とまりぎ とまりぎ ートビタテ生の拠り所、トビタテ生の和を作るー

第212回:~社会人トビタテ生の留学する前と後特集 vol.8~「日本人らしく自信を持って英語を話す大切さを伝えたい」みうさん~

青山実央【事務局インターン,大学12期】

青山実央【事務局インターン,大学12期】

2022.01.25

 学生時代にトビタテで留学した社会人を取り上げて,現在のキャリア選択のきっかけや「留学」がその後の人生にどのような影響を与えたのか紹介する「社会人トビタテ生の留学する前と後」特集。
 第8回は新興国コースでシンガポールに留学したみうさんです。ナショナリズムを専攻していたみうさんが選んだキャリアは学校の教員でした。みうさんが留学経験を通して感じたシンガポール人のアイデンティティとはどのようなものだったのか,そして,なぜ,英語教育に携わろうと思ったのか,社会人になったみうさんの夢はどんなものなのかなどをお聞きしました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】

今回のトビタテ生

名前:みう
トビタテの期・コース:大学9期・新興国コース
留学先:シンガポール
留学テーマ:ナショナリズム

大学在学中にシンガポールへ1年間休学して留学。卒業後は九州の中学校で英語講師として勤務。現在教員1年目。

アジア人として世界で戦える人になりたい

― 留学前はどんなキャリアを考えていましたか?

  大学に入ったときは,特にこういう業種に興味があるとか,将来こういうことをしたいということはあまり考えていませんでした。大学生活の中で,自分のやりたいことが見つかればいいかなと思っていました。
 教員免許を取った理由も,大学で免許が取れるということを知ったので,とりあえず取っておこうという気持ちで取り始めました。なので,実は最初から教員になろうと思っていたわけではなかったんです。

 

― 留学しようと思ったきっかけは何ですか?

 模擬国連がきっかけです。大学生の間,ずっと模擬国連に参加していて,その経験から,日本だけではなく,世界のトップレベルの学生がどんな教育を受けているのかということを知りたいと思いました。それで,イギリスの大学の交換留学プログラムに申し込んだんです。ただ,選考で落ちてしまったのもあり,その時は留学を諦めて,ストレートで卒業しようかなと思っていました。でも,周りには休学して留学したり,ワーキングホリデーに行っていたりする友達が多かったんです。そこから,休学留学をすることも1つの選択肢なのかなと思うようになりました。

 

― シンガポールを選んだ理由は何ですか?

 アジア圏の中でトップレベルの学生が集まる場所だと感じたからです。
 世界のトップレベルの学生が集まる場所と聞くと,アメリカやイギリスを想像する人が多いと思います。でも,私の中では,欧米じゃないなと思っていました。英語が話せて当たり前っていう世界があまり好きじゃなかったことも影響しているかもしれません。なので,せっかく休学して行くのであれば,留学先は欧米ではないなと思いました。
 そこから,アジア圏の大学に目を向けるようになりました。アジア人として,世界に出ていくにはどうしたらいいのかという自分の立ち位置を考える留学にしたかったので,アジアの国々の中で,世界中から学生が集まるようなハブになっている国はどこだろうと思ったときに,思いついたのがシンガポールでした。そのシンガポールで私の学修していたナショナリズムについても学べると知ったのでシンガポールに決めました。

 

― シンガポールでは,どのようなことをしていたんですか?

 シンガポールの大学でナショナリズムを学修しながら,シンガポール模擬国連に参加していました。
 私が留学していた大学には,Non Exchange Students という枠があって,英語のスコアなどを揃えて,個人で申し込むことができる制度がありました。その制度を使って,留学していました。
 留学序盤のちょっとしたハプニングは今でも覚えています。8月に大学に行って,履修登録期間の間に取りたい授業を受けながら,試験日やレポートの期限を確認していました。私は留学中に模擬国連に出る予定があったので,その予定を考えながら,授業を取ろうとしていました。
 しかし,履修登録期間の最終日に取りたかった授業に参加していたら、その授業のテスト日程と模擬国連の日程が被っていることが判明したんです。「レポートに変えてくれませんか?」って先生に頼んだんですけど「テスト受けられないなら,この授業は受けないで」と断られてしまいました。履修登録の締め切りまで残り2時間くらいっていう切羽詰まった状況で,急いで他の授業を調べて,泣きそうになりながら,履修登録をしていました。
 それで,やっと出せると思ったら「書類に不備があります」って言われて,大きなキャンパスの事務局と学部を行ったり来たりしながら,「ヤバい!私このまま履修できずに日本に帰らないといけないかも!」と思っていました。そんな留学生活のスタートでした。

 

― ナショナリズムは具体的にどんなことを学修するんですか?

 主に国家がどのようにできていくのかということを学びます。日本であれば,島国なので,国家の形成の仕方などは分かりやすいと思います。ですが,ヨーロッパなどでは,この地域に住む人はスペイン人,この地域に住む人はポルトガル人といったように,陸続きであっても国家が形成されていきます。
 こうした形成の仕組みはどのように生まれていくのか,何がその要因となるのかなどを学修していました。
 私が留学中に学んでいたのは,植民地とされていたアジア圏の国がどのように〇〇人として国家を形成していったのかということでした。留学以前から,アジア圏のナショナリズムに興味があったので,シンガポールを留学先に選んだのかもしれません。

シンガポールでの様子

― 模擬国連はどのような感じでしたか?

 私が日本にいたときに参加していた模擬国連では大学の代表として世界大会に出場していましたが,留学中に参加していたのは,インドネシアやマレーシアなどのアジア圏の学生も参加するようなシンガポール国内の大会でした。 

別にネイティブみたいに英語を話さなくてもいい

― 留学後にキャリアに対する考え方の変化はありましたか?

 英語教育に携わりたいという思いが湧いてきました。
 ナショナリズムの学修を通して,「自分らしさ」や「アイデンティティ」について考えることが多かったです。その中でも私の1つの大きなテーマは「英語を話すことと自分らしさの関係」です。
 私が模擬国連の大会でニューヨークに行ったときに,英語を話したら,ネイティブスピーカーに笑われたことがあったんです。一生懸命勉強してきた英語を笑われて,せっかく頑張ってきたのに,英語を話せば話すほど自分のことが嫌いになっていく。そんな思いを持っていたときもありました。そこから,日本人が自分らしく,自分に自信を持ちながら英語を話すことができるようになるにはどうしたらいいのかということを考えるようになりました。
 留学中にシンガポール人と接していく中で,シンガポール人のアイデンティティって何かなと考えていると,1つの大きな要素として,シンガポール英語を話すことなのではないかと思うようになりました。きっと彼らはシンガポール英語を話すことによって,自分はシンガポール人なんだと自覚していると感じました。
 こうした気づきから,別にネイティブスピーカーが話しているような英語を話さなくてもいいのではないか,日本人なまりとか,日本語の言葉が少し混ざっているような英語でもいいから,話すことによって自分を表現できたらいいんじゃないかなと思うようになりました。そういうことを伝えていくにはどうしたらいいのかということを考えた結果,英語教育に行きつきました。

 

― 教員採用試験を受けないで教員になる道を選んだきっかけは何ですか?

 英語教育の分野に進むと決めましたが,教育現場を見てみたいという思いと,自分のやりたいことを見極めてみたいという葛藤があったからだと思います。
 私がこういうことをやりたいと思っていても,どこに所属してどんなことをしたらいいのかということが分からなかったんです。そもそもどのような構造で何が動いているのかが分かりませんでした。文部科学省に入省して,英語教育の政策を考えたらいいのか,でも,文部科学省が目指している姿と実際の現場はかけ離れているのかもしれません。どこかの会社に就職して,教科書を作るとなっても,教科書で目指されていることがどのくらい実行されているのかということも分からないなと思いました。
 そうやってたくさんの選択肢を考えたときに,まずは実際の教育現場を見てみないと,私がどこで何をしたいのか分からないと思いました。それなら,教員採用試験を受けないといけません。でも,教員採用試験で合格して教員になったら,あとから違う道に進むということが難しくなってしまうのではないかという葛藤がありました。
 そんなときに,出会ったのが教員採用試験を受けなくても,研修を経て,講師として教育現場に2年間派遣してもらえるというプログラムでした。その制度に出会って,これだと思いました。

 

― 今はどのようなことをしているんですか?

 九州の中学校で英語の常勤講師をしています。授業をしたり,テストを作ったり,成績処理をしたりする教科指導がメインの業務で,生徒指導や生活指導もしたりします。教員採用試験は受けていませんが,生徒たちから見ると,周りの先生と変わらない印象を持つと思います。常勤講師ですが,担任を持っていないこと以外は他の先生とは業務の内容はほとんど変わらないと思います。

― 実際に働いてみて,イメージと違うと思うことはありますか?

 イメージと違うことはあまり感じません。教員は大変というイメージが出回りすぎて,普通にイメージ通りでした(笑)。大学の生活を5年間も経験していて,しかも,大学4年生のときはリモート授業で,授業の5分前に起きて,授業に出席するといった生活をしていたんです。そこから,平日は5:00に起きて,7:00過ぎには学校に着いて,20:00まで働いく生活に変わると,普通に大変です。イメージがあるなしに関係なくきついです。世の中の社会人に拍手を送りたい気分です。

 

― でも,なかなか社会人でも朝の5:00に起きる人は少ない気がします。

 そのライフスタイルは教員独特なものかもしれません。朝が早いことが多いですね。教員の朝礼が8:10に始まるので,それまでに授業の準備などを済ましておかないと時間がないことが多いんです。朝礼が終わると,朝の会が始まったり,授業が始まったりして,生徒と同じ行動をする時間が多くなるので,なかなか準備の時間取りにくいですね。
 部活の顧問を担当している教員はもっと大変そうです。授業後や休日にも部活のために学校に来ています。6:30集合しているときもあるようです。

 

― やはり結構大変なんですね。

 でも,少しずつですが教員の勤務体制を見直す動きもあります。部活の顧問制度の見直しや、定時に退勤する日を設定するなど、教員の働き方改革も少しずつですが進んでいるように感じます。

自分が理想とする英語教育を実現するために

― 働いていて,留学経験が活きているなと思ったことはありますか?

 普段授業をしている中で,自分の経験を交えて伝えられることです。シンガポールのことが教科書の中で記載されていたら,シンガポールに行ったときの話をすることもできます。そうすると,生徒たちも教材としてシンガポールのことを勉強するのではなくて,この先生がこんな経験をした国だと身近に感じることができると思います。生徒に日常的に刺激を与えられることができるのはよかったなと思います。
 あとは,生き方やキャリアに対する考え方が変わりました。トビタテ生やトビタテに関わっている人は視野が広い人が多いと思います。1つの会社に就職して,定年まで働くという人ばかりではなくて,自分のスキルを磨きながら,たくさんの場面で活躍していて,アンテナを高く持っている人が多いと思いました。そういう人たちに囲まれていることがすごくいいなと思います。留学経験以上に,留学で得た友達やトビタテの仲間から刺激をたくさんもらっています。
 学校に勤めていると,どうしても学校の外の世界に目を向けることが難しくなります。でも,トビタテ生の仲間たちと定期的に話したり,ご飯に行ったりすると,自分がいる場所を俯瞰して見ることができて視野が広がります。

 

― 留学経験以外で,学生時代に経験しておいたほうがよかったなと思うことはありますか?

  アルバイトはいろいろな業種を経験しておいた方がいいと思いました。私は飲食系のアルバイトをしたことがなかったんです。飲み物をこぼしてしまいそうだと思っていたので(笑)。社会人になると,自分のキャリアに関係のない仕事をやる機会が本当になくなってしまったんです。なので,アルバイトっていいなと思っています。たくさんの業種の仕事を経験出来て,その経験から,就職の選択肢が広がることもあるなと思っているので,食わず嫌いせずに,たくさんの仕事を経験してほしいと思います。
 あとは,車の免許は絶対に取っておくべきです。全ての大学生に伝えたい!社会人になってからだと,取る時間なんてありません。関東圏や関西圏の学生って電車でいろいろなところに行けてしまうので,免許を取る人が少ないんじゃないですかね。出勤も電車に乗って,学校の最寄り駅に着いてから,20分歩いて出勤しています。周りの先生に「歩き!」ってびっくりされます。そんな感じなので,駅まで送ってもらうことも多いです。でも,そこでコミュニケーションが増えることもあって,あまり接点のない先輩の方とも仲良くなれます。そこはいいポイントですかね。
 旅行にはたくさん行ってほしいです。お金はないかもしれませんけど,時間はたっぷりあるので,ヒッチハイクしたり,ゲストハウスに泊まったり,時間がたっぷり使える旅行ができるのは学生のうちなので,たくさん行きたかったなと思っています。

 

― 今後実現したいことや,やってみたいことを教えてください。

 大学院に進学したいと思っています。実際に教育現場で働いてみて,仕組みも分かってきましたし,実際に先生がやろうとしていることとそれに対する生徒の反応や,先生に対して教育委員会がどのような働きかけをしているのかということなどの教育現場の構造を理解し始めてきました。なので,次は自分が理想としている英語教育を実現するにはどのようなプログラムが必要なのか,どういう改革が必要なのかということを考えたいと思いました。でも,それは教育現場から少し引いた目線が必要なんじゃないかと思っています。そういう場所で研究としてやってみたいなと思っています。
 海外の大学院よりかは日本の大学院で研究したいと思っています。日本の教育を考えるとなると,日本の教育現場と近い距離にある大学で研究したいです。

 

― 学生時代の自分にメッセージを送るとしたら,どんな言葉をかけますか。

 今を楽しみなさい!
 と伝えたいです
 学生時代っていろいろな経験ができると思うんです。社会に出ると,自分がプロフェッショナルになっていくために,道がどんどん狭く,鋭くなっていくと思っています。でも,大学生のときは,とにかく自分を広げていくことができるので,たくさんのことに挑戦して,経験を積んでいってほしいなと思っています。楽しいことだけではなく,挫折することも含めて,全部いい経験になるので楽しんでほしいなと思います。

 

編集後記 ー完璧じゃなくてもいいということー
 なぜ,教員の道に進んだのか。それが前から気になっていました。
「別にネイティブみたいに英語を話さなくてもいい。そういうことを伝えるために教員になった」これが,教員を志した理由でした。
英語が苦手な人ってネイティブみたいな英語を目指している人が多いのではないでしょうか?私もたまに英語を勉強していると苦しくなります。もしかしたら,潜在的に完璧な英語を目標にしているからかもしれません。
別に日本人が話す英語も英語だし,文法や語彙が違っても,発音がうまくいかなくても表現して伝わればいいんですよね。そんな思いになれる人が少しでも増えればいいなとインタビューを通じて感じました。
次回は,国際協力の分野で留学して,山口県で塾を運営しているトビタテ生のキャリアを紹介します。

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