第261回:理系のトビタテ生特集 まとめ記事 第1弾【専門分野を活かして社会問題を解決したい】
2022.09.29
みなさんこんにちは!
大学4期でロシアに留学していたトビタテ事務局インターンの鈴木花穂です!
これまで私は、「理系のトビタテ生国留学」という特集で、理系の学問を学ぶために留学をしたトビタテ生の活躍をご紹介してきました!
そこで、理系分野を専門に学びに海外へ行くことのメリットや、進路状況について、過去に書いたインタビュー記事を元にしばらくお伝えします!
そんな「理系のトビタテ生」特集第1弾の今回は、「専門分野を活かして社会問題を解決したい」という思いを胸に留学へ行ったり、留学で学んだことを活かして社会問題の解決に取り組もうとしたりしているトビタテ生について紹介します!
「社会問題を解決する」というと、ハードルが高く感じるかもしれませんが、理系の分野の高い専門性を身につけることで、社会問題解決のために自分の技術を直接活かすことができることもあります。ここでは、理系の分野を専門に学んで社会問題解決のために活かそうとした人たちのお話を紹介します!
最初に紹介するのは、ドイツでサステナビリティな建築のあり方を学んだ嶋岡さんのお話です。
嶋岡さんの記事:第220回:理系のトビタテ生特集 第21弾 嶋岡千紘さん【サステナビリティな建築のあり方を探す】
留学に行く前の嶋岡さんは、日本における建築物について、このように考えていました。
「建築について勉強する前から、特に、日本では古い建物を壊して新しい建物を造ることが当たり前であると感じていて、どうにかできないかなと、考えていました。」
「それから、建設を行う過程でゴミが出てしまうことも気になっていました。こうしたことを踏まえて、どうしたら地球にも優しく、長く使われ続けられる建築になるのかな、と思ったことが出発点だったと思います。」(以上引用)
環境問題が話題になっている中、ゴミを出さないようにすることについて注目されるようになってきていますよね!嶋岡さんは、このような問題を解決したいという思いを持って、ドイツで持続可能な建築のあり方を学びました。
嶋岡さんは現在、既存の集合住宅を活用するようなお仕事をされているそうです。
「古い建物を使い続けたり、リニューアルしたりしてまちづくりを考えるという点で役に立っていると思っています。現在携わっている仕事では、既存の集合住宅の活用を考えています。」(以上引用)
留学で学んだ知識を活かしながら、それも社会問題とも関係のあるお仕事ができるのは素敵ですよね!
次に紹介するのは、アフリカで野生動物について研究した安家さんのお話です。
安家(あけ)さんの記事:第202回:理系のトビタテ生特集 第14弾安家叶子さん【リカオンの研究】
帰国後の安家さんは、このようにお話しました。
「現在も、研究以外に、動物や自然科学と社会をつなぐ何かをできないかと、環境保全系の活動をしているNGOで働いています。」
「将来は、アカデミックな道に進むか進まないかで悩んではいますが、間接的にでも、種の保全には関わりたいです。最終的には、リカオンだけでなく、哺乳類、動物、生物など、あらゆる種の保全に関われるような人材になりたいです。」(以上引用)
種の保全については、SDGsの「陸の豊かさも守ろう」にも繋がりますね。
参考:経済産業省「SDGs」https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/sdgs/index.html
自分の専門分野を研究によって極めることによって、アカデミックな世界で活躍する以外にも様々な道を検討することができるようになるのは素敵ですよね!
次に紹介するのは、伏谷さんのお話です。
伏谷(ふしたに)さんの記事:第193回:理系のトビタテ生特集 第10弾伏谷侑桂さん【ハーブ入りの減塩和食を開発する】
ハーブを使った減塩食というテーマを思いついたきっかけについて
「大学時代の病院実習で患者さんに出される食事を見たときに、減塩や殺菌などにこだわるあまり、正直あまりおいしそうだと思えませんでした。」
「それから、和食に健康的なイメージを持つ人も多いのですが、実は和食の塩分は高いんです。そこから、ただ塩を減らすのではなく、ハーブを入れて楽しみながら減塩に取り組み、健康な体を保つことができたらいいな、と思い、このテーマを選びました。」(以上引用)
伏谷さんは、大学での実習や和食と言う身近なテーマから問題意識を持つようになったのですね。ハーブを使って楽しく健康になろうというテーマは、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」という目標とも通じる考え方だと思います。
参考:経済産業省「SDGs」
https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/sdgs/index.html
留学後の伏谷さんは、このように考えるようになりました。
「私は留学を通じて、ヨーロッパではスポーツを楽しむ習慣が身近な人が多いように感じられて、いいなあと思いました。」「スポーツをしている人やスポーツが好きな人が、常にスポーツを生活の中に取り入れて過ごせたら、人はずっと健康でいられるのではないかと考えるようになりました。予防医学の分野に興味があったので、スポーツと食や栄養の分野をかけ合わせることにビビッときたんです!」(以上引用)
日常生活にスポーツを取り入れることで健康でいられるようにという願いも、SDGsの目標のうち「すべての人に健康と福祉を」という目標に繋がりそうですね。留学で学んだ専門分野はもちろん、これまで学んできたことや興味があることをいくつか組み合わせながら自分なりの問題解決策を導き出そうとするのは良いアイデアですね!
次に紹介するのは坪井さんの記事です。
坪井さんの記事:第192回:理系のトビタテ生特集 第9弾坪井亜里沙さん【アマゾン河の微生物で世界を救う?!】
専門分野である微生物に関心を抱く前の心境について、坪井さんはこのようにお話しました。
「私の出身は福島県で、ちょうど3.11が起きたときに高校を卒業しました。元々生物分野には興味があったのですが、原発事故による地元の風評被害や、放射性物質の話を聞くにつれて、生物の力を使って放射能を取り除く研究がしたいと思うようになりました。」
(以上引用)
坪井さんは、自分の出身地で大きな災害が起きたことをきっかけに問題意識が生まれたのですね。
専門とする微生物についてブラジルで学んだ後、坪井さんはこう考えるようになったそうです。
「私は、昔から自然との共生や共存に興味がありました。アマゾンでの実験では、船の上で実験、解析を行いました。その船では、衣食住ができる設備があったのですが、船の上で排せつをしたり生ゴミを流したりすると、排せつ物やゴミを魚が食べる様子を見ることができて、自然の循環システムが見える状態になっていました。」
「一方、現代社会では、このシステムがほとんど見えない状態になっているな、と思いました。
このような経験を通じて、私は教育や体験を通じて自然の循環の仕組みなど、自然との共生について次の世代について知ってほしいと思うようになりました。」(以上引用)
坪井さんは、留学に行ったことで新たな課題を見い出したのですね。自然の循環システムが現在では分かりにくくなっているという課題を解決するために、インタビュー当時の坪井さんは、自然との共生について子どもたちに伝える活動をしているそうです。
次に紹介するのは、松尾さんのお話です。
松尾さんの記事:第218回:理系のトビタテ生特集 第20弾松尾智成さん【全球レベルでの二次林形成メカニズムの解明と応用】
松尾さんは、専門分野である森林に興味を持ったきっかけについて、このようにお話ししました。
「私は、埼玉県の飯能市生まれで、森林が身近だったこともあり、純粋に森や自然に興味がありました。大学では農学部の森林科学科に進学しました。4回生の時に研究室に所属し、指導教官の元、森林生態学の研究にのめりこんでいきました。具体的には、森林破壊後に森林がどのようなプロセスを経て回復していくのか、またそのプロセスがどのような要因によって決定されているのかについての研究です。」(以上引用)
自分の故郷を巡る事情をきっかけに現在の専門分野に興味を持った点については、坪井さんのお話と通ずるものがあります。森林回復のプロセスを学ぶことについては、SDGsの15番目の目標である「陸の豊かさも守ろう」とも共通する専門分野ですね。
参考:経済産業省「SDGs」
https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/sdgs/index.html
留学後の活動について質問すると、松尾さんはこのようにお話しました。
「帰国直前に、Wageningen大学の教授がEUの熱帯林研究に関する大規模プロジェクトを始めることを知りました。」(以上引用)
こちらのプロジェクトに合格した松尾さんは、現在もオランダで研究を続けられています。
将来の夢について、松尾さんはこのようにお話ししました。
「気候変動や森林破壊などの環境問題の解決に、アカデミックな観点から貢献したいです。」(以上引用)
アカデミックな世界で自分が極めた専門分野を気候変動や環境問題という大きな問題に直接携わりやすいのは理系の学問ならではですね!
最後に紹介するのは、後藤さんのお話です。
後藤さんの記事:第204回:理系のトビタテ生特集 第15弾後藤正太郎さん【水と衛生 ~清潔な水へのアクセス~】
「水と衛生」という専門分野に関心を持つようになったきっかけについて、後藤さんはこのようにお話ししました。
「私は大学3年生の時に発展途上国を訪問したのですが、その時にお腹を壊してしまいました。他の人と一緒に行ったこともあり、恥ずかしい思いもしました。
帰国後に「途上国 下痢」で調べてみたところ、発展途上国では多くの子どもが亡くなっていて、水が主要な原因であることが分かりました。そこで水に興味を持ち、学部4年生の研究室配属で水が専門の研究室を希望し、大学院では途上国の水と衛生が専門の研究室に進学しました。当時、将来は学校の先生になって、子どもの成長を見ていきたいと思っていた自分にとっては水が子供の命を奪うことが衝撃でした。」(以上引用)
後藤さんは、発展途上国での経験がきっかけで、元々学校の先生を目指していたということもあり、自分にとって身近な「子どもの命」と関係がある「水と衛生」というテーマにたどり着いたのですね。
ちなみに、「安全な水とトイレを世界中に」というのはSDGsの6つめの目標にもなっています。
参考:経済産業省「SDGs」
https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/sdgs/index.html
バングラディシュで留学した後の活動について、後藤さんは次のようにお話ししました。
「(前略)社会人として水に関わる仕事に携わり6年目です。仕事以外にも、学会で発表したり、国際会議で若手を代表して登壇したり、国内の若手の水分野の集まりの運営委員をしたりしました。他にも、水に関するボランティア活動にも取組みました。」
「今はロンドンの大学院で研究しながら、フリーランスとして水衛生の案件にも関わっています。」
「ある発展途上国の都市を対象とした、衛生改善に関する仕事をしています。例えば、日本の都市のように人口が密集している場所であれば大きい下水道を作った方が良いですが、発展途上国では下水道を作るのが正解とは限りません。現在は、現地でどのように汚水を処理するのが良いか、検討中です。」(以上引用)
後藤さんは今でも専門である「水と衛生」という分野についてこつこつと学び続け、自分の知識を活かしながら色々な方向から「水と衛生」の問題の解決に直接携わり続けているのですね!
まとめ
どの人も自分にとって身近な課題から問題意識を持ち、専門分野を磨こうと考えたことが分かりました。問題意識を持つことは誰にでもできますが、その上で専門分野を身につけて自分が解決の現場に直接参加することはなかなかできないことだと思います。今後も、こちらで紹介したトビタテ生の活躍が気になりますね!
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