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第195回:とまりぎインタビュー記事 瀧田燿平さん【「昆虫食」の基礎研究に寄与する研究者、産業化を目指す起業家を目指して】

鈴木花穂 事務局インターン大学4期

鈴木花穂 事務局インターン大学4期

2021.10.29

みなさんこんにちは!

大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!

私が独断と偏見で選んだトビタテ生にスポットライトを当てて、留学中に学んだことや、その後の活躍をご紹介していきたいと思います!

今回は、昆虫食について学びにカナダに留学した大学11期の瀧田さんにインタビューしてみました!

 

トビタテ!留学JAPANでの留学

瀧田燿平(たきたようへい)さん

大学11期 理系、複合・融合系人材コース

留学テーマ:「昆虫食」の基礎研究に寄与する研究者、産業化を目指す起業家を目指して

食べてしまいたいほど昆虫が好き!

鈴木)昆虫食に興味を持ったきっかけについて教えてください!

瀧田)私は小学生に入る前から昆虫が好きでした。父が理科の教員をしていたので、自然に対して理解があり、家族全員で虫取りをすることもよくありました。小学校1年生になると、プロ用の虫取り網を使って虫を取るようになりました。

小学校3年の時には、カンボジアで家族旅行に行き、露店でタガメ、バッタ、そして昆虫ではないですがタランチュラが売られているのを見て、虫って食べれるんだ!と思いました。

鈴木)虫を食べることに対しては抵抗はありませんでしたか?

瀧田)ありませんでしたね。もともと昆虫が大好きだったので、抵抗感は全くありませんでした。現在も、虫が好きな少年からそのまま大学生になった感じです。

高校生になると、将来は昆虫に関わることを仕事にしたいけれど、生態学の研究者になるのか、別の方向を目指すのかで迷いました。結論としては、昆虫の成分や機能を活かして人の暮らしに活かす研究者を選びました。当時、NASAが宇宙での動物タンパク源としてカイコの研究を行っていると報道されたこともあって、昆虫食を学問的に学ぶことに惹かれていきました。

鈴木)ここで昆虫食の話が再び出てくるのですね。

瀧田)しかし、国内では昆虫を豚や鶏など家畜の餌にする研究が行われている一方、昆虫食の研究を行っている大学がほとんどないことが分かりました。そこで、カイコの研究をしていれば将来的に昆虫食への道へ繋がるのではないかと思い、カイコの研究をしている、岩手大学農学部の応用昆虫学研究室で毎年カイコを飼育しながらカイコの染色体に関する研究を選択しました。大学では、昆虫食を研究できるチャンスがないかうかがっていましたが、なかなか機会は訪れませんでした。しかし、昆虫食の研究をしたいとずっと周りの人に言っていたところ、ある時「カナダに昆虫食を研究している先生がいるから紹介してあげるよ」とお世話になっている先生から声をかけてもらうことができました。

鈴木)すごい、きっと先生が瀧田さんの情熱に突き動かされたのでしょうね!

瀧田)大学3年になると、岩手大学から提携大学であるカナダのサスカチュワン大学への短期研修に参加する機会に恵まれました。その時に、紹介いただいたTanaka先生のもとで2週間のラボワークを行い、それがきっかけとなり将来的にTanaka先生のところで勉強したいと思うようになりました。トビタテを利用することで長期留学できると思って応募したところ採用されたので、昆虫食留学が決まりました。

ロックダウンにも負けずに研究

鈴木)留学内容について教えてください。

瀧田)アメリカミズアブを使った研究をしました。実は、Tanaka先生はもともと昆虫の専門家ではなく、発酵学の専門家です。アメリカミズアブは脂質が豊富で、ニワトリや養殖魚の飼料としての利用が近年注目されています。ですが、留学中はミズアブと発酵という分野を組み合わせて、農産業廃棄物を発酵させてアブに食べさせることで、アブを効率よく成長させるという実験を行いました。昆虫食を開発するためにはこうした生育や栄養価を高める技術が大事になってくるだろうと考え研究に参加しました。

鈴木)色々な分野の技術が使われているんですね!

瀧田)昆虫食に活かすには、最終的に人が食べても安全な乳酸菌のような菌を使って農産業廃棄物を高速で虫が食べやすい形に変化させることが必要です。

ところが、留学が始まって3週間ほどでロックダウンしてしまったので、その後はオンラインに移行せざるを得ませんでした。 

鈴木)ちょうど新型コロナウイルスが流行した時期でしたしね…災難でしたね。

瀧田)オンラインでは、ラボミーティングに参加しつつ過去の研究の知見をまとめたり、文献収集をしたりしました。8か月ほどの間に、世界中のアメリカミズアブの論文を200本くらい読みました。

鈴木)膨大な量ですね!

写真①留学先であるカナダのサスカチュワン州では冬の期間は非常に寒く、-30℃以上になることもしばしば。一方で快晴の日も多く、寒い中でも意外と過ごしやすく感じました。

写真はホームステイ先の庭でペットと遊んでいた際の写真

写真②留学先のサスカチュワン大学の研究棟の様子。開放感のある作りになっており、とても利用しやすく感じました。屋外は厳しい寒さの一方で内部は適温に保たれており、冬の間でも様々な植物を見ることができます。また、ほかの施設へも直通の通路が整備されており、一度建物に入れば寒さを感じる機会はほとんどありません。

サスカチュワン大学の研究棟

写真③突然のロックダウンによって美容院が閉鎖され困っていたところ、ホストファミリーに散髪をしてもらいました。初挑戦とのことでしたが、かっこよくカットしてもらいその後の隔離生活はとても快適に過ごすことができました。

ホストファミリーに散髪をしてもらっている様子

未知の世界に挑戦し続けたい

鈴木)帰国後の活動について教えてください。

瀧田)昆虫テクノロジーのスタートアップ企業にリサーチアシスタントとしてインターンをしていました。

それから、インターンのかたわら、せっかくの機会なので見識を広めようとトビタテのイベントに参加したときに、アメリカミズアブを研究していた方と運命的な出会いを果たしました。

鈴木)奇跡的ですね!そんなことがあるんですね!

瀧田)その方は高専の学生さんで、私がアメリカミズアブについておすすめの論文を教えたら、なんと後日、その方の指導教官である長岡高専の村上教授から、研究のお話を聞かせててもらえないかとお声がけ頂きました。

2時間ほど教授に情報をシェアした後に、今度は研究アドバイザーとして手伝ってくれないかとお誘いを受けて、現在ではお給料を頂きながら長岡高専の技術補佐員として研究のお手伝いをさせて頂いています。

鈴木)色々な出会いが瀧田さんの人生を変えていっていますね!

瀧田)長岡高専は、JICA や長岡産業活性化協会NAZE、長岡市などと、アクアポニックスやリバースイノベーションと呼ばれる事業に挑戦をしています。前者は、土を使わずに主に水だけで野菜を育てる水耕栽培に魚の養殖を付け加えたものです。長岡モデルでは魚や植物の循環サイクルを作り出し、それらにアメリカミズアブも魚の餌としての活用を目指す研究をしています。後者は、簡単に言うと、発展途上国への技術支援を行い、その後現地での知見を逆に日本に持ち帰るというものです。これまで、長岡高専が携わった活動では、アフリカでアメリカミズアブを大きさごとに分別するふるいのマシーンが開発されました。私は、アメリカミズアブを自宅で育てていて生育に関する知見もあったので、今回新たな事業に向けてアメリカミズアブ生育の側面から実験サポーターをしています。

鈴木)将来の夢を教えてください。

瀧田)昆虫食が普通の食の選択肢の一つとして受け入れられるような働きをして、昆虫食の分野へ貢献したいです。マグロやイクラといった食品は、マグロやイクラだから食べたいと思われる方が多いですが、昆虫となると、「栄養素が豊富だから」、「環境にいいから」「将来の動物タンパク源不足が危惧されるから」食べなくてはいけないと考えられる風潮があるように感じます。これからはそうではなく、この昆虫がおいしいから食べたい、という認識になるように貢献したいです。

鈴木)今後昆虫食が注目されるようになることで、人々の考え方も変わってくるかもしれませんね。

瀧田)最近昆虫食として話題なのは、コオロギやミールワーム、カイコなどですが、これらは既に商業的な別の用途があった昆虫であり、「この虫がおいしいから育てよう」という流れにはなっていないように私は考えています。昆虫食ブームが続けば、食卓に上がる昆虫の種類の選択肢も増えることが期待されます。

加えて、実は同じ種類の昆虫でも何を餌として与えるかによって栄養価や味が変化するという面白さがあるので、それらの知見についても今後さらに調べていきたいと思っています。

まだまだ改良の余地がありますし、未知の世界に挑戦したいです。最終的には日本に留まらず、世界中に昆虫食の面白さを広めたいです。

編集後記

お話を聞いていて、瀧田さんの昆虫に対する熱い思いが伝わってきました。日本では昔から特に田舎の方で虫を食べる習慣がありましたし、取り組み方によっては今後更に注目されるようになっていくと思います。

今後とも瀧田さんのご活躍を応援いたします! 

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