第6回:大嶋由希子さん(1期・世界トップレベル大学等コース)

2021年10月26日

皆様、こんにちは。トビタテ留学JAPAN1期生の齋藤です!トビタテ生の同窓会組織である「とまりぎ」のHPにて、インタビューを通じたOB・OGの活躍を紹介しています。

第6回目は、大手日系メーカー人事(インタビュー当時)として働かれている大嶋さんです。大嶋さんはカリフォルニア大学デイビス校に留学し心理学を専攻されました。大嶋さんには、留学内容と歩んできたキャリア、これからについて質問してみました。

齋藤)大嶋さん、お久しぶりです。トビタテの同窓会以来ですね。わざわざランチの時間をインタビューに割いてくれてありがとう!

大嶋)久しぶり!こちらこそ、今回はインタビューに呼んでくれてありがとう。

写真:人事として活躍する大嶋さん

齋藤)今日は30分という短い間だけど、簡単に留学内容、今までの業務内容、留学とキャリアの関係について、教えていただければと。

留学内容

齋藤)簡単に留学内容とそれに至った背景について教えてくれるかな。まずはどちらのコースで留学したの?

大嶋)所属大学の交換留学の制度を使い、カリフォルニア大学デービス校に留学しました。トビタテには、世界トップレベル等大学コースで採用されました。

海外の大学で学ぶことに興味を持ったきっかけは、日英の通訳士として働いていた祖父の姿を見て、「自分も英語を話せるようになったらかっこいいな」と憧れたこと、国際高校で学んだ環境が後押しし、高校2年生のときに初めて親元を離れてカリフォルニアで短期留学(ホームステイ)を経験したことが特に影響を与えていると思っています。

短期留学をした際には、特に同世代のコミュニケーションスタイルが印象に残っていて、例えば、仲の良い友達同士で意見が違ったとき、それぞれが自分の思いをきちんと伝え、お互いを尊重し合おうとしているのを見て 「いいな」と思ったことをよく覚えています。

私はもともと人に流されやすく、八方美人で、自分を抑えるところがあったのですが、自分の考えを伝えながら深まっていく友達関係を目のあたりにしてからというもの、自分の考えも大切にしようと思い、少しずつ 「"自分"は何が好きで、どうしたいのか」を考えるようになっていきました。

齋藤)なるほど、そうすると高校時代の留学が一つ人生のターニングポイントだったんだね。ところで、トビタテでの留学内容はどういったものだったの?


大嶋)実のところ、留学目的に関しては考え出すのにかなり苦労したんだよね。留学するならちゃんと目的を持ちたいと思っていたんだけど、「これを学びたい!」 という学問にはなかなか出合えませんでした。3年生になってから、ゼミで 「言語習得にあたって習熟度合いに差が出てくるのはどうしてか」といったモチベーションや適性と行動の関わりを勉強するようになり、それがとても面白かったことから 「これだ!」 と思い、心理学を勉強しようと決めました。


齋藤)留学内容を決めるのは大変だよね。ちなみに心理学を専攻する上で、どうしてカリフォルニア大学デイビス校を選択したの?


大嶋) まず学術的にも心理学で有名な学校というのが一つ。高校時代から北カリフォルニア周辺を見てきたのですが、市内の治安が良いという印象もあり、留学先としてここに決めました。


齋藤)とはいえ心理学といっても幅広い分野があると思うんだけれど、具体的にはどういう授業を取っていたの?


大嶋)所属大学での学びの延長線として言語心理学を勉強し、加えて社会心理学の授業を中心に取りました。社会心理学では、例えばあるグループをAとBの二つに分けて、グループの関係性を探るケーススタディーを扱いました。

興味深かったのは、何の基準もなくグループ分けをしたのにグループ間で対立が生まれるということ。その他にも、「人はどのように心を動かされて行動を取るか」や「意思決定はどのように行われるか」を学べたのは良い経験でした。

写真:留学時代の写真

齋藤)そういった学びは、キャリア選択にどういった影響を与えたの?

大嶋)実は大学時代に教員免許を取得していて教員になるといった可能性もあったんだけど、留学を経てグローバルな舞台で働くことに興味を持ったこと、また学んだことを生徒だけでなくてもっと幅広く多くの人に共有していきたいと思ったことから、企業で働くことにしました。

写真:心理学の授業で仲良くなったクラスメイトからもらった絵

もともと興味があった日本発祥のグローバルメーカーで、心理学の学びを活かすことができ、人に元気を与えられるような仕事を軸に就職活動をしているうちに、人事として働きたいと思うようになりました。

歩んできたキャリアとこれから

齋藤)そういった背景で人事部を志望し、無事メーカーへの人事部配属が決定したと。1−3年目はどういったキャリアを歩んでいったの?

大嶋)まず3年間の中で1年ごとに業務内容が変わっていったというのは特徴的だと思うなぁ。1年目は人材開発を担当し、社内に多くのリーダーを育成するため、リーダー育成プログラムに関わりました。

印象的だったのはELT(Executive Leadership Training) で、次世代リーダーを育成するため、全国から集まった将来の幹部候補達に、帯広の大草原で自分の「軸」についてかなり真剣に考えてもらったり、「どんなリ-ダ-になりたいか」を表明する姿を見る機会があったのですが、すでに数々の試練をかいくぐってきた幹部候補生であっても、研修が与える刺激によって、目の色が変わっていくのを見たときのことが今でも記憶に焼き付いています。

1年目の途中から、海外地域の人事を統括されている女性役員の秘書を担当し、経営の考え方や意思決定のスピード感を身近で感じられたことも貴重な経験でした。

齋藤)新人のときから良い経験をしているね!

大嶋)ただ、2年目が実は一番の試練だったんです!2年目はグローバル人事(本社として海外役員の報酬を設計したり、海外グループ会社に共通に敷くルールをつくることがミッション) を担当することになり、スペイン人の方が上司になりました。

そして、全世界のグループ会社80社を対象に、前例のない、グローバル保険の導入プロジェクトを担当することに。

齋藤)うわぁ、大変そうだね。

大嶋)しかも、企画の超初期段階で、このスペイン人の上司が退職してしまったの・・・・。

齋藤)それは大変だったね。ちなみにこのプロジェクトの発案はスペイン人上司のさらに上司の人というわけではなく?

大嶋)いや、そういうわけではなくて、元々前職での経験があったその上司のアイデアだったんだよね。もちろん新しい上司に来ていただいたけど、前例のない仕事なのに発案者がいなくなったのは正直かなり大変だった。

海外の人事責任者をはじめ、経理や法務など色々な部署に説明して納得してもらう必要があるとても大がかりでプレッシャーのかかる仕事でした。

齋藤)聞いているだけで、パニックになりそうだね。

大嶋)それでもめげずに、運用までの期間もわずか8ヶ月という中、「これは私の仕事だ!」くらい思いながら、何とかやりました。

とにかく分からないことだらけだし、ハプニングもたくさんあったけど、シンガポールに出張して海外の人事責任者に承認をもらいに行ったり、とにかくいろんな人を巻き込みながら、グローバルに仕事をすることが楽しくて仕方なかった。

そして、英語でコミュニケーションを取れるのは、仕事のチャンスを掴んだり、スピーディーに仕事をすすめるうえで、かなりのアドバンテージになると実感しました。

齋藤)商社とかは英語を話せる人が多いんだけれども、日系メーカーでは貴重な存在になってくるのかもしれないね。

大嶋)3年目のハイライトは、グローバルの人事責任者を集めてグローバルHRミーティングを開催し、ずっとやりたかった、グローバルの各地域の人事責任者によるパネルディスカッションを企画・実行したこと。

普段は特に海外に接点のない中堅~若手人事社員に、日本もグローバルに含まれていて、私たちはグローバル企業の一員として働いてるということを、願わくば実感してもらいたいと思いました。そして今は、タイとアメリカに行く駐在員のサポーターとして、ビザ手配から税務申告、給与などを担当しています。

齋藤)ただ、その3年を経てこれから転職といった新たなチャレンジに挑むんだよね?

大嶋)そうそう。尊敬するリーダーのもと、人材育成の領域で新たな挑戦をしてみることにしました。転職はこれまでの人生で最も難しい選択だったように思います。

いつか、目の前の人を元気にしたり、その人がその人自身の可能性を信じて一歩踏み出そうとするきっかけを与えられるような存在になりたい、と思っていて、もしかしたら転職をすることで、その自分に近づくヒントを得られるのではないかと考えて、思い切って決断しました。

写真:グローバル人事会議でのファシリテーションの様子

留学とキャリア

齋藤)今までの話を振り返ると留学時代に心理学を専攻したことが、人事や人材開発といった業務内容を選ぶきっかけになってそうだね。

大嶋)そうだね。留学時代に社会心理学を学んだことをきっかけに、それまで自分がなんとなく好きだと思っていたこと・得意だと思っていたことがアカデミックな世界でどのように表現されているのかを知りました。今も勉強を続けていますが、学んだ理論を実践しながら、少しずつ、なりたい自分に近づいていけたらいいなと思っています。                                             

齋藤)最後に留学に悩んでいる高校生や大学生に向けてメッセージは何かあるかな?

大嶋)私が心から尊敬し憧れる人事の大先輩が、ある’二択’で悩む私に対して、「選択は、どれを選ぶかではなく、どれを選んでもどうやって正解にするかだと思うよ」 とアドバイスをしてくださり、その言葉に背中を押してもらったことを思い出しました。

留学をするかどうかは、人によっては大きな選択になるのだろうと思います。自分の意思をもって、納得感のある選択ができると良いですね。応援しています!辛い経験・苦い思い出も含めて留学の価値をプライスレスだと感じている立場としては、ぜひ、一人でも多くの高校生・大学生に留学に挑戦してほしいなと思います。

齋藤)良いメッセージだね!今日はお忙しいところ、ありがとうございました!

編集後記

大嶋さんの留学背景を聞くといかに高校時代の留学が大事だったかを感じます。特に内向きな自分からオープンな自分に変わっていったという性格の変化やもう一度海外へ行きたいと思うのは、留学成果の一つと言えるのではないでしょうか。

また、人事部に興味を持ったのも、トビタテでの留学で自分と向き合い、何に興味を持っているのかといった自己分析がしっかりできたからこそだと思いました。転職をし新たな領域に挑む大嶋さん。トビタテの同期として、心の底から応援していきたいと思います。