第220回:理系のトビタテ生特集 第21弾 嶋岡千紘さん【サステナビリティな建築のあり方を探す】
2022.02.24
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!
「理系のトビタテ生特集」という特集で、
理系分野を専門に学びに行っていたトビタテ生にスポットライトを当てて、留学中に学んだことや、その後の活躍をご紹介しております!
そんな特集の第22弾!今回の専門分野は。。。。。
「建築×持続可能性の追求」です!!
今回は、サステナビリティと建築について学びにドイツへ留学した大学8期の嶋岡さんにインタビューしてみました!
目次
トビタテ!留学JAPANでの留学
嶋岡千紘(しまおかちひろ)さん
大学8期 理系、複合・融合系人材コース
留学テーマ:サステナビリティと建築のあり方を探す
古い建物が使い続けられる様子を見てみたい
鈴木)嶋岡さんは、元々建築を専門に勉強されていたのですか?
嶋岡)そうですね、学部生時代には、生活科学部の人間環境科学科という工学系の専攻で建築を勉強していました。大学院の時には、生活工学共同専攻というところで、建築史を専攻していました。
鈴木)建築に興味を持ったきっかけを教えてください。
嶋岡)中高生のころから、なんとなく建築を学びたいと思っていました。私は、元々美術や芸術に興味がありましたが、美術や芸術を職業に繋げることは難しいと思っていました。しかし、建築を通して町や建物の美しさなどを考えることができますし、美術や芸術に関係があることを勉強して職業に結び付けられそうだと思いました。大学入学時には、建築を勉強したいと思っていました。
鈴木)その中でもサステナブルな建築に興味を持ったきっかけを教えてください。
嶋岡)建築について勉強する前から、特に、日本では古い建物を壊して新しい建物を造ることが当たり前であると感じていて、どうにかできないかなと、考えていました。
鈴木)欧米だと、昔の建物をずっと使っている光景もよく見ますよね。
嶋岡)それから、建設を行う過程でゴミが出てしまうことも気になっていました。こうしたことを踏まえて、どうしたら地球にも優しく、長く使われ続けられる建築になるのかな、と思ったことが出発点だったと思います。
鈴木)留学に行こうと思ったきっかけを教えてください。
嶋岡)私は、学部4年生の時に、明治時代の日本の建築をテーマに論文を書いていました。明治時代は西洋の文化が入った時代で、西洋の影響を受けた建物が日本に多く建設されました。それに、ヨーロッパだと日本よりも古い建物をずっと使い続けていることがよくあります。そういうことを、直接自分の目で見て確かめたかったことが大きいです。
「サステナブル」で当たり前
鈴木)留学内容を教えてください。
嶋岡)最初に、ドイツのブレーメン応用科学大学の建築学部に交換留学に行きました。
留学先の大学では英語で授業が受けられると聞いていたのに、実際には英語の授業が少なくて、思い通りに授業を受けることができませんでした。しかし、ドイツ語の授業でも協力的な先生は英語で補足してくれました。また、先生は事務所を持っていて設計者としても活動されていたので、授業内容が実務的でした。それから、こういう理由でこの街はできているんだという、「都市的な感覚」という新しい視点を得ることもでき、結果的に良い経験になりました。
鈴木)それは良かったですね。具体的にはどのような授業がありましたか?
嶋岡)建築写真の実践型授業を取ったり、「オープンスペース」についての座学とフィールドワークを交えた授業を受けたりしました。
鈴木)「オープンスペース」について、教えてください。
嶋岡)建物と町の間など、建築物の周りにあるフリースペースのことで、ベンチを出すなどしてちょっと休憩できるスペースのことです。
写真①オープンスペースに関する授業の校外学習で、先生と共にブレーメン市内の公園を歩いた日。学生によるプレゼンテーションを交えつつ、先生の解説もあって、公園の成り立ち、特徴、歴史を見て歩いて確かめた。留学先ではこうした実地での授業が多く、新鮮だった。
ブレーメン市内の公園
大学での授業の後、1か月間建築設計事務所でインターン生として働かせていただきました。図面の修正をしたり、所長さんと話してデザインを一緒に考えたりするなど、事務所のプロジェクトのいくつかを分担させてもらいました。
鈴木)留学を通じて、サステナビリティについてはどのようなことを学びましたか?
嶋岡)インターン中には、ドイツで建築物を設計するときのスタンダードが「エコ」であることが分かりました。法律や素材からして、「サステナビリティ」という言葉は、日本のように単なる流行りの言葉ではなく、「配慮して当然」という視点で設計されていることを学びました。設備にしても、グレードの高いものを入れてでも、環境に配慮することが大切にされています。ドイツ人の友達に「省エネのためには初期投資ですごくお金がかかるけど、やろうと思う?」と聞いた時も、「当然でしょ」と答えが返ってきました。サステナビリティをテーマに掲げて勉強しにいったのに、現地では当然のように思われていたことに驚きました。
写真②ヘルシンキの街中を歩き回る間に辿り着いた公園。市民の憩いの場になっていて、初夏にはジェラート屋が多数出ていた。広く、清潔感のある公園が無料で使えることにも、利用者が思い思いの場所に座り、寝転ぶ姿にも驚いた。日本にもしこんな場があったら…と妄想が膨らんだ。
ヘルシンキの公園
写真③バルセロナを一人旅する途中で友人に偶然遭遇し、一緒に丘で街を背景に写真を撮ってもらった。留学して半年経過した頃で、まちづくりに興味を持ち始めていたのでバルセロナの都市計画を自分の目で見たくなって飛行機のチケットを予約。リュック一つで出かけた。
バルセロナの丘で
誰もが「ここにいてもいいんだ」と思えるような「居場所」を作りたい
鈴木)帰国後の活動について教えてください。
嶋岡)大学院で、学部4年生の時から引き続き研究していた明治時代の日本の建築についての論文を書いて、2021年3月に卒業しました。
現在は、まちづくりに関わる会社で仕事をしています。留学中の経験を軸に、オープンスペースの考えを生かすことができ、持続可能性に配慮できる職場だと思って、今の仕事を選びました。
鈴木)今のお仕事でも「サステナビリティ」の考えを生かすことができていますか?
嶋岡)古い建物を使い続けたり、リニューアルしたりしてまちづくりを考えるという点で役に立っていると思っています。現在携わっている仕事では、既存の集合住宅の活用を考えています。築50年で、普通だと建て直した方がいいのでは、と思われるかもしれません。しかし、私は、それをまだ使い続けようとするところがミソだと思っています。古いものを使い続けていくところに共感し、面白みを感じています。
鈴木)将来の夢を教えてください。
嶋岡)今ある建物や場の力を最大化して、そこに誰もが「ここにいてもいいんだ」と思えるような「居場所」作りをしたいです。その「居場所」は、建物かもしれませんし、町かもしれませんし、活動のことかもしれません。模索中ではありますが、ハードとソフトと両方の意味で考えながら、「ちょっと寂しいな…」と思っている人の助けになれる場所を作りたいです。今も、まちづくりを通して、居場所作りに貢献する仕事ができていると思えています。
編集後記
オープンスペースという考え方は、初めて聞く言葉で、勉強になりました。誰もが「ここにいてもいいんだ」と思えるような「居場所」って、とても温かくて素敵だと思いました。
今後も嶋岡さんのご活躍を応援いたします!
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