とまりぎ とまりぎ ートビタテ生の拠り所、トビタテ生の和を作るー

第234回:とまりぎ東北インタビューVol.1 福島の片隅から人と人をつなげて化学反応を作る!

髙橋和希【とまりぎ東北,大学6期】

髙橋和希【とまりぎ東北,大学6期】

2022.05.20

今回は地元福島の地域人材コースでマレーシア、ベトナムに留学した齋藤詩乃さんです。

留学をきっかけにやりたいことが広がり、現在は福島県塙町にて地域おこし協力隊として活動されている齋藤さん。
とまりぎ東北のコアメンバーでもある齋藤さんが見据えるビジョンなどをお聞きしました。

 

名前:齋藤詩乃
トビタテの期・コース:大学4期,地域人材コース
留学先:マレーシア、ベトナム
留学テーマ:PVDC原料から製品化までの把握と異文化間での仕事の進め方について

 

福島工業高等専門学校在学中に化学メーカーのインターンでマレーシア、ベトナムに留学。
留学するトビタテ生に向け「福島の今」を知ってもらうスタディツアーの企画開催や高校生のチャレンジに伴走する活動に参加。
高専卒業後は地元福島県の化学メーカーで機能性活性炭の生産効率化業務に携わる。現在は福島県の塙町にて地域おこし協力隊として高校生の教育に携わっている。

 

最初は興味のなかった留学。そんな自分を変えるきっかけになったものは?

 

ー今日はよろしくお願いします。色々なお話を聞けるのを楽しみにしています。

こちらこそよろしくお願いします!今私がやっていることを皆さんに伝えられたらと思うのでぜひなんでも聞いてください。

 

ー早速ですが、齋藤さんは高専出身だと聞きました。高専では留学するという選択肢は割とポピュラーなんでしょうか?

私が所属していた化学科ではそうでもなかったですが、福島高専は全国でも珍しく国際系の文系学科があり、高校生のうちから留学したりホームステイしたりする子は多かったですね。

 

ーでは、齋藤さんも留学をしたい想いはずっと持たれていたんですか?

いえ、実は最初は全然持っていなかったんですが、あるきっかけで留学に興味が湧いたんです。

 

ー最初はあまり興味がなかったんですね…。ではその留学しようと思ったきっかけをぜひ教えてください。

結論から言うと、アジア圏の文化に興味があったこと、そして異文化理解を勉強したいと思ったことがきっかけです。

高専は留学生が多くて高校3年生の時にクラスに留学生が来るんです。
私のクラスに来たのはインドネシアから来たムスリムの子だったんですけど、すごく仲良くなって、違う文化に触れるのが楽しいと思いました。

一方で、自分と異なる文化を理解できない人もいて。日本に来て見知らぬ人に差別的なことを言われることが多いというエピソードの印象が強くて、その経験から異文化理解のテーマについて勉強したいと思いを持つようになりました。

 

ーベトナムを留学先に選んだのはなぜだったんでしょうか?

インターン企業の生産拠点の1つがベトナムだったからです。

他の国にもいくつか支社があってそれぞれに日本人の駐在員さんがいたのですが、ベトナムはベトナム人が日本語に合わせるという言語の壁が1番大きいところだということもあり、他の国では体験できない環境に身をおきたいと考えて選択しました。

 

留学、就職を経て訪れた人生の転機とは…

ーなるほど、留学を通して異文化理解と化学を学んで、その後高専を卒業されたんですね。卒業後はどんな企業に就職されたんでしょうか?

トビタテでインターンしていた企業に入りました。

留学した後に自分の中でやりたいことが広がって実際に行動にも移していたので、実はインターン企業にそのまま就職するかどうかは迷いました。
でも高専の同級生たちは大学に編入したり化学メーカーに就職したりしていたので、まったく新しい別の分野に就職する選択が当時の私にはできなかったんです。

自分の専攻が活かせること、運動会の開催や病院の運営など地域で大きな機能を担う企業だったことから、留学後にやっていたやりたいことを満たしつつ専攻を活かして働くことができるのではないかと最終的には考えて、その企業に就職することを決意しました。

 

ーその後、3年でその企業を退職されたと聞きましたが、やはり退職に至るまでには葛藤や紆余曲折があったんでしょうか?

実際に実験や分析ベースで仕事をしていましたが、化学メーカーにはマスターやドクターの人が多くて学歴の壁を感じていたんです。加えて女性であることも壁になっているように感じ、「ここできちんと活躍できるタイミングはあるのかな」といつしか考えるようになりました。

メーカーにずっと在籍していればたしかに安定はあるけど、それを40年間繰り返すのは自分には無理かなと思い、ずっとこの企業にはいないだろうというビジョンが1年目くらいからあって。
将来的なビジョンとのすり合わせがうまくいかなくて、自分の人生の地図的にマイナスの方に行っていると感じたんです。

留学後にやっていたいろんな活動を諦めていたけどそっちの方が向いているんじゃないか、自分はもっと人と関わっているほうがやりがいを持って働けそうだと思い、もうちょっと人に近いお仕事をやろうと決意しました。

 

決意を胸に地域おこし協力隊へ!そして今、齋藤さんが目指すものとは?

 

ーその後退職をされて、今は福島県の塙町で地域おこし協力隊として活動されているんですよね。地域おこし協力隊になろうと思ったきっかけは何だったんですか?

 

自分の経験をもとに意思決定をする場の必要性と、学生が早いタイミングでいろんなことに触れられる場があったらいいなという思いから、地域おこし協力隊として活動することを決めました。

自分の中に「地域の学生の選択肢の幅を広げたい」という気持ちがずっとあったんです。

留学後にいろんな活動をしていたんですけど、そのうちの1つに、地域や自分に目を向ける時間を作ろうという地域の高校生を対象にした活動がありました。

「自分の好きなことはなんだろう」「自分の住んでいる地域の良さはなんだろう」と見つめ直し、自分の好きなことでさらに社会にとってプラスになることをプロジェクトとしてやってみる高校生のサポートをしていました。

早いタイミングで学生のチャンスや選択肢を増やす機会を作ることがすごく大事だと思ったんです。

私は18、19の頃に留学したので就職とか進路を決めるまでの時間が短く、もっと前に留学していたらもっと違う選択ができたんじゃないかという後悔があって。

そういう後悔をなくしたいなという気持ちが芽生えたんです。

 

また、トビタテ生や留学先の人に福島の震災や原発事故について聞かれる機会も多くて、自分の言葉で伝えられるようにならなきゃと思い被災地を回るツアーを企画しました。

ツアーを実施して震災や廃炉作業に関わる人や被災された方の話を聞く中で、自分の目で見て自分で話を聞くという実際の経験をもとに意思決定することがキャリア選択の上でとても大事だと感じました。

 

ーでは、実際に地域おこし協力隊になられて、現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

福島県塙町の高校で、昨年度10月から全10回のワークショップをしました。

学生の選択肢は周りの環境に左右されやすいうえに、企業の名前や給与で就職先を決める子が多いという工業高校の現状に課題意識があって。

その子の経験から意思決定をするという選択ができるようにワークショップを企画し、自己分析をして自分の強みを理解するところから始めました。

 

外に出て「齋藤さんは化学をやっているという特徴があるね」と言われると自分の特色として認識できるんですけど、1つの箱の中に入れられてみんなが化学を勉強していると優劣があって「化学が好きです」と言えないじゃないですか。

それは高校生たちも同じで、「機械に詳しいです」「こういうものづくりができます」と言ってくれる子がすごく少なかったんです。

「それがあなたの強みだし好きなことなんだよ」ということに気づいてもらえるような、自分で言える自信をつけられることがやりたいなと思いました。

また、自分の住んでいる地域に目を向けることが少ないので、町の商店街や社会福祉協議会など困りごとを扱っている人を毎回ワークショップに呼んで町のいいところや課題を高校生たちと一緒に考えました。

その課題を自分の好きなことや持っているスキルで解決したり、町のいいところを自分たちの力でもっとアピールしたりできるようなプロジェクトってなんだろうと考え、イベント企画まで実際にアクションをしてみるということに重きを置いたワークショップでした。

ー実際にワークショップをしてみていかがでしたか?

全部ワンオペだったのでフィードバックをもらう機会が少なく、自分の今やっていることが参加してくれている学生のためになっているかわからなくて大変だし辛かったです。

「何回もやってブラッシュアップするといいよ」というアドバイスをもらうけど、その子たちにとっては1回しかないワークショップなんだという罪悪感があって。

でも生徒のみんなのアンケートを見返すと、毎日携帯を見るのが楽しいと言っていた子が「今までとは違う学校生活の楽しみができた」と書いていて、すごくやってよかったなという思いになり、自分ができるベストを提供するというところで気持ちに折り合いをつけて昨年度のワークショップは終わりました。

 

ー協力隊をやりつつ、この春からとまりぎコアとしてまたトビタテに関わっていますが、何かきっかけはありましたか?

協力隊になったことがきっかけです。

実は会社員だった頃は、トビタテに直接関わることは今後ないかな、関わっていくのはハードルが高いなと思ってたんですけど、協力隊になってからすごい活躍されている方が周りにたくさんいたし、自分ってなんでできないんだろうと思ってすごく悩んだんです。

でも、自分ができないのはやったことないんだから当たり前で、でもそこで放置したらだめだと気づいたんですよね。だったらその分の努力をまだしていないだけだから、その努力を今年はしないといけないなと思ったんです。

とりあえずいろんな人の話を聞いて勉強しようと思って学習PFのマイプロとかトビタテのイベントにちょくちょく行ってみて、ここ(とまりぎ)にたどり着きました。

 

ーとまりぎコアはイベントの運営側だと思うのですが、運営側に来たいと思った理由はありますか?

いろんな人の話が聞けると思ったのと、今までお仕事とかで企画した数が少ないので

企画とか色々お勉強させてもらえそうだなと思ったのが理由です。

自分がチャレンジしていなかったことにチャレンジしてみようと思いました。

 

 

ーとまりぎコアはトビタテ生と何かできる絶好の機会だと思いますが、やってみたいことがあれば教えてください。

まちづくりを通してトビタテ生と一緒に何かできたら面白いのかなと思っていて。

協力隊として塙町の空き家を扱っているのですが、町の子どもたちが町内外のいろんな人と会えるような場づくりをしたいというのがメインの目標なんです。

空き家というコンテンツを通して、自分がかっこいいと思った人を町の高校生たちに会わせたくて。

エヴァ活も含め、学生の幅を広げられるようなイベントができたら最高だなと思っています。

 

ー最後に、齋藤さんにとって最終的にこういうことやりたいな、こういう社会になったらいいなという大きなビジョンはありますか

とりあえず福島でビッグになりたいというビジョンがあります。

自分の好きな人や面白いなと思った人を地域の学生につなげて、そこで化学反応が起こせるような科学者になるのが理想です。

化学っていう言葉を使うと自分のバックグラウンドが生きるので、そういう意味で科学者になりたいなと。

人と人をくっつけて新しい化学反応が起きるような役割を担える、キューピッドみたいな存在になりたいです!

 

 

編集後記

今回のインタビューで特に印象に残ったことは、「自分の経験をもとに意思決定する」です。

留学という齋藤さん自身の経験をもとに、留学後に広がった“やりたいこと”を地域おこし協力隊という形で実現させようという齋藤さんの強い意志を感じました。

次回も東北にゆかりのあるトビタテ生を紹介します。

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