第78回:トビタテ!アフリカ留学特集!第4弾:角田弥央さん【薬学生がアフリカで起業? 私が今、挑戦したいこと】
こんにちは!トビタテ8期の吉田です!
トビタテ!アフリカ留学特集 第4弾は「世界で必要とされる医療者に!」のテーマで、イギリスとエジプト🇪🇬に留学していた角田弥央さん(理系、複合・融合系人材コース・7期)です!
角田さんは大学卒業後、人材系会社に就職し、今年1月に退職。
そして先月、タンザニア🇹🇿でスタートアップの立ち上げをされました。
「アフリカで経済的自立のための雇用創出に取り組みたい」という思いが絶やせなくて、現地に寄り添ったビジネスモデルを作っていきたいと思った。
薬学生であった角田さんがなぜ雇用創出に起業家として取り組むのでしょうか?
留学をきっかけに、本当にやりたいことに気づき、タンザニアで自らの道を切り開いていった角田さんのお話をお聞きします!
目次
エジプトで気づいた本当に自分が"やりたいこと"
吉田)トビタテ生では初めてエジプトに留学したと聞きました!日本人にとってまだあまりメジャーな留学先ではない中、エジプトを選んだ理由は?
角田)インドネシアを初めとする、東南アジア諸国でバックパックをしていた時に、初めて足を運んだ発展途上国の現状に衝撃を受けたんだよね。日本では「風邪をひいたら病院に行こう」と思えば比較的簡単にアクセスできるのだけど、少し都市部を離れると当たり前のように病院や診療所にアクセスできない人口層も多くって、公衆衛生や医療アクセス等他にも多くの課題とともに、“日本にはない可能性を秘めている途上国の視点から医療を見てみたい"と思って。大学では「海外と日本における後発医薬品の評価の違い」をテーマに、インターンシップ・研究をしていたんだけど、後発医薬品の開発を実際に行っている発展途上国はどこかな?って調べた時にヒットしたのがたまたまエジプトだったの!
吉田)なるほど!現地ではどのようなことをされたのですか?
角田)エジプトの現地の製薬会社でインターンシップをして、朝から夜まで後発医薬品の開発に携わってたよ。イスラーム教が多数を占める国だから、宗教上使えない成分(例えば豚の油)を含まないようにしていたり、日本と医薬品の取り扱い方の違いや多岐にわたる業務をする薬剤師の働き方も間近で感じたな。
吉田)やはり印象的だったのは医療における日本との違いでしたか?
角田)それも一つだね。もともとエジプトを訪れる前は、ヨーロッパやアジアの医療施設の視察はしていたけれど、私にとってエジプトの医療概念を知った経験は大きな転機になったし、「薬剤師の働き方」や「自然治癒療法」について日本との違いに騒然としたの。日本では規制やシステムがしっかりしている分、働き方がある程度限られていて。それと、欧米型医療を中心に医療システムが動いてしまっているのと、本来薬剤師がするべき業務がなされていないし、大学で学んだ基礎知識から得られる医療の本質が十分生かされていないなって感じて…
吉田)例えばどんなことですか?
角田)「働き方」という視点だと、エジプトでは日本と比べて薬剤師自体の母数が少なく、かつ、必要とされている地域に医薬品を供給する役割を果たすべく薬剤師が不足している現状があるから、その地域市民から頼られ慕われる存在としてみんなから「先生」って親しみ深く呼ばれているの。交通事故に巻き込まれた怪我人が薬局に来たら手当をするし、コンビニみたいな感覚でフラっと立ち寄って食事の相談をしたり、薬剤師の日本との立ち位置の差に驚いたな!
吉田)日本の薬局とは全然違いますね(笑)
角田)でしょ?(笑)「自然治癒」の観点だと、日本でいう漢方みたいな伝統医療の存在感が大きくて、古代文明の歴史を忠実に再現するようなエビデンスに基づいた医療行為もあったりして、「医療ってなんのためにあるんだろう?」って、原点に立ち返って本質を追及していく医療のあり方もあって良いって思ったし、現代医療について改めて考えさせられたかな。
吉田)文化に根付いた多様で柔軟なやり方があるんですね〜!
角田)そうなんだよね。エジプトはまだルールが日本のように厳しくない分、医療行為の幅が曖昧で、柔軟に患者さんへの対応ができるし、文明の背景上死が身近にあるからこそ、薬剤師における彼らの職能の幅の広さには驚かされたな。留学前は「日本の医療は先進的だけど変な違和感がある」って感じてたし、「医療って世界全体ではこういうもの」っていう価値観の上で医療を見ていたけれど、エジプトに来てからはその前提がそもそも違うって確信した。そこから発展途上国、特にアフリカ諸国にどんどん関心を持つようになったな。
吉田)日本も他国から学び、双方の良さを融合していけたらいいですよね。大学卒業後は人材会社に就職されたそうですが、やはりエジプトでの出来事が印象的だったからですか?
角田)うん、今までは「日本と世界の医療業界の違い」という大枠で考えていたんだけど、「その国独自の文化、歴史、宗教、国民性みたいな人間の根本的な概念が深く絡んで違いが生まれるんだな」って気づけたし、薬剤師の職能の幅を広げたり、「働き方にこんなに差が出るのはどうしてだろう」って考えを巡らせていたら「あ、私は人間の可能性を広げることに興味があって、職能に関して考えていきたいんだ」ってその時は思って(笑)薬剤師という医療者の道はを捨てて、社会勉強も含めて、卒業後は人材系の民間会社に就職したの!留学テーマと全然変わっちゃったけど、留学したおかげで自分のやりたいことの根本を見つけることができてよかったな。
吉田)なるほど、そういう経緯だったんですね!会社ではどんなことを?
角田)日本で働きたい外国人の雇用の創出と、職能的なミスマッチを失くしたり、国民性の理解を広めるために、日系企業に外国人人材を紹介する人材派遣に携わっていて、日系企業さんや候補者のマッチングが成功した時のやり甲斐は大きかったし没頭できる仕事だったな〜。でも留学で魅了されたアフリカへの想いはやっぱり強くて…
吉田)通称アフリカシック。私も陥りました(笑)
角田)だよね(笑)結局エジプトから帰国して就活を終えたあと、東アフリカのタンザニアにインターンでいくことになりました。このインターンを転機に、社会人経験を活かして支援という形ではなくビジネスを手段に「経済的自立をこれからしていきたい人々のための雇用創出に携わりたい」っていう思いを入社後も絶やせなくなってしまい… 今年1月に勤め先を退職して、インターンで行ったタンザニアの現地の友人とその仲間とスタートアップを立ち上げることにしたの!
タンザニアでの新たな挑戦🇹🇿
吉田)タンザニアのインターンではどのようなことを?
角田)短期間だったんだけど、現地の友人が働いている国営貿易会社でお手伝いさせてもらって、雇用・産業・働き方の視点を持ちながら新規事業開発と市場調査に携わらせてもらったよ。インフラ設備の一環として、下水設備の衛生環境の調査や中国系企業との貿易業務補佐をしていたんだけど、現地の汚染状況の深刻さは社会問題である一方で、ビジネスチャンスでもあり、自分の学んだ来た医療や薬学の視点を活かせるアプローチだなって気づいたな。
吉田)なるほど!それがスタートアップの事業アイディアの1つになったとか?
角田)そう!具体的には道に落ちてるごみや糞尿を集めて、バイオマス(動植物から生まれた再利用可能な有機性の資源)に変えるビジネスアイディアで、衛生環境や未病の概念にも繋がるし、持続可能性もあるなと思って。でもそれはあくまでいくつかある事業の1つで、他にも人材紹介をやったり、日系企業と現地のニーズを繋げたり、「雇用の創出」の視点から様々な分野で関わりたいなと思ってるよ!
吉田)角田さんが国際協力などの支援ではなく「ビジネス」にこだわる理由はありますか?
角田)現地の人が「明日を生きるためではなく、長期的な経済的自立ができる」ように、また「日本がアフリカを支援するのではなく、アフリカと日本がビジネスパートナーとして歩んでいける」ことを体現したいっていう思いが強いからかな。単に大きなお金になるビジネスではなく、コミュニティ単位のニッチな領域で大手企業がやらないことも考えているから、現地の友達とタッグを組んでスタートアップをすることは私にとってものすごく意味のあること。現地のニーズに合わせて、コミュニティの人々に寄り添ったビジネスモデルを彼女とその仲間と共に作り上げていきたいと思っているよ。
写真:日本での留学時代からの友人・タンザニアのパートナー
写真:タンザニアのインターン先の仲間と
吉田)素晴らしいです!今年3月から事業を開始するということですが、これから起業家としてタンザニアを拠点に働く上で目標はありますか?
角田)大きな目標としてはタンザニアのみならず、他のアフリカ諸国で「1千万人くらいの雇用を生み出したい」けれど、まずはスモールスケールで小さく着実に事業を進めていきたいな。現地の人々が、「環境に左右されないで自分がやりたいことを実現し、一人一人の可能性が潰されず、多様な選択肢の中で充実度の高い働き方」を実現したいと思っている!
吉田)やはり人々の可能性を最大限発揮する働き方に興味があり、そこになんとも言えないパッションがあることが伝わってきます!
角田)これからの変動していく時代、働き方は変われども「働く」ことはなくならないと思っていて、「経済的自立を実現して初めて一人一人の生活水準が向上」してくだろうし、人口がますます増加傾向にあるアフリカ諸国の人々に教育が提供されていくためにも、その前に「働き先」が与えられるように中間層からの変革をしていきたいな。
吉田)現地の雇用創出に現地の人々とビジネスパートナーとして共にタッグを組んでいく。すごく素敵な国際”協力”のあり方だなと思います。最後に、弥央さんがアフリカに魅了されるポイントを教えてください🤔
角田)そうだな〜、アフリカに行くたびに私は東京生まれ・東京育ちで生まれた自分の置かれた環境について考えさせられるの。ものが溢れているはずなのに、どこか生きる上で物足りなさを感じていて、それに対してアフリカに生きる人々は、時には自分とは真反対な生活をしている人もいる中で“生きるエネルギー"に溢れている人が多くって。
吉田)分かります。
角田)もしかしたら私のこれからやる事業って、彼らの生活や生きているエネルギーのバランスを崩すことになるだろうし、ある意味私のやろうとしてることってエゴだなって思ってる。それでも、目の前に困っていて、手を差し伸べている人たちがいるのであれば助けたい。今は困っていなくても、いつか彼ら自身に力を貸せるように動いておく。それくらいシンプルで良いのかなって思わせてくれるの!そういうシンプルで緩い考えも受け入れてくれるのがアフリカ!あとはバイブスが自分の性格に合う(笑)
吉田)角田さんの本気は決してエゴではないし、現地の方々は「解決に貢献したい」という思いだけで嬉しいんじゃないかなって思います。角田さんみたいにアフリカに挑戦していく日本人がどんどん増えていけたらいいですよね!まだまだ物理的・精神的な距離がありますが…
角田)ありがとう!そうだね。大変なことの方が多いと思うけど、自分の道を切り開いていく新たな挑戦にワクワクしてます!
吉田)応援しています!本日はありがとうございました。パッション溢れるお話をたくさんを聞けてよかったです。
角田)こちらこそありがとう!タンザニア遊びに来てね!
編集後記
おしとやかなオーラがありつつも、内に秘める情熱と行動力、溢れるエネルギーを兼ね備えた角田さん。
留学をきっかけに次のステップに進み、挑戦・活躍していく姿がとっても格好良かったです😊
*トビタテ!アフリカ留学特集は最終回・第5弾は3月20日更新予定!
次のトビタテ生の留学先はどこでしょうか?乞うご期待です。
(ヒント:この国旗デザインで🇳🇦🇧🇼 南部アフリカにある国々)