とまりぎ とまりぎ ートビタテ生の拠り所、トビタテ生の和を作るー

第227回:~社会人トビタテ生の留学する前と後特集 vol.16~「Visionを持てたことが私の人生を決めた」青木優さん

青山実央【事務局インターン,大学12期】

青山実央【事務局インターン,大学12期】

2022.04.12

 学生時代にトビタテで留学した社会人を取り上げて,現在のキャリア選択のきっかけや「留学」がその後の人生にどのような影響を与えたのか紹介する「社会人トビタテ生の留学する前と後」特集。
 第16回は大学2期でフィンランドと台湾に留学した青木優さんです。大学受験に失敗したことが発端となり,やりたいことが分からなくなってしまった青木さん。大学でキャリア教育を受けたことをきっかけに留学を決意しました。留学後には,「女性のキャリア支援」を目的とした会社を起業後,大手人材系企業へ転職,現在は教育事業等を展開しているメガベンチャーで働いています。起業して感じた自身の力不足,転職して再認識した本当にやりたいことを胸に学生時代の自分にメッセージを送りました。
【インタビュアー:青山実央(事務局インターン,大学12期)】

今回のトビタテ生

名前:青木優
トビタテの期・コース:大学2期,世界トップレベル大学等コース
留学先:フィンランド,台湾
留学テーマ:日本の若者が仕事と家庭を自由に設計できる社会に

お茶の水女子大学在学中にフィンランドと台湾に交換留学。大学卒業後には女性のキャリアを支援する会社を立ち上げる。その後,株式会社リクルートに転職し,営業職として勤務する。現在は株式会社LITALICOにて,法人営業を行っている。

目標を見失った私にもう1度やりたいことをくれた留学

― 留学前にはどのようなキャリアプランを考えていましたか?

 私は飛行機が好きだったので,高校時代から飛行機に関わる仕事をしたいと思っていました。それを目指して大学も受けていました。ですが,希望の学部に合格することができず,大学入学後は,将来のキャリアプランなどは描けませんでした。
 整備士とかパイロットとか飛行機に関わる仕事に就くことがずっと夢だったので,当時はすごく将来の進路に迷っていたと思います。今考えれば,学部とかはあまり関係なかったんですけど,そのころの私はその学部に入って,航空宇宙工学を勉強するんだと思っていました。なので,それができなくなって目指すものが分からなくなってしまったんだと思います。
 でも,大学1年生のときからとりあえず意識だけは高く持っておこうと思い,キャリア系の授業を取っていました。その中で,なにをしたいという具体的な目標はありませんでしたが,将来は女性のリーダーになりたいという漠然とした思いはありました。

 

― 留学しようと思ったきっかけは何ですか?

 留学は高校時代からしたいと思っていました。中学高校と学習院に通っていて,周りの友人は中学高校時代から,海外に行くことが当たり前の世界だったんです。私は高校時代にチャンスが巡ってこなかったこともあって,すごく留学に憧れていました。
 大きなきっかけは,大学2年生のころにトビタテの説明会に参加したことです。Twitterでトビタテの説明会があることを知って,他大学まで説明を聞きに行きました。そのあとに,私が通っていた大学にも説明会が開催されて「チャンスだ!」と思って応募しました。

 

― フィンランドと台湾に決めた理由は何ですか?

 男女平等社会といわれているフィンランドとアジア圏で子育て世代の女性が多く働いているという台湾の社会システムを学びたかったからです。
 大学のキャリア系の授業を取るなかで,自分自身のキャリア設計に関心が出てくるようになりました。私は中学から大学まで女子校に通っていて,男女の差などをあまり感じず,意識することもないまま学生時代を過ごしていました。ですが,私が受けたキャリア教育の授業の中には,社会に出て活躍する女性ロールモデルと多く出会った一方で,結婚や出産後のキャリア設計など,ライフイベントによる影響を感じる話もたくさんありました。そして,私自身も将来のキャリアを考えたときに,壁がたくさんあるなと感じました。また,周りの友人も将来のキャリアに悩んだり,不安を持っていました。私の友人は優秀な方がたくさんいて,社会で活躍できる力を持った方ばかりだったのに,将来を不安に思う社会があるんだと思いました。
 そこから,ジェンダー平等に関心を持つようになりました。最初は留学に結びついていたわけではないんですけど,留学説明会で見たフィンランドのパンフレットに「男女平等国家フィンランド」っていうキャッチコピーがあったんです。それで,フィンランドに留学しようと思いました。
 また,北欧に社会福祉やジェンダー平等のテーマで留学する人は結構多いと思います。ですが,ただ北欧に行って,学んでも,国の規模や歴史など日本との違いが多くて,日本の社会に役立てることは難しいのではないかと思ったんです。なので,北欧だけではなくて,違うモデルも見てみたいと思い,台湾を選びました。台湾は子育て世代の女性が働いている割合が高いんです。同じアジアで文化も似ているのに,なぜ,こんなにも日本と違うんだろうと思って,台湾を選びました。
 私の大学は同じテーマであれば,2ヶ国まで留学できました。とにかくすごく海外に憧れていて,たくさんの国に行っている人がうらやましくてしょうがなかったんです。
 なので,「行けるんだったら,多い方がいい!」と思って2か国を選びました。

 

― どのような留学生活を送っていましたか?

 2015年の夏から半年ずつフィンランドと台湾に留学していました。
 大学で社会福祉や公共政策の授業を受けながら,その国で子育てをしているお母さんや女子大生へのインタビュー調査を行い,子育てのあり方やキャリア設計に対する意識がどれくらいお母さんたちや日本の学生と違うのかということを考える活動をしていました。あとは,子育てを支援する公共施設,教育施設に訪問し,国の制度やシステムとして日本とはどのような違いがあるのかということを学んでいました。

フィンランド留学中の1枚

― 調査活動のなかで,日本とはどのような違いがありましたか?

 フィンランドは平等国家でもあり,尊重国家でもあると思いました。1人1人の意識の中に「こうあるべき」という考えが強くないのではないかと思います。人の選択や価値観を尊重することができるからこそ,平等が実現しているのではないかと思います。インタビューをしていても,「それってあなたの選択でしょ?なんで心配する必要があるの?」と言われることが多かったです。人の選択への尊重と自分の選択を肯定する意思がすごく強いんだなと思いました。制度を充実させることはもちろん大事ですが,それぞれの選択を尊重する価値観も制度と同じくらい大事なんだと感じました。
 台湾は地域コミュニティや人のつながりで助け合っている文化が根強いと思いました。台湾はフィンランドと違い,福祉制度が充実しているわけではありません。なので,助け合い文化による心理的安全性の高さが女性の働きやすさや子育てのしやすさに繋がっているのではないかと思います。制度や血縁関係にもよらず,人のつながりで支えあえる仕組みを作れたら,社会全体で子育てをする環境ができるんじゃないかなと思いました。

台湾留学中の1枚

― 留学後に自分の将来に対する考え方の変化はありましたか?

 家族の作り方やあり方って人それぞれでいいんだと思うようになりました。日本にいるときは,私は自分の将来に対して不安だったんです。でも,世界に目を向けてみるといろいろなあり方ややり方があっていいんだと思いました。なので,私自身も子育てに対して前向きな気持ちになりましたし,フィンランドや台湾で学んだことを取り入れながら,私らしい家族づくりをしていきたいと思うようになりました。
 キャリア面では,もっと子育てしやすかったり,子育てしながらも自分らしい人生設計ができたりする社会づくりをしたいと思うようになりました。
 大学受験で挫折して,やりたいことって何だろうと思いながら,留学に行ってみたという感じでしたが,留学を経て私が将来やりたいことに出会えたことが留学後の1番大きな変化でした。

社会課題をビジネスで解決するために

― 留学後に起業したきっかけは何ですか?

 私がやりたいことが実現できると思ったからです。留学後に就職活動をしていましたが,始めてから2ヶ月でやめて,会社を作る決断をしました。就活していたときは,自分の関わる世界が広がるかなと思って,コンサルティングの会社を中心に受けていました。ですが,就活をしている中で,「私は本当にこの職業に就きたいのか」っていう違和感がありました。
 ちょうどそのタイミングで,私が留学前から関わっていた女性のキャリア支援をする団体を事業化する話が出たんです。私のやりたい「女性のキャリア」をテーマにして事業を運営できると思いました。そのときに,実はやりたいことは見つかっていて,それができる環境にあるのに,目を背けて就活を続けることに耐えられなくなってきたんです。
 留学でやりたいと思っていたテーマに対して賛同してくれる仲間がいて,タイミングが巡ってきたので,情熱だけで起業を決意しました。

 

― そこから株式会社リクルート(以下,リクルート)へ就職されたきっかけは何ですか?

 社会課題を解決するための事業を作ることの難しさを感じて,ビジネスで社会課題を解決することとはどういうことなのかが気になったことがきっかけでした。
 起業をして,さまざまな事業をやらせてもらったなかで,すごく力不足を感じていました。私たちのできる範囲はすごく限られていて,そのなかでできることを頑張ってやってきました。ですが,事業を運営していることが本当に私の作りたかった社会に繋がるのか,お金をいただくほどの価値を私たちで生み出せているのか分からなくなってしまったんです。社会課題を解決するための事業を作ることの難しさを感じて,ビジネスで課題を解決することとはどういうことなのかが気になったんです。それで,リクルートに転職しました。
 リクルートでは営業職として働きながら,どうやって目の前の課題と向き合うのかということを0から鍛えてもらえました。そして,いつかは社会の課題を解決する仕事をもう1度やりたい,営業だけではなくてビジネスで社会課題を解決することに携わっていきたいと改めて思うようになりました。

リクルート在籍時に表彰されたときの1枚

― その「社会課題をビジネスで解決したい」という思いから株式会社LITALICOへの転職を決められたんですか?

 そうです。リクルートに入社して2年後に株式会社LITLICO(以下,LITALICO)に転職しました。LITALICOのビジョンは「障害のない社会をつくる」ことです。障害は人の中にあるものではなくて,社会にあるものであるという考え方を大切にしています。
 今,私は発達の遅れや不登校など,一般的な教育システムの中では生きづらさを感じている子どもを持つ保護者向けのメディアを運営している事業部にいます。その中で,私は法人営業を担当しています。「障害のない社会をつくる」ために,国や公共団体などからアプローチする方法もありますが,社会経済活動を支えている民間企業からアプローチすることもできます。それを実現するための法人営業です。法人営業では,誰もが生きやすい社会を目指して,民間企業と一緒に商品やサービスを生み出したり,企業が持っている商品をメディアの会員に紹介してアクセスしやすいようにしたりする仕事をしています。

LLITALICOへの転職を後押ししてくれたトビタテハウスの仲間たちとの1枚

Visionがあるからこそ,頑張れる

― 起業やリクルートでの営業職,LITALICOでの経験の中で学生時代のイメージと違うと感じることはありますか?

 あまり学生時代に「働く」ということをイメージしていなかったので,ギャップを感じることはなかったです。
 ただ,私は社会人4年目になりますが,すでに2回転職を経験しています。その中で「転職が普通だ」と思ってもらえる社会だと感じました。学生のときは,まさか社会人生活4年間に2回転職するとは想像していませんでしたし,転職が珍しくない社会であると知りませんでした。
 私は変わったキャリアかもしれませんけど,転職という選択肢は珍しくないのではないかと思っています。20代のうちから自分から主体的に自分の居場所を選択することが普通なんだと思いました。
 あとは,意欲の高い学生であるほど,早く裁量権を持ちたい,自分で決められる範囲が多い方がいいという思いが強い傾向があるのではないかと思います。私もそういう思いがあったので,起業に踏み切ったということもあります。どこかに所属したら,自分のやりたいことができないのではないかという考えがありました。
 自分のやりたいことを全て実現するためには起業という選択肢もありだと思います。ですが,想像していたよりもリクルートに入社したことが私の人生の中で大きかったんです。あのまま事業を運営していたら,特別な力が磨かれたかもしれません。ですが,お手本にできる人がいない,リソースがない,知識もスキルもないという中で,大学を卒業して,奮闘するのは結構大変でした。
 リクルートに入社すると,お手本になる方がたくさんいらっしゃるんです。そうすると,自分の成長スピードが加速していったんです。裁量権を持ちたいという思いは大事にしてほしいですが,見本となる人と一緒に働くのは社会人のスタートとしてすごくいいことなんだと感じました。

 

― 働いていて,留学経験が活かされていると感じることはありますか?

 具体的なスキルではありませんが,留学して,Visionを持てたことが社会人になってすごく活きています。
 子育てやキャリア形成に対する課題意識を強く育てられたことが自分の人生の中では大きな意味がありました。日本でもこんなライフスタイルを歩める社会にしたい,ジェンダー平等を実現したいなどの意思を育てられたことが留学経験の大きな価値でした。
 よく考えると,留学前までそういう社会を作りたいというVisionを持ったことはありませんでした。学生時代は正解があることにしか取り組んできませんでした。なので,問いを与えられて,正解を出せる人だったと思います。
 そのVisionがなかったら,起業していませんでした。それに,その後のリクルートでも,LITALICOでもこの仕事を頑張れる理由があるからこそ,表彰などをしてもらえるくらい一生懸命に取り組めているんだと思います。
 Visionと出会えたからこそ,今の仕事は何のためにあるのかということをすごく考えて,自分のキャリアを選択できるようになったと思っています。

 

― 留学経験以外で,働いていて学生時代に経験しておけばよかったと思うことはありますか?

 長期インターンに参加しておけばよかったと思っています。今は,学生でもバイトより長期インターンに参加している方って多いと思います。社員同様に働いている方もいて,それってすごくいいなと思います。私は留学前はバイトしかしていませんでしたし,そんな選択肢を考えたこともありませんでした。
 振り返ってみると,インターンを経験していたら,起業までしていなかったのではないかって思うんです。どうやったらビジネスを作れるのかということは社会人になる前のインターンで結構学べるんじゃないかと思うんです。立ち上げたばかりのベンチャー企業でインターンをして,学生でも裁量権を持たせてもらえて,会社の仕組みを知ることができるのはいいと思います。自分が立ち上げなくても,インターンという立場で体感できるのはすごくいいと思って,私もやりたかったです。
 あとは,旅です。探せば安い航空券とかツアーとかいっぱいあるじゃないですか。時間があるときに,お金を貯めて海外とかいろいろなところに行ってほしいなと思います。日本の会社で働いていると,日本のスタンダードが当たり前になってくるんです。週5で働いて,長期の休みは年に2回っていう生活が当然で,幸せのあり方も決まってきてしまいます。留学して,日本とは違う価値観に触れていたのに,働いているとそういうことも忘れてしまうんです。なので,時間を使えるうちに,たくさんの世界を見ておいて,自分の今後のキャリアを選択していくうえで,立ち返られるような経験をしてほしいなと思います。

 

― 今後実現したいことを教えてください。

 長期スパンになるかもしれませんが,場所を問わずに自分のやりたいことをやってみたいです。
 私は人生の中で大切にしたいと思っていることがあって,それは時間の使い方と心の在り方を幸せに保っているようにすることなんです。どういう時間の使い方や心の在り方を幸せだと感じるかは人生のフェーズによって違いますけど,常にそういうことを意識しています。今の私は自分の生活したいなと思った場所で生活できることが幸せだと感じています。コロナ禍になって,オンライン化が急速に進んで,2年前にリクルートで営業していた時代では場所を自由に選択して生活することなんてできないと思っていました。今は,それがほぼできそうになっているので,子育てとか自分の将来を考えて,住む場所を決められたり,会社は東京にあるけど,地方で暮らしていたり,自分の描いたライフスタイルに沿った場所で生活しながら,自分のやりたいことを実現したいです。

 

― 最後に学生時代の自分にメッセージを送るとしたら,どんな言葉をかけますか?

 自分のやりたいことにまっすぐ向き合って生きてきたことはちゃんと今に繋がっているよ

 と伝えます。

  大学に入ってすぐはやりたいことを見失っていましたし,起業した当時も苦しいことも多かったです。ですが,やりたいことがいったん分からなくなったからこそ,新しいテーマを見つけようと必死にもがいて,出会ったテーマが今の自分に繋がっています。新卒でリクルートに就職していたら,今の自分になっていない可能性もあります。起業してリクルートに転職したからこそ,今の仕事で自分らしい活躍ができていると思います。
 大学に入ってから見つけたやりたいことに対して,うそをつかずに頑張って取り組んだことは全て今のキャリアに活きています。そのとき決断をしてくれてよかったと思っています。

編集後記 ー自分の居場所を自分で選択する ー
 今回は,起業と2回の転職を経験された青木さんにインタビューしました。転職を自分の居場所を主体的に選ぶことだと捉えていることがとても印象的でした。
社会人になると,働くこと,働く場所が自分のあり方や幸せも左右するのではないかと思います。自分の幸せのあり方を考えながら,積極的に働く場所を選ぶことも人生の中で大切なことなんだと感じました。
次回は,カナダに留学して医療関係の仕事をされているトビタテ生のキャリアを紹介します。

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