とまりぎ とまりぎ ートビタテ生の拠り所、トビタテ生の和を作るー

第199回:~社会人トビタテ生の留学する前と後特集 vol.2~「頑張るアスリートの力になりたい」小川哲生さん

青山実央【事務局インターン,大学12期】

青山実央【事務局インターン,大学12期】

2021.11.10

 学生時代にトビタテで留学した社会人を取り上げて,現在のキャリア選択のきっかけや「留学」がその後の人生にどのような影響を与えたのか紹介する「社会人トビタテ生の留学する前と後」特集。
 第2回は大学5期で韓国に留学した小川哲生さんです。アーチェリーの強豪国である韓国にスポーツ留学をした小川さん。アーチェリーと出会ったきっかけ,韓国留学の様子,そして,小川さんが選手という道ではなく,就職を選んだきっかけについてお聞きしました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】

今回のトビタテ生

名前:小川哲生
トビタテの期・コース:大学5期・多様性人材コース
留学先:韓国
留学テーマ:世界トップレベルのアーチェリーの指導や技術を学ぶ

中学生時代から独学でアーチェリーを始める。大学入学後,トビタテ留学を経験し,大学卒業後,大手総合商社に入社。社会人となった現在でも,指導者としてアーチェリーと関わっている。

世界トップレベルのアーチェリースキルを身に着けたい!

― 留学前や学生時代にはどのようなキャリアプランを考えていましたか?

 学生時代は選手として,東京オリンピックを本気で目指していました。それに,アーチェリーの指導者にもなりたいと思っていました。将来のキャリアを意識して留学という道を選択したんじゃないかなと思います。

 

― アーチェリーと出会ったきっかけは何ですか?

 自分の地元が静岡県で,サッカーが盛んだったんです。周りの友人もサッカーをしている人が多くいましたし,自分も昔はサッカーをしていました。でも,自分は腰に障がいを抱えていて,小学校6年生の頃に,サッカーができなくなってしまったんです。自分が大好きで熱中していたものがある日突然できなくなるということが,すごく苦しかったです。そんな自分でもできるスポーツがないかと探していたときに,親がアーチェリーのポスターを見つけてきて,アーチェリーと出会いました。
 始めたばかりのころは指導者も一緒に競技をしてくれる仲間もいなかったので,YouTubeや本を見ながら練習していました。

 

― 留学をしようと思ったきっかけは何ですか?

 世界トップレベルのアーチェリーの技術や指導方法を学びたかったからです。中学からアーチェリーを始めて,ずっと大好きで毎日一生懸命練習していました。でも,1人で練習しているということもあって,上達する方法が分からなかったり,効果的な練習方法が分からなかったりして,とても苦労していました。
 そういう経験から,アーチェリーの強豪国ではどんな練習をしているのか知りたいと思うようになって,留学を決意しました。

 

― 留学中はどのようなことをしていたんですか?

 世界で有名なコーチの元で,1人のアスリートとしてトレーニングをしながら,練習方法やコーチングを学んでいました。
 韓国に留学したというと,屋台でおいしいものを食べる機会があったり,観光する機会があったりということを想像すると思うんですけど,自分は田舎の練習施設でアーチェリーばかりしていました。
 留学中の練習は,試合形式のものを繰り返していました。アーチェリーの試合は1試合72射で,最高で720点取れるんです。どうやったら720点に近づけるのかということをひたすら追求していました。

― 世界トップレベルの練習と小川さんが経験されてきた練習に違いはありましたか?

 科学的な根拠に基づいた練習メニューが多かったと感じました。
 自分が留学していたときは,デンマークの代表チームが同じ施設で練習していました。デンマークの選手たちは,練習前に心拍数や血中酸素濃度を測って,疲労度などに基づいて練習メニューを決めていました。まだ,日本には,練習すればするほどうまくなるという根性論のようなものが存在していますが,向こうでの練習では,「もうやるな」「今日はやっても意味ない」など無駄な練習をさせませんでした。
 留学前は,トップレベルの選手は練習量が多いと思っていたんです。でも,実際は科学的根拠に基づいて,効率よく練習していました。

より深くアーチェリーに興味を持ってもらうために

― 留学前は,選手やコーチを目指していらっしゃったのに,就職を選ばれた理由は何ですか?

 ビジネスの世界からスポーツに携わっていけないかという可能性を考えるようになったからです。
 留学後に,ケガをしてしまって,思っていた成績は出なかったんです。プロの選手として競技を続けていくという選択肢もありましたし,自分自身もそうしたいと思っていました。
 でも,次第に,アーチェリーを知ってくれる人増やしたり,競技自体を盛り上げたりしたいという気持ちが強くなっていたんです。

 

― 選手としてではなく,スポーツビジネスの観点からアーチェリーを盛り上げようと思ったきっかけは何ですか?

 優秀な選手がより適切な環境で長い期間プレーできるようにしたり,アーチェリーをやってみたいと思う子どもたちが増えたりするような仕組みを作っていきたいと思ったことがきっかけです。
 選手として,オリンピックで金メダルを取ることを目標にしてずっとアーチェリーをしてきました。でも,心の中では選手としてアーチェリー界を盛り上げるだけでは足りないのではないかとも思っていました。
 例えば,今年の東京オリンピックでアーチェリー団体で初めて銅メダルを獲得したんです。オリンピックでメダルを獲得したことでアーチェリーにも注目が集まったと思います。でも,メダルを獲得したアーチェリー選手の名前が分かるかと聞かれると答えられない方が多いと思います。
 せっかく注目してもらえたなら,長期的にアーチェリーに興味を持ってもらえる仕組みを作っていきたいと思って,ビジネスの観点から盛り上げようと思いました。

― 総合商社に入社を決められた理由は何ですか?

 日本の中で大きくて,影響力のある会社がどのような仕組みで,どんな人が働いているのかということにすごく興味を持ち,ビジネスを学べる環境だと感じたからです。
 今の会社には学生時代にインターンに行ったんです。その時は,アーチェリーで成績が残せていなかった時期で,学生の時にしかできないことをやってみたいと思っていました。それで,選んだのがインターンへの参加です。面接の練習にもなるし,落ちてもいいから挑戦してみようという気持ちで応募してみたら,合格したんです。そこで出会った会社の方がとても魅力的だったことが印象的でした。
 でも,今の自分のキャリアはゴールではないと考えています。将来は,ここで学んだことを活かしてスポーツビジネスをできたらいいなと思っています。

留学当時の気持ちを思い出す環境

― 現在はどんな仕事をされているんですか?

 食品の原材料輸入の取引を担当しています。海外から小麦や大麦などの原料を輸入して,農林水産省に売っています。そこから,日本の製粉メーカーに売られて,カップラーメンやパンに加工されて,みなさんに販売されています。

 

― その仕事を選んだ理由は何ですか?

 インターンの時にお世話になった部署だったので,食料関係の部署を選びました。
 そこに所属している方はとても優秀で,毎日勉強になることがたくさんあります。自分の至らない点ばかりが見えてきてしまいます。
 でも,そういう環境に身を置くことはすごく大事なんじゃないかなと思います。留学の時も世界チャンピオンと一緒に練習していましたが,自分との実力差を見せつかられているようで悔しい思いをずっとしていました。自分との差を知れること,そして,そこに悔しいという感情が生まれることは成長への第1歩を踏み出している証拠だと思っています。
 留学を通して,その重要性に気づけましたし,留学当時と同じ気持ちになれる環境は自分にとってはすごくいいと思っています。

 

― 実際に働いてみて,学生時代のイメージと違うなと思うことはありますか?

 インターンでは,新規事業の開発をイメージした業務を体験できるんですけど,それを実現するためには,もっと泥臭い努力や勉強が必要なんだということを実際に働いて感じました。イメージと違うというよりも,学生時代の自分は何も分かっていなかったんだなと思いました。
 理想を描きながら,実現するために楽しく頑張ることも大事です。一方で,地に足をつけて,目の前のタスクを確実にこなしたり,自分の能力を向上させたりすることも同じくらい大事なんだと思いました。

 

― 社会人になってから,留学経験が活きているなと感じたことはありますか?

 海外の人とやり取りするときに,活かされていると感じます。
 仕事でも,海外の人とのやり取りが半分を占めているんです。日本人と同じ感覚でコミュニケーションを取ろうとしてうまくいかない時もあります。でも,留学していたので,「なんで返信してくれないんだ」「なんで伝わらないんだ」ってネガティブに捉えるだけではなく,「人種が違うから考え方も違うよね」「それが彼らの魅力だ」とポジティブに捉えることができています。
 それは,留学を通して,海外の人と関わってきて,違う文化を知ったり,その違いを乗り越えて,コミュニケーションが取れた時の喜びを感じたりしたからこそ,ポジティブに捉えられているのかなと思っています。違う文化,違う前提があるということを理解するのは大切だと思います。

 

― 留学経験以外で,学生時代に経験しておいてよかったことはありますか?

 トビタテ生の同窓会組織「とまりぎ」での活動経験はすごく活かされています。
 組織運営の仕方やイベント企画,広報などをチームで行うという経験を学生の頃にできたのはすごくよかったです。それに,そのときの仲間と今でも一緒に活動しています。
 そんな社会人になってからも刺激になる人と出会えたということも「とまりぎ」に関わっていてよかったなと思う点ですね。

 

― それでは,反対に,学生時代に経験したかったことはありますか?

  起業とか経験してみたかったなと思っています。今の自分はそういうものに興味があるので,失敗してもいいから,学生のうちに団体作ってみたり,会社作ってみたりしておけばよかったと思いました。

 

― 社会人になってからも,アーチェリーの大会に出場されているんですか?

 あまり出場できていません。でも,指導者としてアーチェリーに関わり続けています。静岡県のアーチェリー協会に所属して選手の指導をしたり,東京大学のアーチェリー部の指導もしたりして,アーチェリーに関わる生活を送っています。

 

― 今後,実現したいことを教えてください。

 ビジネスの分野からスポーツ界を盛り上げていきたいです。特に,周りの環境によって,結果が出ないアスリート,頑張りたくても頑張れないアスリートの助けになりたいと思っています。
 そういう思いがあるのは,自分自身がアーチェリーの選手としても苦労してきたからだと思います。それに,そんな思いを持っている人はスポーツ界だけじゃなくて,芸術界とか様々な分野でいるんじゃないかと考えています。教えてもらえる環境が周りにはない,とか,「頑張っているね」っていう一言で片づけられちゃうような環境ってもったいないなと思っています。
 そういうアスリートたちをビジネス面から助けられれば,もっと優秀な人たちがスポーツを続けることができるようになって,そんな人たちが自らスポーツ界を盛り上げていってくれるんじゃないかなと思っています。

 

― 最後に,学生のトビタテ生にメッセージをお願いします。

 世界はみんなが想像しているよりも広いです。すごい人や面白い人,自分が知らなかった価値観を持った人がいっぱいいます。それでも,みんなが思っているほど人間って差はありません。才能があるかどうかということを考えて,何かを諦めてしまう人っていると思います。でも,活躍している人を見ていると,努力しているし,そのための時間も惜しんでいません。
 逆に言えば,その努力さえできれば,目標を達成できると思います。自分のやるべきことを確実にやっていけば,どんな目標を持っている人でも,なりたい自分になれると思います。「分からない!」って諦めるんじゃなくて,できてそうな人に話を聞いてみるとか,調べてみるとか自分から行動し続けていってほしいです。

 

編集後記 ー 頑張れるものは大好きなもの ー
 「スポーツをやってる人って根性あるな」とインタビューする前から思っていました。
でも,小川さんの話を聞いていると「好きなことを全力で努力し続けている」そして,それが「根性」という表現になっているんだと考えるようになりました。なんか「努力」って言葉も根性に近い気がしますが,それが1番しっくりきます。
「アーチェリーがずっと大好きで……」
初対面の私にもそんな風にアーチェリーが大好きだとはっきりおっしゃっていました。
私にも,そんな全力で努力し続けたいと思えるくらい大好きなものがあったらいいなと思ったのと同時に,いまからそんな気持ちにさせてくれるものに出会えるかもとワクワクした気持ちになりました。
次回は,教育留学をしたトビタテ生のキャリアを紹介します。

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