第202回:理系のトビタテ生特集 第14弾安家叶子さん【リカオンの研究】
2021.12.03
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!
「理系のトビタテ生特集」という特集で、
理系分野を専門に学びに行っていたトビタテ生にスポットライトを当てて、留学中に学んだことや、その後の活躍をご紹介しております!
そんな特集の第14弾!今回の専門分野は。。。。。
「野生動物 」です!!
今回は、 野生動物について学びにジンバブエへ留学した、大学10期の安家(あけ)さんにインタビューしてみました!
目次
トビタテ!留学JAPANでの留学
安家叶子(あけかなこ)さん
10期 理系・複合、融合系人材コース
留学テーマ:リカオンの研究
リカオンとは?…イヌ科の動物で、絶滅危惧種に指定されている動物(安家さん談)
幼稚園の頃からのサバンナ愛に突き動かされて
鈴木)リカオンに興味を持ったきっかけについて教えてください。
安家)私は元々、幼稚園の頃から動物番組やドキュメンタリーを見る機会がよくあって、アフリカのサバンナに興味がありました。「将来の夢」について書くときに、「サバンナ」の名前を上げるくらいでした。
鈴木)そんなに幼い頃から興味があったのですね!
安家)サバンナの映像は、非常に衝撃的な視覚的刺激でした。動物研究者のドキュメンタリー番組で、研究者が大きい車に乗って汗を滴らしながら双眼鏡でサバンナの動物を覗いている様子が今でも忘れられないです。
鈴木)今でも覚えているのはすごいですね。
安家)中学校の時には、犬を飼い始めました。それ以来、サバンナとイヌに対する知的好奇心がずっとありました。
学部生の時には、農学系の学部に所属していました。3年生の時に入った研究室では、動物行動学を専門に研究していました。
学部の卒業研究では、サバンナとイヌについて調べることにしました。他の個体と交流を持とうとする、イヌの社会性が好きだと思ったからです。イヌ科の中でも、リカオンは社会性が特に高く、驚くような外見だったので、研究テーマにしました。
鈴木)それでリカオンに会いたいと思ってアフリカに行かれたのですね。
安家)そうですね。日本の動物園でもリカオンを見たことがありましたが、やはり野生のリカオンを見たいと思っていました。そのため、アフリカに行くことを許してくれそうな大学院を探しました。
研究以外にも、自然と関わる
鈴木)現地での活動を教えてください。
安家)メインの活動として、リカオンの写真を使った研究を行いました。
リカオンの生態研究の第一人者が設立者のNGOに所属して、車に乗ってリカオンを追いかけました。
私は、修士論文の研究として、Face IDのようにリカオンの体表模様(毛の模様)を個体識別に使い、それを活かして生態研究がスムーズにならないかと考えて、リカオンの写真を取るという修士研究をしていました。ジンバブエでは、リカオンの生態状況や、リカオンがどこにどの時間帯にいるか、子供がいるかどうか、いれば子どもが成長しているかどうかということを調査しました。具体的には、動物が来たら自動で撮影してくれる自動撮影カメラを自然公園のいたるところに一定期間設置して、カメラを回収し、データをチェックするということを行いました。
写真①この車で自然公園内を走ります。整備されていない道路ばかりなので、留学期間中にお肉が食べれた回数よりもタイヤのパンクを直した回数の方が多いです。泊まり調査の時は、ライオンやゾウの吠える声を聞きながら青空の下眠りにつきます。1週間もすれば爆睡できるようになったので、人間の環境適応力には感心しました。
自然公園内を走った車(安家さん:左)
修士の研究以外にも、地域の方へ環境教育を行ったり、コミュニティ内で種の保全活動を行いました。
鈴木)環境教育や種の保全活動ではどのようなことを行いましたか?
安家)環境教育では、学校に行けなかったり、行けても十分な教育を受けられていなかったりする子ども達のために、週に一回、土日のどちらかに、理科をメインに授業を行いました。例えば、敷地内の針がある木とそうでない木を見ながら、針の機能について生物の進化について説明しました。
コミュニティ内で種の保全活動では、自動車と衝突して命を落とす動物を減らす活動をしました。現地では、リカオンを含めて毎日のように動物が道路に横たわっている光景を見ました。
写真②自然公園で野生動物調査中に、ロードキル(自動車と野生動物の衝突で動物が死ぬこと)にあったブチハイエナを発見。前日に巣穴から頭を出して挨拶をしてくれたハイエナだったこともあり、とても悲しかったです。多くの野生動物が住んでいる自然公園内でもロードキルが多く起こっており、世界中で大きな問題となっています。
自然公園でロードキルにあったブチハイエナ(写真:真ん中より少し右)を発見(安家さんは、一番右)
なぜ動物がひかれてしまうのか、どう改善するべきかということを考えていたところ、上の写真の道路は全部で80キロの長さなのですが、道路標識が3つしかないことが分かりました。
鈴木)そんなに少なかったのですね…
安家)そこで、道路標識を立てることを目標にしました。
政府に単にお願いするだけでは協力してくれないので、車のスピードのデータなどの客観的なデータを集めました。すると、夜、街灯がついていない中、160キロも飛ばす人もいることが分かりました。政府関係者や警察にプレゼンをしに行った結果、制限速度を書いた標識だけでなく、急カーブを示したり、アニマルクロッシング(動物通行注意)の標識を42個も立てることができました。
鈴木)すごい、政府に直接お願いして、要求を聞き入れてもらったのですね!
写真③結婚式に参列。新郎新婦のことは全く知らなかったですが、祝儀の必要もない上に美味しいご飯が食べれるらしいので行ってみました。みんなの前で下手なダンスを披露したら捌きたての牛肉(現地では高級料理)をたらふく食べれました。多くの村人ともコミュニケーションがとれ、研究の疲れが吹っ飛ぶ大満足な1日でした。
結婚式の様子
あらゆる種の保全に関われるような人材になりたい
鈴木)帰国後の活動を教えてください。
安家)持ち帰ったデータで修士論文を書き、修士号を取得しました。
そのあとも、研究って面白いな、と思ったので、博士課程に進み、リカオンの研究を今も続けています。
留学に行く前は、将来の進路としてアカデミックな方面だけを考えていましたが、留学先がNGOだったこともあって、種を保全するためには研究以外にも様々なアプローチがあることを学びました。現在も、研究以外に、動物や自然科学と社会をつなぐ何かをできないかと、環境保全系の活動をしているNGOで働いています。
鈴木)NGOではどのようなことをされていますか?
安家)科学的な根拠を元に理論を構築して、政策提言をしています。そのために調査をして、結果を解析することもあります。他にも、環境教育や普及啓発をするための勉強会やセミナーで話者を務めたり、ファシリテータをしたこともあります。ホームページの作成もしています。
鈴木)色々な形でNGOに関わっていらっしゃるんですね。
安家)留学の影響が大きいと思います。
将来は、アカデミックな道に進むか進まないかで悩んではいますが、間接的にでも、種の保全には関わりたいです。最終的には、リカオンだけでなく、哺乳類、動物、生物など、あらゆる種の保全に関われるような人材になりたいです。
編集後記
安家さんからは、幼稚園の頃からサバンナへの情熱に溢れていたことが伝わってきました。外国に行って、現地政府と交渉して要求を聞き入れてもらうというお話からは、行動力を感じました
今後も安家さんのご活躍を応援いたします!
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