞きしました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】
目次
今回のトビタテ生
名前:れいか
トビタテの期・コース:大学8期・多様性人材コース
留学先:イギリス
留学テーマ:誰もが自分らしく暮らせる日本を目指して~2020年東京オリンピック・パラリンピックをスタートラインに~
半年間,イギリスにボランティア留学をする。帰国後はパラスポーツを広める活動を行っており,現在も続けている。
パラリンピックを生み出したイギリスに行きたい!
― 留学しようと思ったきっかけはなんですか?
1番大きなきっかけは高校時代に出会ったカナダ人の友達です。その子は留学生として私が通っていた高校に来ていました。もともと海外に興味があって,その子と仲良くなりたいと思って,他のクラスだったのに話しかけに行っていました。交流を通じて,海外の人から見た日本ってどんな感じなのかということを意識するようになったり,当たり前だと思って気づいていなかった日本の素晴らしさに気づいたりするようになりました。
そんな経験から,自分も海外で暮らして,その土地の素晴らしさみたいなものを自分でも体感してみたいなと思ったことがきっかけです。
― トビタテを知ったきっかけはなんですか?
大学の先輩に結構有名なトビタテ生の方がいたんです。その方を通じて知りました。私の通っていた大学は小規模な大学だったので,留学するときの選択肢が少なかったんです。なので,トビタテに応募して,留学している人が多かったです。
― イギリスを選んだ理由は何ですか?
イギリスはパラリンピックを生み出した国だからです。それと,2012年に開催されたロンドンパラリンピックは史上最高のものだったと言われていたからです。
私の専門は特別支援教育で,その分野でトビタテを使って留学するときに,支援企業の方に応援したいと思ってもらうにはどうしたらいいのかということを考えていました。その時に,パラリンピックとリンクさせて,留学することを思いついたんです。東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることが決まっていたので,これらと関連させて,留学することにしました。
それで,パラリンピックを生み出したイギリスに留学することを決めました。特に,2012年のロンドンパラリンピックでは,大会を通して,障がい者に対する見方が変わったと言われていました。そのパラリンピックが終わっても,その効果が持続しているのかということを知りたかったんです。
パラリンピックを生み出し,そして,史上最高と言われるパラリンピックを開催したイギリスの障がい者スポーツの実施状況や,地域社会が誰にとっても生きやすい,利用しやすいシステム,生活状況なのかということを知りたいと思って選びました。
パラスポーツの魅力に気づいた留学
― どんな留学生活を送っていたんですか?
採用されたときは1年間の滞在予定だったんですけど,ビザの関係で半年に変更しました。その半年間は主に身体障がいのある方が暮らしている施設でボランティアをしていました。週5日,6-7時間ボランティア活動をしたり,夕方や休日にはパラスポーツのコーチング講習会や地域のパラスポーツチームに参加したり,選手やボランティアのお話を聞いたりしていました。
― 身体障がい者施設でのボランティア活動というのは具体的にどんなことをしていたんですか?
主にアクティビティの企画・運営をしていました。入居している方はほぼ1日中施設の中で過ごしているので,そんな施設での生活を楽しんでもらえるようなアクティビティを企画していました。クッキングをする時があったり,クラフトアートをする時もありました。イギリスではクイズがすごく人気なんです。なので,クイズをしていたときもありました。
入居しているの方は1人1人得意なこと,やりたいことがバラバラだったので,クラフトアートをするときは筆じゃなくて,持ちやすいスポンジを使ったり,クッキングも,役割を分担したり,使いやすい道具を選んだりしていました。
― ボランティア活動中に大変だったことはありますか?
コミュニケーションは大変でした。私も英語が得意な方ではなかったですし,施設にいる方の中にははっきり話すことが難しい方もいたのですごく大変でした。何回も聞き返して,必死にコミュニケーションを取ろうとしていたことを今でも覚えています。
― 施設のスタッフの皆さんはどんな感じでしたか?
スタッフはポーランドの方が多かったです。ポーランドは経済的に豊かな国ではないので,イギリスに出稼ぎに来ていると聞きました。そういう方たちが働いていました。やはりイギリスでも,障がい者支援に関わる人は少なく,人材不足は日本だけの課題じゃないなと感じていました。
― パラスポーツのボランティアはどんなことをしていたんですか?
私が定期的に訪問していたのはボッチャのチームをサポートしているボランティアの皆さんのところでした。最初は私がボランティアしていた施設の近くにあるパラスポーツのチームを調べて,飛び込みで訪問しました。ボール拾いをしたり,一緒にプレーしたりしていました。
ボッチャはルールも難しくないので,子どもでも分かりますし,手が不自由でも足を使って投げていたり,補助器具を使って投げたり,アシスタントの人に目を使って指示を出したり,ボールを投げられるもしくは何かしらの意思疎通ができれば参加できるスポーツなので,だれでも参加できていいなと活動しながら思っていました。
ボッチャ:ジャックボールと呼ばれる白いボール(目標球)を投げた後,対戦する両者がそれぞれ赤と青の6球を投げ合い,自球をよりジャックに近づけたチームまたは個人が勝者となる球技。
― イギリスと日本では障がい者に対する捉え方が違うなと思ったことはありましたか?
私がロンドンにいるときに,イギリスを練習拠点にしている日本のパラスポーツ選手の方と知り合ってお話を聞く機会があったんです。その時におっしゃっていたのは,イギリスは外出しやすいということでした。その方は車いすを使っていて,日本だと,電車に乗るにも誰かの手を借りないといけないし,人に嫌な顔をされたりすることも多かったそうです。でも,ロンドンだと,車いすで入りやすいお店も多いし,わざわざいやな態度を取ってくる人もいないということをおっしゃていました。
そうやって,身体障がいの方が積極的に外出できる環境ができたことによって,イギリス人の中で障がいのある人たちのことを考えた社会を作っていこうという考えが広がっているんじゃないかなと思いました。
― 留学中の印象的な出来事はなんですか?
人との出会い1つ1つが印象に残っています。ボッチャのチームに参加したり,障がい者スポーツ協会や大学が主催しているパラスポーツに関する講習会に参加していたんです。その時に,日本から来て,英語もちゃんと話せないけど「パラリンピックを盛り上げたいんです!」っていう私が参加しても,受け入れてくれたんです。「分からないことあったらなんでも聞いて」って言ってくれたり,本当は大学に所属している人しか参加できないのに,「せっかく来てくれたから」と講演会に参加させてくれたりしていました。出会った人すべてと今でも交流が続いている訳ではないですけど,とてもありがたい出会いだったなと思っています。
あとは,留学を目指すきっかけになったカナダ人の友人がスコットランドの大学に同じ時期に留学していたんです。私がスコットランドに講習を受けに行ったときに,5年ぶりくらいにスコットランドで再会しました。感慨深いものがありましたね。旅行でイギリスに行っていたら,そんな時間は取れなかったかもしれないですけど,半年間っていうある程度の期間滞在していたので,実現したんじゃないかなと思います。本当に会えてうれしかったです。
思いがけない出会いが私を成長させてくれる
― 留学から帰ってきて変化したことはありますか?
正直に話すとあまり変化がないなと思っています。でも,いろいろな人がいるから,自分の考えや価値観が正しいとは限らないんだなと改めて思うようになりました。私は自分が幸せでいるために,「自分はこうだけど,あの人はそういう風なのね」とあまり人に期待しすぎないようにしていたんです。そう思っていた方が楽だと感じていたので,もともと人と自分を切り離して考えていました。
留学を経験して,よりそういう考え方をするようになったと思います。「そうやって考えるのはきっとこういう経験があるからなんじゃないかな」みたいにその人のバックグラウンドを含んで人を見るようになりました。そのおかげで人に優しくなれるようになったんじゃないかなと思います。
― 留学後の活動について教えてください。
大学の学園祭でボッチャの体験ブースを出しました。学園祭には地域の子どもたちも遊びに来たりするんです。そんな子どもたちに向けてボッチャの体験をしてもらおうと思って出展しました。小さい子から小学校6年生くらいの子までたくさんの子が来てくれて,すごく楽しんでくれて,「よかった!友達にも教えてあげたい」って言ってくれる子もいました。それに,何回も遊びに来てくれる子もいて,とてもうれしかったです。大盛況だったので1回だけじゃなくて,もっと学生時代にそういう機会を作れたらよかったなと思っています。今は,就職を機に地元に戻って,できたばかりのボッチャ協会というところに所属して,ボッチャを盛り上げる活動に取り組もうとしています。
あとは,同じ大学にいたトビタテ生3人で大学の学生たちに向けて留学や就活,大学生活の情報交換をする団体を立ち上げました。私の大学は小さな大学で,学部も3つしかないんです。留学したいなと思っていても,動き出し方も分からなかったり,サポートしてくれる人を見つけにくかったりして,留学を諦めちゃう人もいるんです。私はトビタテで留学したからこそ,学部を超えた友人関係を築くことができて,就活や大学生活の情報交換がたくさんできたんです。でも,その情報にありつけない人ってたくさんいるんじゃないかなと思っていました。なので,大学内に積極的に情報交換ができる場を作ろうと活動していました。
― トビタテで留学してよかったなと思うことはありますか?
給付型の奨学金というところはトビタテを選んでよかったなと思っています。私は留学中,住居費と食費はかからなかったんです。でも,知り合ったパラスポーツ選手の方と一緒にイタリアへ試合に行ったり,ドイツに車いすバスケの試合を見に行ったりしていたんです。テーマに繋がる場所に遠征に行けたのは経験にお金を惜しまないことができたからだと思います。費用面をあまり考えなくてよかったからこそ,「今しか行けないよね?よし!行こう!」って行動に移せたんじゃないかな?と思います。
あとは,トビタテ生と知り合えたということもトビタテで留学してよかったなと思っています。トビタテのコミュニティの出会いって思いがけないことが多いんです。自分の目標や信念に向かって積極的に活動している人や,目標を実現している人達に囲まれていると,自分の消極的さや努力不足を痛感することも多いと思うんです。それで,いやだなって思うこともあるんですけど,そういう人達がたくさんいる環境にいないとそんなことも思わないし,自分の知識が広がったり,経験が深まったりすることもないと思います。そこから,もっとやりたいことが増えました。そんなことを思えるのもトビタテで留学して,いろんな人と出会ったからだと感じています。
― れいかさんの今後の展望や夢を教えてください。
今は働き始めたばかりで,仕事の中でやりたいことや自分にできることは何か?ということを考えるので頭がいっぱいですね。でも,将来的には,また海外で生活してみたいなと思っています。それと両立することは難しいかもしれませんけど,私が大好きな地元で,パラスポーツやいろんな人が楽しめるスポーツなど,いろんな手段を活用して,障がいとかいろんな枠を関係なく生きづらさを感じている人に対して,住みやすい,生きやすい環境を作っていきたいと思っています。
― 留学を夢を見ている学生に向けてメッセージをお願いします。
留学したいと思っている気持ちが大きいうちに何か行動を起こしてほしいです。大学3年生の後半とか4年生になると就職するのか,院に進むのかとか現実を突きつけられることが多いと思います。そんな現実に縛られる必要はないと思うんですけど,どうしても考える場面が多いんです。そんな現実が明るみになったときに,チャレンジすることが億劫になる気がします。学生って時間があるし,考えることもできるんです。実際に留学に行けなかったとしても,それ以外の手段で交友関係を広げたり,日本で実現する方法を見つけたりすることってできると思うんです。それに,大人が「学生だから」っていう理由で用意してくれる機会や目をかけてくれることっていろんなところにあるはずです。そういうことを見逃さずに大事にしてほしいです。怖気づかずにたくさんのことにチャレンジしてください!
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