2020年6月19日 2021年8月30日
こんにちは!トビタテ8期・事務局インターンの吉田梨乃です。
先週より再開した「トビタテ!アフリカ留学特集!」ですが、 第7弾の今回は「ファッション×平和学」 をテーマにルワンダ🇷🇼へ留学した高橋菫さん(9期・新興国コース) です!
留学中、独自のアフリカ布の靴ブランド「Inkweto」を立ち上げ、 トビタテ生が留学するアフリカ9カ国を訪れるなど、 高い志を持ちながらアクティブに活動し続ける高橋さん。
今日はそんな高橋さんの素顔にロングインタビューで迫ります!
内戦乗り越え平和築いた国・ルワンダとの出会い
早速聞いちゃいますが、ルワンダを留学先に決めたきっかけは何だったの?
ルワンダを知ったきっかけは、高校3年生の頃に映画『ホテル・ルワンダ』を観たことから。
1994年に起きたルワンダ大虐殺をノンフィクションで描いた映画だよね。
そうそう。そこからルワンダという国を「内戦経験国」というイメージを持って気になってネットで調べてたら「ルワンダはアフリカの中でもトップレベルに治安がいい国」っていう結果が出てきて、騒然としたんだ。なぜ虐殺という悲惨な歴史を乗り越えて、たった20数年で復興を遂げ、平和を築いていったんだろう?って単純に疑問に思って…
なるほどね。それでルワンダで平和学について学びに行こうと思ったの?
映画『ホテル・ルワンダ』を見終わった時から「ルワンダにいつか絶対いくぞ」って決めていたけれど、でもいざ大学に入って留学を意識し始めた時に、せっかくだしこの際ずっと行きたかったルワンダに留学できないかなと思って!
うん! 留学前はアフリカに対して先入観だらけで未知で謎めいてて、何も知らなくて…「アフリカってそもそも大学あるの?」と調べたら日本人が教授を務めているPIASS(プロテスタント人文・社会科学大学)が出てきて!そこにある平和紛争研究科で私費留学することに決めたんだ。
なるほどね!留学テーマの「ファッション×平和学」って面白いね。なんでファッションを組み合わせたの?
平和構築ってアプローチの仕方があると思うんだけど、多く用いられている心のケア、つまり精神的アプローチに加えて、私は「経済的」アプローチに関心があって。ビジネスを通して内戦経験者が生き甲斐や自尊心を取り戻すきっかけになるし、人々の経済的自立は国が平和を築く上で欠かせないと思っていて。
確かに、働きがい=生き甲斐に繋がるしそれも心のケアに繋がるのかも。どういうビジネスに携わってたの?
ルワンダにはキテンゲ(アフリカ布)っていう柄物のすごく可愛いアフリカ布があるんだけど、お客さんが好きな布を選んで採寸して、現地のディーラーが服を作るっていうソーシャルビジネスの企業で大学に通いながらインターンしてたよ!
ルワンダにはこんなにも可愛い柄の布たちが!
いざ、アフリカの地・ルワンダへ。
うん、本当に幅広いアフリカ各国から学生が集まっていたよ!アフリカに馴染みない人はあんまりピンとこないかもしれないけれど、ブルンジ、コンゴ、ウガンダ、南スーダンとか、もはや小さなアフリカ大陸ができてた(笑)日本人も少ないし、人生でこんなにマイノリティになったことはなかったな。
写真:1年間学びを共にしたアフリカ各国からきた学生達
バッググラウンドが全然違う同世代と学びの場を共有できるのは刺激的だね。ましてや非日常のルワンダという国で!
日本に住んでると、自分がマイノリティでなる実感は少なくて。それに比べてルワンダは本当に非日常すぎた(笑)宗教色も各国で異なるし、育った環境によって考え方や価値観が全然違ったり、そういう意見の相違も興味深かったな。
写真:仲良くしていたクラスメイトと
経済的格差が生んでしまった軋轢
私はルワンダ人の家にホームステイしてたの!大学では英語を使っていたけど、家ではケニャルワンダ語という現地の言葉でコミュニケーションをとっていたよ。ルワンダならではの雰囲気や日本と変わらない家庭の温かさも感じられてとてもいい経験になったなあ。写真はホストファミリーのセンティアちゃん!
センティアは基本ルワンダ語しか話せないから、どうやってコミュニケーションをとるか初めは悩んだ。でもそんなの全く関係なかった!私の適当なルワンダ語とセンティアの幼いルワンダ語はとても相性がよかったんだよね。しかも、センティアはとても賢い子で、よく日本語を真似するの。
ひとり遊びしてるときに、お母さんの携帯電話を耳に当てながら「もしも~し、すみれちゃ~ん?」と言っていたのを目撃したときには爆笑してしまった。他にもアルプス一万尺・お寺の和尚さんなど日本語で童謡も歌えるよ!さすが、アフリカと思ったね。(アフリカは多民族国家が多いために何か国語も話せる人が多いから!)
すごすぎる!それだけ聞きにルワンダ行きたい(笑)逆に大変なことはあった?
ある時、センティアが母親に向かって「私はあなたの子どもじゃない。私は黒いあなたが嫌いよ。私は外国人(白人)なの!」と言った時に「あぁ、美しいセンティア、自分の肌の美しさも知らないのか」と思うと同時に、自分の存在が彼女たちの家に悪い影響を与えてしまったのではないかと考え悩んだな…
センティアにその発言がなぜダメなのかをルワンダ語で伝えきれなくて、悔しかった。彼女のそういう考えは何によってつくられたのか?自分の経済的優位がそれをつくってしまったのだろうか…?と悩んで、自分の弱さや世界の不条理を見せつけられた気がしたな。
現地の人と近い距離で関わった分、経済的な差による軋轢が生まれることもあったんだね。
やっぱり、アフリカに折角来たからには「アフリカの布で服を沢山つくりた~い!」って気持ちがあったの。でも、沢山つくって毎日お洒落に着こなしていたつもりだけど、現地の人にとってアフリカ布は高級品で…悪意の有無にかかわらず “Ufite Amafaranga”(ルワンダ語:あなた沢山お金持ってるわねの意)と言われたときは、とても複雑な気持ちだったなぁ。スマホやカメラを使う時も「どう思われてるかな」と思うようになった…
トビタテ生の支え
実はトビタテ生の梅津知花ちゃん(9期・多様性人材コース)とも同じお宅で同居してたの!トビタテ生同士で同じ留学先に行って、同居もしていたのは世界でもしかしたら私たちだけだったんじゃないのかな?(笑)
写真:トビタテ生(梅津 知花さん)とホストファミリー
よく留学してるのに日本人といるなんてもったいないって話を聞くけど、私は知花ちゃんの存在にとても救われたからそんなことはないと思ってる!
母語で深いレベルの意見交換をできたり、意見を言語化できたことは大きかったな。「同じ日本人として同じルワンダ」を見ても、各々違うことを感じてたの。留学中は極端に”日本人”を意識して遠ざけたり、絡んだりする必要ないし、私は両方をイイトコ取りした!
確かに!日本人といたら英語力は上達しないから遠ざけた方がいい、なんて聞いたこともあるけど一概には言えないし、母語での意見交換はめちゃくちゃメリットかも。
内戦経験したルワンダで思考する「平和とは何か?」
大学ではルワンダの内戦に関する授業を受けていたんだよね。
そう。教室には内戦の影響を間接的・直接的に受けた人や、私のように全く経験したことのない人もいて。それはもう容易には口には出せない、色んな感情が混ざり合った空間だったな。
「ルワンダはどう平和を築いていったんだろう?」という疑問から、ルワンダに関心を持ったと思うけど、実際に現地に留学してみてどうだった?
授業を通して、まず「加害者・被害者」と言われている人たちが紙一重だったということを心に深く刻んだよ。このことは、あらゆる紛争でも同じで、どちらの側にも大切な人がいることは同じなんだよね。こんな重要なことに日本では絶対に気付けなかったと思うな…
ネットやメディアの情報だけでは決して分かり得ないね。
うん、留学前の私の目にはルワンダは平和に見えていたけれど、課題も多く見えたのが現実だったな。今はもちろん大きな武力衝突はないけど、果たして「内なる平和」はどうなのか?国の進めた復興に向けた政策は全員が全員恩恵を受けているのか否か?って色んな疑問が浮かび上がったな。
本当にそうだね。4月は内戦の追悼月間なんだけど、普段は明るいルワンダの知人たちの表情が一変して当時のことについて涙ながら語る様子も前にして…仲の良い知り合いにそんな過去があると思わなかったし、色んな感情が溢れ出て自分も涙が止まらなかった。
当事者じゃないから彼らの痛みは完全には計り知れないかもしれないけど、いつも笑ってた友人につらい過去があったことを知って「人間って残酷なのに、強く生きる姿は美しい」「見かけだけでは分からないな」って強く心を突き動かされたな。
胸が痛いけど、菫ちゃんがルワンダに留学しなければ味わうことのなかった感情で、とても貴重な経験だったことが伝わってくる。
Made in Rwanda で取り戻す自信と誇り
そういえば事後研修の時にファッションブランドを立ち上げたって聞いたような!
うん!留学中に、Made in Rwanda にこだわった靴ブランドを立ち上げたよ。 ルワンダで過ごす中で「先進国は素晴らしい」「自分たちは支援される側」という考えが染み付いていることを肌で感じて。「先進国との垂直関係で、彼らが自信をなくすことになるのは違う」と思ったの。だから自分たちで何かを生み出して「自分たちでもできる」という自信を生み出したいなって!
途上国・先進国の尺度なしにそれぞれの国にいいところがあるもんね。
そうそう!ソーシャルビジネスも例えば「どこかの国の貧困層をブランド」として売っていたら、彼らが貧困から脱却した時に残る「そのブランドの価値」」とはなんなのか?と矛盾を感じたんだよね。本来は「貧困の解決」を目指している事業が解決されることで価値を失ったら?って。
どうせなら売ってないものを作って、ルワンダ国内でも価値が出て売れるものがいいなと思ってアフリカ布で「靴」を作ったんだ!
最初は自分のために作ったんだけど、去年の夏に販売したら好評だったからブランドにしたの!自分たちの手で作った靴を目の前が履いているのを見たら単純に嬉しいし、自信に繋がる Made in Rwanda にこだわったよ。
私たちがアフリカから学ぶことがある
ブランドも「先進国が素晴らしい=憧れ」って思うアフリカの人々の考えが無くなって欲しいっていう思いを込めたんだ。だってそれぞれの国にいいところがあるし、日本もルワンダから学ぶこともたくさんあるから!
在籍していたルワンダの大学では日本への交換留学制度があるんだけど、現地の学生はこぞって応募するの。「日本は素晴らしい。憧れだ!」っていう勢いでね。中には日本のプラスチック再利用は凄いとか言ってた人もいて…プラスチック持ち込みの入国を禁止したり、紙パックを使用してるルワンダの方が素晴らしいな、と感じるけどね。
でしょ?アフリカは世界で紛争大陸として見られがちだけど、一方でどこの国よりもうまく多民族共存している場所だと思うの。それは世界に誇ることで、きっとそういうことに関しては世界をリードしていく存在になれると思う。
そういう面では今後アフリカ諸国から学べることは沢山あるよね!
知らないうちに先進国に住む人々も「途上国より優れてる」なんて思っちゃうこともあるけど、それは全く違うし双方から学ぶことがあると私は思うな。
先進国/途上国の壁がなくなって、菫ちゃんみたく「ルワンダ凄い!留学しよう。」って思う人がどんどん増えていくといいね。
本当に!こないだルワンダの隣のブルンジっていう国から日本に留学しにきた友達の印象的なエピソードがあって….
ある日、その子が乗っていた電車が人身事故で止まったんだよね。日本では残念ながら珍しくはないことだから、車内放送を受けた後に平然として携帯を触り続ける車内の人たちに驚いたって言ってた。「どうして人が命を落としたのに、日本人は平然としてられるんだろう?」って。
なるほどね…確かに、人身事故をいつの間にか「またか」と思ってしまう自分の感覚が怖い。
ブルンジの彼は「日本=平和」なイメージを持っていたけど、実際には日本にも様々な社会問題があることに気づいて「本当に平和と言えるのか?」って問い直したと言ってたの。
戦後80年経った日本が改めて「平和」についてアフリカ諸国から学ばせてもらうこともたくさんあるね。
アフリカ大冒険!留学中のトビタテ生に会いに。
実は留学中に「平和構築」を学ぶために、南アフリカとウガンダを訪れたんだ。54か国もある巨大な大陸・アフリカの中でルワンダしか知らないのはもったいない!って思ってね。
南アフリカは1994年までアパルトヘイト(人種隔離政策)が行われていて、「虹の国」を築き上げた国。その歴史と戦ったネルソン・マンデラを感じるために、ヨハネスブルグへ!ウガンダは、2006年まで激しい内戦の歴史があって、元子供兵の社会復帰支援をする日本のNGOに訪問して、話を聞きに行ったよ。どちらも印象的な経験で、実際にその地に赴いて五感で感じることの重要性を学んだな。
写真:ウガンダ北部のNGO施設にて元子供兵たちと
まさに「百聞は一見に如かず」だね。他のアフリカ諸国も訪れたの?
うん、合計10か国くらい!(笑)せっかくアフリカにいるし、クラスでいっぱいアフリカンに囲まれたのにもったいなと思って沢山足を運んだよ。
他のアフリカ諸国に留学しているトビタテ生に会いに行ったの!観光地への「旅行」ってそこに見たいものがある限りはいつでも行けるけど、同じ時期にアフリカ大陸の地に足つけて奮闘してるトビタテ生に会いに行くのって、ただの旅行以上に貴重なものだと思っていて。
トビタテ生はその時しかその地にいないし、そのトビタテ生しか感じられないこと、学んでいることを聞けるのってすごく自分にとっても大事なことだなって。留学している時の方が敏感に感性が働いてると思うし。
旅行はいつでもできるけど「今」いるトビタテ生に会うのは今しかできないってことか。素敵!
ありがとう!ルワンダという1つの国を見るよりも、もっとずっと同じトビタテ生でアフリカにいる人と繋がれて「アフリカ」をより立体的に見れた。アフリカって未知な場所だけど、54か国もの多様な魅力が詰まってる。それを各国に留学してるトビタテ生を通して教えてもらうのに、すごくワクワクしてた!
写真:南アフリカ🇿🇦にてトビタテ生(稲葉千尋さん・勝見仁泰さん)と
写真:ボツワナ🇧🇼にて留学するトビタテ生(深内百合子さん)
写真:南アフリカ🇿🇦に留学するトビタテ生(山口有紗さん)と
写真:ザンビア🇿🇲にて留学するトビタテ生(森下仁道さん)と
羨ましい。私もやればよかったー!トビタテ生同士がお互いの留学先で交流できるのってすごく素敵!
だよねー!アフリカって一つの国のようにアバウトなイメージを持たれがちだけど、実は54ヵ国と世界で一番国が多い地域。文化や国民性も少しずつ異なっていて面白い!民族の数も多いし、多言語を話せる人たちも沢山いる!
うんうん。紛争や貧困のマイナスなイメージもあるけど、実際はそれが全てではないし、むしろ行くと魅了される部分が多い。
実は、彼らは私たちよりも確実に「共に生きる」ということについて考えているように思う。多くの国に共通してそのような「共生と平和を願う雰囲気」があることを旅して感じたな。
日本にいると、できあがった社会で今を生きるために忙しくて、そのような考えに行き着くことがなかったけど… ふと立ち止まって、アフリカへ行き、多くの国を見た時、改めて自分の今までの行動や、自国の問題、世界の不条理な構造に気づかされた。
私たちはアフリカからまだまだ学ぶことがたくさんある!と改めて痛感したな。今日はロングインタビューありがとう!
こちらこそありがとう!今は感染症の影響でいつアフリカに、もはや海外に行けるのか分からない状況だけど…いつかアフリカ旅しよう!
過去のトビタテ!アフリカ留学特集記事
こんな面白い人たちと繋がりたい!というトビタテ生はぜひトビタテ!アフリカ会 へ!