第215回:理系のトビタテ生特集 第19弾 黒畑寿来さん【フランスで欧州の交通・土木について学ぶ】
2022.02.03
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!
「理系のトビタテ生特集」という特集で、
理系分野を専門に学びに行っていたトビタテ生にスポットライトを当てて、留学中に学んだことや、その後の活躍をご紹介しております!
そんな特集の第19弾!今回の専門分野は。。。。。
「交通工学」です!!
今回は、交通工学について学びにフランスへ留学した、大学8期の黒畑さんにインタビューしてみました!
目次
トビタテ!留学JAPANでの留学
黒畑寿来(くろはたとしき)さん
8期 理系、複合・融合系人材コース
留学テーマ:フランスで欧州の交通・土木について学ぶ
防災教育が盛んな地域で育って
鈴木)黒畑さんは、元々交通工学について専門に勉強されていたのですか?
黒畑)私は元々、大学の学部生のころから土木工学について学んでいました。
私の生まれは東京ですが、生まれた年が阪神淡路大震災が起きた1995年でした。1才くらいの頃に震災があった西宮や芦屋といったエリアに引っ越し、物心ついたころから、その復興を肌で感じてきました。それに、神戸やその周りでは、小学校でも防災教育に力が入っていました。土木や街づくりに興味を持ったきっかけには、そのような背景があります。
その後、土木について勉強していた延長線上で、交通工学に出会いました。
鈴木)黒畑さんが土木や交通関係のことに興味を持ったのは、育った地域の環境が大きいのですね。
留学に行こうと思ったきっかけを教えてください。
黒畑)私は、大学の学部で4年間勉強した後に大学院へ進学することを考えていたのですが、学部生の3年生の終わりか4年の始め頃に、大学院に入った後も日本の大学の同じ所で勉強し続けるのるのはもったいない、新しい環境に飛び込まずに学生生活を終わらせるのはどうなのだろう、と思うようになりました。
学部2年生の真ん中当たりにはすでに、フランス現地の国立の土木系の大学校が東京大学とプログラムを提供していて、土木についてフランス語で学ぶことができると知っていました。大学1年生時に「国際語だから」とフランス語を第二言語で勉強していた縁もあり、自分が学んだフランス語を使って専門分野である土木について学ぶことができるともいうことも後押しし、留学を決意しました。
積極的に自分の意見を言わなくてはダメだ!
鈴木)留学内容を教えてください。
黒畑)最初の半年は、フランス語をマスターするための語学研修に臨みました。まずは言葉、そして、フランスの文化・フランスにやってくる人々の文化を学びました。その中で、フランス語を学ぶところから使うという事にかけても少しずつ自信をつけて語学研修を終え、1番の目的であるフランス国立土木学校(ENPC)に入学しました。
日本では座学中心が多くて、ペーパーテストで評価される場面が多いのかな、とも思いますが、現地では意見を心に蓄えておくだけではなくて、はっきりと言わないと、いくらいい意見を持っていても無駄になってしまうと実感する場面が多かったです。
ENPCに入学したての頃、「入学研修旅行」でギリシャに行き、そこで、いわゆる「留学の洗礼」のようなものを受けました。現地では、2004年のアテネオリンピック後に、オリンピックのための街づくりを今後どう活かすのか、金融危機などをどうやって乗り越えるべきかというディスカッションを行ったのですが、なかなか意見をすることが出来ませんでした。積極的に話している学生の姿勢から、心の中で思っているだけではいけなくて、考えたことは全て口に出すことが大切であることを感じました。半年間の語学研修を活かすことができなかったことにへこんでしまいましたが、同じようにフランス語が苦手な学生と「このままではいけない」と話し合っていました。
鈴木)わたしも留学中に同じような体験をしたことがあります。
黒畑)でも、その苦い経験おかげで、パリに戻った後は、試行錯誤を重ねながら少しずつ自分の考えを積極的に伝えられるようになりました。気持ちや意見を上手く伝えられないと思った時は、語学に立ち返ったり、あるいは相手に自分の意見を聞いてもらうには、自分も相手の話を聞くことが大切であるなど、コミュニケーションの仕方を工夫したりしました。
そこからのENPCでの1年半は、ここまでで言ったようなコミュニケーションのスキルを磨きつつ、実習やグループワークを中心に据えて交通工学や都市工学を学んだりインターンをしたりしました。
ENPCでは、一つの町を想定して、人が集まっている地域とそうでない地域によって、その人たちがどのように交通機関を選択しているのか推測して、新しく交通網の路線を引くときにどうすればよいか、今ある路線を使ってもらうにはどうしたらよいかと考えました。
鈴木)ほんとうに考えたり議論したりする授業が多いですね。
黒畑)そうですね。学校全体の意識として「持続可能性」が大切にされていて、経済や暮らしの向上と地球環境の維持・改善の両立を意識するうえでSDGsが強調されていると感じました。
自分も交通に絡めて環境問題にも取り組みたいと感じ、現地の大気汚染を専門とする環境系の研究機関でインターンをしていました。自動車から排出される物質がどのように周囲の物質と反応しながら町中へと広がるか、或いは集まってくるかということを明らかにするシュミレーションをしました。
写真①初めての長期滞在の最初の半年間、専門の学習や研究活動に必要な語学習得がなかなか進まず不安な中、支えてくれたのはホームステイ先のお父さん(真ん中)でした。
語学研修を終え、無事にパリの土木学校での生活を送っている中でお礼に伺ったときです。この時、母(右)もフランスを訪れており、共に写真をパシャリ。(黒畑さん:左)
写真②ストラスブールの国際宇宙大学でプログラムアシスタントとして活動していたトビタテ同期の小仲美奈さん(写真:右)を訪問した時のこと。この裏では実は国鉄がストライキの真っ只中で列車はほぼ運休。どうにか乗れたバスで訪れた旅でした。トビタテの繋がりを感じたとともに、権利のための権利行使をはっきり行うというフランス文化を感じたひと時でした。
ストラスブールの国際宇宙大学で
写真③留学開始直後に知り合った香港出身の友人との一枚。ただ、この写真は留学開始から2年経った帰国の日の空港です。海外の、生活、文化、言葉が異なる中でも、このようなアツく深い親友に恵まれた事が、時たま訪れる辛い時期を乗り切るエネルギーになったと思います。
香港出身の友人(右)と
町を『持続的に』強くしたい
鈴木)帰国後の活動について教えてください。
黒畑)帰国後1年間は、東京大学の大学院の修士課程に戻り、研究に没頭しました。防災を扱う研究室に所属し、豪雨や地震災害が起きたときに廃棄物の処理をどうすればより早く行うことができるかシミュレーションを行いました。
今年度からは、鉄道会社で土木・建設に関わる仕事をしています。
将来的には、新しい路線を「作り」、街づくりに携わることで、経済的・防災的・環境的にも町を持続的に強くすることができるような仕事したいです。
1年目の現在は、線路など、既にある設備を維持管理する仕事をしていて、様々な事を学びながら、将来やりたい仕事をするための充電期間になっています。「作る」という営みは、最終的には、設備を維持管理している仲間や利用される乗客の方などの設備を「使う」人にあけわたすという段階が待っています。その設備を「使う」人々の気持ちに立つことが大切だと肌で感じながら1年目を過ごしているような感じです。また、留学経験を活かしながら、海外の技術を取り込んだり、日本の技術を発信したりすることにも時間をかけて取り組んでみたいなと模索しているところです。
編集後記
幼いころからの教育が、将来の仕事に繋がることもありますよね。
第二言語を活かして専門分野について研究できることは素敵だと思います。
今後も黒畑さんのご活躍を応援いたします!
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