第204回:理系のトビタテ生特集 第15弾後藤正太郎さん【水と衛生 ~清潔な水へのアクセス~】
2021.12.06
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!
「理系のトビタテ生特集」という特集で、
理系分野を専門に学びに行っていたトビタテ生にスポットライトを当てて、留学中に学んだことや、その後の活躍をご紹介しております!
そんな特集の第15弾!今回の専門分野は。。。。。
「水と衛生 ~清潔な水へのアクセス~」です!!
今回は、 水と衛生について学びにバングラディシュへ留学した、大学3期の後藤さんにインタビューしてみました!
目次
トビタテ!留学JAPANでの留学
後藤正太郎(ごとうしょうたろう)さん
大学3期 自然科学系、複合・融合系人材コース
(※4期以降は理系・複合、融合系人材コースに変更)
留学テーマ:発展途上国の水と衛生
水が原因で幼い命が失われていくのを知って
鈴木)後藤さんは、元々水と衛生を専門に勉強されていたのですか?
後藤)実は、元々化学工学を専攻していました。
鈴木)路線変更されたのですね!
水と衛生について勉強しようと思ったきっかけを教えてください。
後藤)私は大学3年生の時に発展途上国を訪問したのですが、その時にお腹を壊してしまいました。他の人と一緒に行ったこともあり、恥ずかしい思いもしました。
帰国後に「途上国 下痢」で調べてみたところ、発展途上国では多くの子どもが亡くなっていて、水が主要な原因であることが分かりました。そこで水に興味を持ち、学部4年生の研究室配属で水が専門の研究室を希望し、大学院では途上国の水と衛生が専門の研究室に進学しました。当時、将来は学校の先生になって、子どもの成長を見ていきたいと思っていた自分にとっては水が子供の命を奪うことが衝撃でした。
鈴木)幼い命が失われるのは胸が痛みますよね…
後藤)そのあと、トビタテを利用して留学に行く前に、修士1年生の時に一度適切な衛生や水へのアクセスについて学ぶために留学をしました。しかし、その後も水と衛生についての論文を書きたかったので、現場で調査をしたいと思うようになりました。また、修士1年生の時の調査結果を現地NGOと協力して住民に還元したいと考え、修士2年生の時にも渡航を決意しました。
修士1年時の研究と繋げて
鈴木)留学内容を教えてください。
後藤)私の活動の受け入れ先は、水と衛生の問題に取り組んでいる現地NGOでした。
そのNGOでは、ワークショップを行いました。具体的には、修士1年生の時に調査した結果を住民に対して還元しました。しかし、調査結果を伝えるにあたり、難しいデータを並べても住民が分からないので、簡単な表現を使い、また住民の人も積極的に参加できるような形式で実施しました。
鈴木)どのようなことを行いましたか?
後藤)住民の方と水系感染症の原因になりそうな経路を確認しました。例えば、飲み水由来の曝露量(ばくろりょう、ここでは体内に取り込む病原菌の量のこと)が多いのか、池での水浴び時の誤飲に起因する曝露量が多いのかなど、どのような行動を通して水系感染症になる可能性が高いのかについて確認しました。
また、現地の大学にも通い、修士論文を書くためのデータの収集を実施しました。
1年目の研究で十分な結果を得ることができなかった、水質のデータや、住民の行動に関するデータを収集しました。例えば、水浴びの頻度については、住民に対してヒアリング調査を実施しました。
写真①現地のスラムでの調査中、スラムの子どもたちが調査に興味を持ってくれました。写真は、そのような子どもたちと調査後にスラムの前で撮影したものです。
スラムの子どもたちと(後藤さんは、写真真ん中)
写真②調査対象としていた井戸で、子どもが水汲みしている時の写真です。昼間の井戸にはいつも人が並んでおり、また周囲には水汲み用のバケツが置いてありました。
井戸で水を汲む子ども
写真③調査対象としていた池の写真です。昼間は多くのスラム住民が池で水浴びしており、写真撮影時は男性や少年が水浴びをしていました。
調査対象の池
「水と衛生の研究が本当にやりたいんだ」と確信して
後藤)しかし、そのあとバングラディシュでテロが起きたことにより、帰国せざるを得ませんでした。予定していた留学内容を全て実施することができず悔しかったですが、一方で、帰国後も留学先で行うことになっていた研究についてずっと気になっていたので、水と衛生の研究をもっとしたい、自分が学部3年生の時に経験した出来事や調べて知った、水が人の命を奪っていることをなんとか解決したいという思いがあるんだと確信しました。
鈴木)それは災難でしたね…帰国後も水と衛生について研究を続けましたか?
後藤)そうですね。留学後は、何とか修士論文をまとめました。
その後、社会人として水に関わる仕事に携わり6年目です。仕事以外にも、学会で発表したり、国際会議で若手を代表して登壇したり、国内の若手の水分野の集まりの運営委員をしたりしました。他にも、水に関するボランティア活動にも取組みました。
鈴木)本当に様々な形で水と衛生の分野に関わり続けているのですね!
後藤)今はロンドンの大学院で研究しながら、フリーランスとして水衛生の案件にも関わっています。
鈴木)それは素晴らしいですね!どのようなお仕事をされているのですか?
後藤)ある発展途上国の都市を対象とした、衛生改善に関する仕事をしています。例えば、日本の都市のように人口が密集している場所であれば大きい下水道を作った方が良いですが、発展途上国では下水道を作るのが正解とは限りません。現在は、現地でどのように汚水を処理するのが良いか、検討中です。
学生時代から卒業後にかけてずっと、留学中に学んだことを活かせています。
鈴木)将来は水と衛生について、どのようなことがしたいですか?
後藤)水と衛生の問題はSDGsの課題の一つとされていますが、従来の方法を続けていても、多くの人がきれいな水を手に入れるという目標は達成できないと言われています。例えば、世界の人口の全員が適切な衛生設備を使えるようになるまでは、100年、200年が必要という報告もあります。
従来の方法を続けるだけではなく、もっと効果的な方法が他にもあると思うので、それを見つけていきたいです。
編集後記
きれいな水がいつでも手に入ることは、とても幸せなことだと改めて思いました。仕事以外でも、これまでに自分が学んだことについて、様々な形で携わり続けることができるのは素敵だと思いました。
今後も後藤さんのご活躍を応援いたします!
*訂正 2021年12月08日
当初、題名の留学テーマを【最先端金属加工を学ぶ】と表示しておりましたが、正しくは、【水と衛生 ~清潔な水へのアクセス~】でした。お詫びして訂正いたします。
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