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第211回:理系のトビタテ生特集 第17弾吉田祐一さん【ヨーロッパにおける液体貯蔵タンクの耐震基準を学ぶ】

鈴木花穂 事務局インターン大学4期

鈴木花穂 事務局インターン大学4期

2022.01.20

みなさんこんにちは!

大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!

「理系のトビタテ生特集」という特集で、

理系分野を専門に学びに行っていたトビタテ生にスポットライトを当てて、留学中に学んだことや、その後の活躍をご紹介しております!

そんな特集の第17弾!今回の専門分野は。。。。。

タンクの耐震 」です!!

今回は、タンクの耐震について学びにイタリアへ留学した、大学2期の吉田さんにインタビューしてみました!

トビタテ!留学JAPANでの留学

吉田祐一(よしだゆういち)さん

大学2期 自然科学系、複合・融合系人材コース
 (※4期以降は理系・複合、融合系人材コースに変更

留学テーマ:ヨーロッパにおける液体貯蔵タンクの耐震基準を学ぶ

耐震の分野に魅了されて

鈴木)吉田さんは、元々タンクの耐震に関わる研究をされていたのですか?

吉田)実は、留学へ行くまで勉強したことがありませんでした。

私は大学で土木工学を専門に勉強していました。学部3年生の時に受講した橋梁設計の授業がとても面白く、教科書を枕元に置いて寝るくらい、橋梁に関する勉強にハマっていました。耐震について学ぶことも好きでした。

鈴木)非常に熱中していたのですね!

吉田)橋も地震も身近に感じられたことが大きいと思います。橋はどこにでもあるので、いつでも、構造や技術者の工夫を直接目で見て学ぶことができますし、地震は幼い頃から怖かったので。

その後、橋の設計コンペに参加したり、橋梁(きょうりょう)の耐震や腐食について研究したりしました。気が付くと、将来の夢が橋梁技術者になっていました。

しかし、ある時、ヨーロッパの液体貯蔵タンクの耐震基準(Eurocode8)を見直すプロジェクトが実施されていること、イタリアの大学の先生がこれに参画していることを知りました。私はずっと橋の勉強をしていたので、本当は橋に関わることを学びたいと思っていたのですが、耐震基準の分野にも興味がありました。それに、自分があまり知らない分野である液体貯蔵タンクの研究をしながらEurocode8の見直しに少しでも貢献できれば嬉しいと思い、参加することを決意しました。

プロジェクトに関わっている現地の先生から快諾して頂いた上に、トビタテから奨学金をいただくことができたので、留学するに至りました。

基礎から応用まで

吉田)留学先で、初めてタンクの耐震関連の研究テーマに触れたので、最初は基礎的な知識を身に着けるために長い時間がかかりました。

留学の始めの頃に、留学先の指導教員であるPaolacci先生から「あなたは谷口先生(日本の大学の指導教員)の教え子だから、タンクの耐震についてはプロ並みに詳しいはずですよね」と言われました。

鈴木)先生が吉田さんを期待していた様子がうかがえます。

吉田)しかし、実際にはタンクの耐震に関する研究をしたことがなかったので、「いいえ」と答えたところ、Paolacci先生は少し残念そうな顔をして、それから大量の資料を下さいました。それは、私の留学前に行われたタンクの耐震に関する研究の資料で、ヨーロッパのタンクの耐震基準やその背景にある数理的な理論などがまとめられていました。最初の頃は、そこまで得意ではなかった英語で書かれたこの資料を読み込んで、ゼロからEurocode8の基礎的な知識を習得しました。その努力の甲斐あって、最終的に耐震基準に関わる計算式を使ってタンクの地震応答を計算できるようになりました。

鈴木)留学先で、ある分野について一から専門的に学ぶことは、すごいと思います。

吉田)基礎知識を習得した後は、実際にEurocode8の見直しのために予定されていた模型振動実験の準備に取り掛かりました。具体的には、Broad Tank(背の低い幅広な円筒タンク)とSlender Tank(背の高い細長の円筒タンク)の2ケースについて、Eurocode8の基準式を使って地震応答解析を実施しました。実験は振動台の上に載せた模型タンクをほぼ満水状態にしてから、模擬地震波を入力し、模型タンクの応答値を計測するといったものです。実験模型の製作が遅れていたこともあり、残念ながら模型実験は私の帰国後になってしまいましたが、うまくいったようなので安心しました。

地震応答とは?…地震発生時の対象物の振動(変位や速度、加速度など)、簡単に言うと、地震によって対象物がどの程度でどう揺れるかということ。(吉田さん談)

模型タンクの地震応答の計算をした後は、その結果を報告書にまとめてプロジェクトに提出しました。

写真①留学時代の友人。一番左のNamさん(当時、ベトナムから博士号取得のため留学されていた)と中央のAnnaさん(当時、ロシアから博士号取得のため留学されていた)とは、留学してから帰国するまでずっと一緒に過ごした仲間で、今でも交流がある。特にNamさんとは研究分野が共通しており、今でも良きライバル関係にある。

Namさん(左)、Annaさん(中央)など友人たちと。吉田さんは右

写真②よく利用した講義室で撮影した、研究室の博士課程の学生方との集合写真。中央の眼鏡をかけた男性(Paolacci先生)が留学時代の指導教員であり、彼が私に初めてタンクの耐震研究について指導してくださった。今でも毎年、国際学会で顔を合わせている。

研究室の博士課程の学生方と(吉田さん 左から2番目)

写真③タンクの耐震研究は主に紙と鉛筆を用いて解析理論の理解を中心に進めた。最近の研究者は実験やFEM動解析のようなシミュレーション研究ばかりが目立ち、新しい理論を生み出す努力が欠けているように思える。私の研究スタイルは今も変わらず、新しい理論を展開するために、主に紙と鉛筆で勝負している。

吉田さんの作業スペース

日本を代表する研究者になって、世界から認められるようになりたい

鈴木)帰国後の活動について教えてください!

吉田)帰国後は修士課程を1年間延長して、この留学で学んだことを踏まえて、タンクの耐震のテーマで研究して修士論文にまとめました。卒業後は大手企業に就職し、2年半液化水素やLNGを貯蔵するタンクの設計を中心に仕事をしていました。

その後転職し、現在では研究者として働いています。また、大学の博士課程にも在籍しています。俗にいう社会人ドクターです。職場でも同様の研究をしていますが、休日や終業後でも自宅で研究を進め、論文を書いてまとめています。

地震時にタンクの底板が浮き上がることがあります。ですが、その場合の地震応答については完全には解明されていません。そのため、現行の耐震設計手法等に改善の余地が残されています。私はこの問題を解決するために、タンクの地震応答について根底から見直し、より合理的な耐震設計手法を構築することを目的として研究活動に励んでいます。

最初は橋梁技術者になるつもりで学生生活を送っていたのに、留学先で完全にタンクに関心が移ってしまいました。そういった良い意味で、私の人生を狂わせた留学でした。今は研究者として楽しく、時々苦しく過ごしています。

鈴木)おっしゃる通り、当初の目標から大きく路線変更しましたよね。

将来の夢を教えてください。

吉田)タンクの耐震の研究で、日本を代表する研究者になって、世界から認められるようになりたいです。

編集後記

吉田さんのお話しからは、耐震の分野に対する熱意を感じました。留学がきっかけとなって、将来の夢や目標の方向性が変わることもありますよね。

今後も吉田さんのご活躍を応援いたします!

今後のイベント future event

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