とまりぎ とまりぎ ートビタテ生の拠り所、トビタテ生の和を作るー

第224回:~社会人トビタテ生の留学する前と後特集 vol.14~「人が社会を変えていく」平山魁理さん

青山実央【事務局インターン,大学12期】

青山実央【事務局インターン,大学12期】

2022.03.15

 学生時代にトビタテで留学した社会人を取り上げて,現在のキャリア選択のきっかけや「留学」がその後の人生にどのような影響を与えたのか紹介する「社会人トビタテ生の留学する前と後」特集。
 第14回は大学1期でデンマークに留学した平山魁理さんです。「日本の未来は明るくないらしい」そんな思いをきっかけにデンマークへの留学を決意した平山さん。世界一幸せな国だったデンマークはどんな社会だったのか,平山さんなりに見つけた「世界一幸せな国の理由」は何だったのか。そして,帰国した平山さんが決めた就職先の基準は大手企業でした。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】

今回のトビタテ生

名前:平山魁理
トビタテの期・コース:大学1期・世界トップレベル大学等コース
留学先:デンマーク
留学テーマ:「世界一幸せな国」の理由を探る旅

上智大学法学部3年生のときに,交換留学制度で半年間デンマークに留学。卒業後はトビタテ!留学JAPANの支援企業である損保ジャパンに新卒で入社。事故対応担当や法人営業を担当。現在,社会人6年目。

「世界一幸せな国」の理由を探る旅

― 留学に行く前はどのようなキャリアプランを考えていましたか?

 自分は上智大学法学部に通っていましたが,法曹界に入ることはあまり考えていませんでした。ですが,法学部で学んだことをしっかり活かせるビジネスマンになりたいという漠然とした目標はありました。
 なので,大学に入学する頃には民間企業に就職すると決めていました。父親がメガバンクに勤めていて,海外勤務をしていたこともあり,自分も金融や商社,メーカーのような将来的に海外に働けそうな職種を志望していました。

 

― 留学しようと思ったきっかけは何ですか?

 北欧の社会福祉の制度などを現地で体験したいと思ったからです。
 高校生のときから,大学に入ったら留学しようと決めていました。高校生のころは留学といったら,英語圏であるアメリカやイギリスなどに留学することを想像していました。
 それで,大学1年生の冬に短期留学をしようと思って,政治や公共哲学の分野ではレベルの高い大学であるパリ政治学院への短期留学プログラムに応募しようと思いました。ですが,3週間で60万円くらいかかるって案内に書いてあったんです。「3週間で60万円って高い!」と思いました。それで,費用を理由に諦めました。その代わりに,ハンガリーのビジネススクールに留学したんです。
 初めてヨーロッパ圏に行って,ヨーロッパ圏の生活スタイルやそこに住んでいる人たちの考え方がすごく自分の理想に近いなと思いました。それで,長期留学に行くんだったら,ヨーロッパ圏の国へ行きたいと思うようになりました。
 その後,帰国後に受けた比較政治学の授業で,教育,環境政策,社会福祉などさまざまな分野で,北欧が制度の充実さが高いことを知りました。当時の自分は,日本もそれなりに充実しているのではないかと思っていました。ですが,社会福祉の充実さを表しているランキングなどでは,日本は*OECD加盟国の中では真ん中から下くらいに位置していました。そこで,今まで自分は日本で幸せに暮らしていましたが,どうも日本での将来は不安なことも多いと気づきました。なぜ,北欧はそんなに充実しているのか知りたいと思って,北欧への留学を決めました。

*OECD:経済協力開発機構のこと。ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国が加盟する国際機関。国際マクロ経済動向,貿易,開発援助といった分野に加え,最近では持続可能な開発,ガバナンスといった新たな分野についても加盟国間の分析・検討を行っている

 

― トビタテに応募しようと思った理由はなんですか?

  渡航費もちゃんと支援してくれて,研修制度もちゃんとしていたということが決め手だった思います。
 北欧への交換留学を出願したときに,トビタテ!留学JAPANを見つけました。北欧はお金がかかるので,お金の支援だけではなくて,研修制度とか人材育成にも力を入れている奨学金とかがあったらいいのになと思うようになっていました。そのタイミングでトビタテを見つけたので,「これは応募するしかない!」と思いました。自分なりに留学で何をしたいのか,その留学で何を得たいのかということは明確にしていたつもりだったんですが,トビタテに合格するために,さらに深く留学の目的や留学中にやりたいことを深掘っていきました。そして,晴れて合格して世界トップレベル大学生等コースの1期生として留学しました。

 

― どんな留学生活を送っていたんですか?

 2014年8月から2015年1月までの半年間,デンマークに交換留学していました。その当時のデンマークは,国民幸福度が世界一だったので,幸福度が高い理由を探るための留学をしていました。
 現地では,ビジネス社会科学部というところに所属していて,環境政策や社会論の授業を取ったり,ビジネスに関する経済学や経営学の授業を取ったりもしていました。
 留学の1番の目的は環境問題と社会保障と教育政策の3つの分野を学ぶためのフィールドワークでした。環境政策の分野だったら,風力発電所やバイオマス発電所に行ったり,オーガニック農園などに行ったりしました。教育分野だったら,現地の幼稚園から大学院までの教育機関を訪問して,視察をしました。小学5年生の授業に参加したときに,「日本はなぜまだ原発を使っているのか」と質問されて驚いたのを今でも覚えています。社会保障の分野では,デンマークの方に年金など社会保障システムに関するインタビューをしていました。
 日本の大学の授業で,日本の環境政策や社会保障のシステムなどはある程度勉強していましたし,北欧のものも勉強して留学したので,自分が身に着けた知識を活かしたり,確かめたりする留学でした。

学校訪問の様子

風力発電所への訪問の様子

― 留学を通して,平山さんが感じた「世界一幸せな国」の理由は何でしたか?

  自分が留学を通して感じた1番の理由は「人」です。優れた環境政策があったり,社会保障などの制度が充実していたりするということももちろん1つの要因だと思います。
 ですが,それよりも,市民1人1人の社会への参加意識や政治への関心がとても高いことが理由だと思います。優れた制度があったとしても,それをうまく活用できない政府では制度は機能しません。そうならないためにも,市民がきちんと自分たちのために税金や制度を運用してくれているのかということをきちんと見ています。小学生でも中学生でも,社会に関することや政治に関することを盛んに議論して,1人1人が意見を持っています。その意見を投票という形で社会参加をして,政府に示します。そこで初めて優れた制度が社会で活かされていくんだと思いました。
 制度ももちろん優れていますが,それを作ったのも市民から選ばれた政治家ですし,それがちゃんと機能しているのかという市民の厳しい評価がないと政府も気を引き締めて政治をすることができません。それだけ政治に強く関心を持って,評価をしている市民が1番すごいなと思いました。

留学成果報告会で賞をもらったときの様子

人や社会に影響力のある仕事をしたい

― 留学を経て,将来のキャリアに対する考え方の変化はありましたか?

 人や社会に影響を与えられるような仕事に就きたいと思いました。
 デンマークでの留学を通して,豊かな社会にしていくためには優れたシステムよりも人の方が大切だと感じました。人という意味では,日本と北欧に差はないと思いましたし,日本も「世界一幸せな国」になれるんじゃないかと思いました。
 そのためには,教育制度の中に政治や社会に関する議論をする機会を設けたり,働き方改革を行ったりすることが必要だと思いました。人をより豊かにしていくためには,子どもが大半の時間を過ごす教育現場と大人が大半の時間を過ごす労働環境を改善することが大切だと思っています。自分は教育を専門にしていたわけではないので,教育現場に関わることは難しいと思いました。ですが,自分が会社に就職して,労働環境や働き方改革に関わることならできると思いました。特に,日本では大企業の影響力が大きいので,大企業に入って,人や社会に影響を与えられるような仕事に就きたいと思いました。

 

― 今はどういうお仕事をされているんですか?

 トビタテ!留学JAPANの支援企業である損保ジャパンに就職して,来年度には7年目になります。今は営業のサポートをする仕事をしています。私は6年間で4回ほど異動になっていて,今の仕事が5部署目です。
 初任地は京都にある支社で示談交渉を担当していました。初めての1人暮らしで慣れない環境の中で,言葉や表現が強い関西弁の人と電話対応するっていうのはとても大変でした(笑)2年目は,本社で営業推進部に所属していました。3年目は,横浜で法人営業をしていて,法人営業は2年間やっていました。5年目は,横浜の営業推進部にいて,今もその部署で働いています。

 

― 今の会社を選ばれた決め手は何ですか?

 ご縁があったからです。
 自分が就職先を選ぶときは,あまり業種にはこだわっていなくて,海外で働くチャンスがあるかどうか,社会や世界に影響を与えられるような大手企業かどうかということを基準にしていました。特に,いろいろな人がいて,さまざまな事業を持っていて,世界とのつながりがあるところだとよりいいと考えていました。そうなると,金融や商社,メーカーなどの大企業が1番自分の目指しているところに合っているんじゃないかなと思っていました。
 しかし,そう思って,大企業を志望し,就活をしていると,大企業は多種多様な仕事があって,いろいろな人がいるので,入ってみないと自分が本当にその仕事に合っているのかわからないと思うようになりました。OBOG訪問や説明会を受けていく中で学生の経験や知識で第1志望は決められないと思いました。
 そんな感じでしたが,商社やメーカー,金融の様々な企業の最終面接まで進むことができて,ここの企業ならどこでも入っていいなと思えるくらいうまくいっていました。
 実際に最終面接を受けていくと,さまざまな企業で「あなたはこの会社が第1志望ですか」と聞かれたんです。その場で「そうです」っていえばよかったものの,自分は今どの企業の最終面接に残っているのか,そして,すべての企業で迷っていることを正直に面接官に伝えていました。そうなると,今まで,何人もの第1志望の学生を面接で振り分けてきた以上は,企業側も第1志望の学生を採用したいという思いがあるので,迷っている学生を採用しようとは思わないんですよね。やっぱり内定をもらえませんでした。
 今,振り返れば,「そりゃそうだ」と思うんですが,当時の自分は正直でいることが善であると思っていたので,全て正直に答えていました。
 しかし,今の会社は違ったんです。自分の会社の面接官は「それだけ受けている企業があったら,よくわからなくなるのもわかるし,共感できます。なので,1週間あげるから,じっくり考えてください。海外勤務経験がある社員も紹介するから,話を聞いてみたらどうですか」と言ってくれました。そこで紹介してもらった社員の方の話も聞きながら,損保ジャパンはいい会社だなと思ったので,就職を決めました。あの面接官に出会っていなかったら,考える時間をくれていなかったら,自分はこの会社に就職できていないかもしれません。

自分の考えは間違っていなかった

― 実際に働いてみて,学生時代のイメージとは違うと思うことはありましたか?

 社会人1年目で示談交渉を担当していたときは,仕事ってこんなに大変なのかと思いました。学生時代は大人の方に怒鳴られることなんてなかったんです。ですが,毎日,関西弁で怒鳴られていました。自分の仕事は事故が起こってからスタートするので,仕事が始まったときは,相手側と契約者はマイナスな状態なんです。そんな環境で示談交渉をするので,怒鳴られることもあって,精神的にきつかったです。ここまで大変だとは就活していた当時は思わなかったので,こういう仕事があったら受けなかったなと思ってしまうほどでした。
 あとは,システム面でも驚いた部分がありました。入社後に営業に配属されたときも,Officeのバージョンが2003でした。自分が大学生のときは2010くらいで,社員を2万人以上抱えている企業のOfficeのバージョンが2003だとは思いませんでした。ですが,Officeのバージョンはセキュリティー等の関係で,個人のソフトと同じようにはすぐに導入できない事情があるんです。最近では,毎年システムのアップデートがあります。それに,AIとかの最先端技術も使っていると思っていました。ですが,実際は紙に印刷したり,手書きでやったりする場面も多かったです。もちろん,印刷や手書きが必要な場面では活用しています。今では徐々にオンライン化が進み,出社しなくても仕事ができる体制になっています。

 

― 反対に,イメージ通りだなと思うことはありましたか?

 やはり大企業の力は大きかったです。人脈やネットワークも広いですし,損保ジャパンって言ったら,ほとんどの方が知っています。それだけ社会から信用されていて,営業をしていても「損保ジャパンです」って言うと,電話で話を聞いてくれますし,会って話を聞いてくれることもあります。
 コロナ禍になっても,金融や保険業界は業績にそんなに影響がなくて,ボーナスもきちんと出ています。それに,福利厚生もしっかりしています。単純な給料だけみると他の企業と変わりませんが,安定性や住宅手当などの社員の生活サポートを考えると,いい会社に入ったと実感しています。そこは,大企業に入ることを就活の軸にしていた学生時代の自分の考えはあながち間違っていなかったんだと思っています。

 

― 働いていて,留学経験が活きていると思ったことはありますか?

 会社内では,1年目から海外経験がある人としての立ち位置は築かれているかなと思います。1年目の示談交渉を担当していたときは,京都という土地柄もあって外国人観光客との事故対応もありました。周りに英語ができる人がいなかったので,そのような案件が自分のところに周ってきていました。仕事で英語を使う機会があったことによって,自信もつきましたし,よりグローバルな人材になりたいと思いました。自分の会社には英語ができる人は1割くらいしかいないので,自分の付加価値が上がっていると思っています。
 あとは,今,SDGsの取り組みが社内でも広がっていて,横浜市や神奈川県とSDGs関連の取り組みをすることもあります。そういう場面では,自分が留学していたデンマークの例を紹介できます。
 直接的に活かされている場面は少ないかなとは思っていますが,間接的には活かされているなと思う場面はあります。

留学後にも続くトビタテ生との交流

― 留学経験以外に学生時代に経験しておいて,役に立ったことは何ですか?

 自分が所属していた学部の授業ではなくても,自分が興味を持って面白そうだと思った授業は受けてみるといいと思います。学生時代は1限から6限まで大学で授業を受けていたこともあって,環境政策に関する授業とか比較政治学の授業などを学部の授業以外のものもたくさん受けてきました。そうやって得た知識が今に活かされていると思います。働いていても,いろいろな話題に絡めながら話ができますし,たくさんの人と交流ができます。

 

― 今後実現したいこと,夢を教えてください。

 海外で働きたいです。就活をしていたときから,ずっと海外で働きたいと思っていましたが,いまだに実現できていません。特に,ヨーロッパにはもう1度住みたいですし,留学をしているときから,社会人になったら絶対に帰ってくると心に決めていたので,まずはそれを達成したいです。
 会社にはMBAの取得を支援してくれる制度はあるので,そういう制度の利用も考えながら,海外に行ける方法を模索しようと思っています。

 

― 学生時代の自分にメッセージを送るとしたら,どんな言葉をかけますか?

 しっかり自分の好きなことと向き合って,自分なりに仮説を立てて考えて,それを検証するために行動を続けることは大正解!
 好きなものには好きと言って,周りの人にはしっかりと感謝を伝えて,自信をもって進めば必ず自分のやりたいことはできるし、進みたい方向へ行ける!
と伝えます。

 当時の自分が考えて出した答えは,今の自分が考えても正しいと思いますし,過去に戻ったとしても,同じ行動を取ると思います。
 周りのからのアドバイスや支援に感謝をすることも忘れないでほしいです。そういうことの積み重ねで,道は開けてくると思います。 

 

編集後記 ー 留学と将来のキャリア ー
 とにかく大手企業に就職したいという平山さんの思いの原点は人や社会に影響力を与えられるような企業に入りたいという留学で芽生えたことがきっかけでした。留学での経験が自分のキャリアに影響を与えてくれたと語ってくださった平山さんの話を聞いて,留学が将来のキャリアに与える影響力の大きさを感じました。
次回は,アメリカに留学後に起業したトビタテ生のキャリアを紹介します。

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