第79回【トビタテ!アフリカ留学特集 第5弾】:浪江彩子さん「生まれた場所で差のない世界を作る」
こんにちは!トビタテ8期の吉田りのです!
トビタテ!アフリカ留学特集!最終回の第5弾は「女性の労働を切り口にジェンダー問題を学ぶ」をテーマに、マルタ・トルコ・ナミビア・ボツワナ・インドと計5か国に留学されていた浪江彩子さん(新興国コース・1期)です!
アジア、アフリカ、オセアニア、ヨーロッパ、北南米とこれまで38か国(!)を旅してきた浪江さんはその中でも特別「アフリカ」大陸に魅了され、将来はナミビアを拠点にした活動を目指されています。
浪江さんがアフリカに魅了される理由とは?留学中のエピソードと共に浪江さんの素顔に迫ります!
目次
How old are you?を返せなかった私が世界を飛び回る
吉田)今日はよろしくお願いします!記念すべき第1期生!お会いできて光栄です!
浪江)こちらこそ!よろしくお願いします〜!
吉田)計5か国に留学されていたのですね!まだトビタテが始まったばかりの中での留学だったと思いますが、きっかけとなった出来事はありますか?
浪江)トビタテで留学する前には大学2年時の夏休みにオーストラリアへ環境保護のボランティアに、春休みにはマルタへ短期語学留学に行きました。オーストラリアは一人で海外に行く初めての渡航先で、ステイ先の人に”How old are you?”と聞かれて、”I am twenty years old.”さえ答えられない自分の英語力の低さに本気で驚いて(笑)そんな自分が悔しくて、英語を学ぼう!と選んだ先が東京23区の半分の大きさしかないマルタ共和国でした。
吉田)マルタ!最近は語学留学先として人気になってきてますよね。実際はどんな場所なんですか?
浪江)そうなんですよ!こんなに小さいのに、南極以外のすべての大陸から人々が集まる世界の縮図みたいな超国際的な環境がとても刺激だらけで…それに惚れ込んでしまって!もう一度マルタに戻りたいと思ったことと、そこで出逢った様々な国から来た人々のことをもっともっと知りたい!何なら自分の目で世界をみたい!と思い、帰国して早速留学のことを検索したのがきっかけでしたね。そこで「トビタテ!留学JAPAN」を見つけました。見つけたのも、まさかの第一期生応募締め切りの1週間前(笑)
吉田)語学での挫折とマルタで芽生えた新しい世界への好奇心が留学への原動力になったのですね。トビタテの留学テーマである「ジェンダー問題」についてはもともと興味があったのですか?
浪江)大学の授業で社会問題や国際協力について幅広く学んでいたのですが、専門分野がない私には、テーマ設定が実は本当に難しくて。大学の教授と話していた時に「浪江さん、自分がぶつかった、または将来ぶつかると思われる社会問題は?」と聞かれて、そこに思い浮かんだのが「ジェンダー」だったんです。その教授の授業で、自分が女性だからという理由で不利に扱われる社会・世界があることを知って、負けず嫌いな私は「努力しても変えることが出来ない自分のジェンダーで評価されてしまうって何なの?!」と思っていたんですね。
吉田)なるほど!
浪江)だったら私が見たことのない世界で「女性の労働を切り口にジェンダー問題を学ぶ」ことをテーマにして留学ってアリなのでは?と閃いて、トビタテに応募しました。締め切り1分前、ギリギリの提出になりましたが、合格して安堵しました(笑)
吉田)ポテンシャルが半端ないです(笑)各5カ国ではどのようなことをしたのですか?
浪江)マルタでは英語の語学学校へ行き、それと並行してマルタ大学でジェンダー学の講義を受けました。その他の国では「現地の女性とともに働くことで各国の女性の社会進出の具合を探る」ために現地のホテルやデイケアセンター、サファリやNGOで働きましたね。ナミビアでは子供のデイケアセンターで働いて、ボツワナではカラハリ砂漠の近くのサファリで動物保護のボランティア、「女性の労働」を切り口に、現地社会に飛び込ませて頂きました。
吉田)出来るだけ当事者に近い視線になるために現地の女性と”共に”働くスタンス、いいですね。アフリカの中でも特別ナミビアとボツワナを選んだ理由はありますか?
浪江)そうですね、ただ単純に大学の教授に聞きました。「アフリカに行きたいのですが、どこが安全ですか?」って(笑)そうしたら「ナミビアとボツワナは?」という聞いたこともない国を挙げられて。調べもせずに「そこにします!!!」と返答したものの、いざ調べてみると、ジェンダーギャップ指数が日本より高かったり、英語圏であったこと、そして比較的安全なことがわかって、教授のススメは期待を裏切らないと確信しました(笑)もちろん初長期留学、初アフリカだったので、最初は少し怖かったのですが、現地の人の人柄に何度も救われましたね。
ナミビアとボツワナの女性達と“共に”働く
吉田)ナミビアではデイケアセンターで働いていたとのことですが、女性の労働状況はまた違いましたか?
浪江)ナミビアは女性が結構強いし、たくましい。警察官もやったり、自分でビジネスやったりする人も多くて、社会全体的に「女性の力が認められている」国だなって感じましたね。自分のビジネスを極めたかったり、大学に行きたいっていう人もたくさんいて。職業についている女性達も全体の半数以上はいて、女性の活躍の場が他の国よりも幅や可能性が広い国だな、と終始感じていました。
吉田)すごいナミビア!女性議員の比率も日本より多いと聞きました。
浪江)はい、ジェンダー面では想像よりも日本より先進的であって驚きましたね!女性が活躍できる機会が本当に沢山ある。ただ、国民の4人に1人がHIV感染者であるといわれているナミビアでは、やはり社会的に弱い立場になってしまう人々もいて。そうした社会の問題に関われないかと探した結果、HIVに感染していたり、アルコール中毒のご両親を持つ子供たちが集まるデイケアセンターでボランティアをさせて頂くことになりました。こうした子供たちは、家庭で充分に育てられていないケースが多い。だからこそ彼らに学校以外の場所で教育の機会を与え、そして海外から集まるボランティアと接することで、学校では学べない異文化を知り学ぶことで教養を増やすことを目的に活動していました。今ではボランティアがドイツ人が多いからか、ドイツ語がペラペラになってしまった子もいるくらいです。今は覚えているかわかりませんが、写真に写っているこの子達と他10名くらいの子供たちは、当時2015年、ソーラン節が踊れたんですよ!私が必死に教えました(笑)
写真:デイケアセンターの子供達と
吉田)ジェンダーギャップ指数の裏にある日本とは異なる社会問題を抱えているのですね。他に印象的なエピソードはありましたか?
浪江)この写真には特別思い入れがあるエピソードがありますね。この写真は、ある日スラム街の裏の広場で行われたサッカーの決勝戦で勝敗が決まった時の写真なんです。ぼやけていますが、背景がスラム街で、そこから観客が集まり、優勝チームに向かって大勢の観客が走っていきました。
この優勝が決まる前、ある若者から「日本っていいよね。ナミビアに生まれたから、欲しいものも、働く場所も、夢もすぐにかなえられない。」と言われたんです。その若者は、優勝が決まった瞬間に、優勝チームに向かって走っていってしまいましたが、特に厭味ったらしく言ったのではなく、笑顔を浮かべながら「だから日本に行ってみたいなぁ」と言われました。「生まれ育った場所と他を比較する良さと悪さ、生まれ育った場所を悔やむ現実、そして生まれ育った場所によって運命も人生も異なってしまうのか?」と、一人深く考えさせられていたのです。そんなことをふと考えていた矢先にゲームの勝敗がついて。この写真はそんな時に撮った一枚です。生まれた場所を悔やんでいるかもしれない人々が住むスラム街の前には「サッカーというフェアなスポーツの結果に喜び、楽しむ人々で溢れている」そんなギャップがこの一枚には収められている気がします。子供に限らず大人も大きな夢を持っている人が多いナミビアですが、その可能性を狭めている色んな障壁があるのか、と何故かしんみり考えてしまい。それからでしょうか…この人たちに雇用を生み出す仕事をしたいなって思ったりしたのは。
吉田)感慨深いエピソードです。次に行ったボツワナでは動物保護のボランティア活動と言う、またナミビアとは違った環境に身を置かれたんですね。
浪江)はい!サファリで動物の生態系を保持する、動物保護のボランティアをしていました。ボツワナでは観光業による経済収入がとても大きいため、その産業の最前線で活躍する女性と働きたいと思い、このボランティアを選びました。
ボツワナはアフリカの中でも比較的経済発展を遂げている国であり、社会保障も充実していて。驚いたのが「貧困層」に当たる人たちには、国からヤギと牛が数頭ずつ提供されるということ!それを食べても良し、育てるも良し。何故こんなことができるかというと、人口よりもその家畜が多いからという理由だそうです(笑)日本には全くない発想で面白かったですね。そして過剰に生息するロバは、ボランティア先で保護していたライオンをはじめとする肉食動物の餌になります。少しグロテスクですが、ボランティアの仕事として、ロバを殺し、解体し、肉食動物の住む柵(といっても東京ドーム1つ分以上)に投げ込む作業がありました。はじめは気味が悪くて躊躇していましたが、終盤には血が顔についても全く気にならなくなっていて。慣れって怖いなぁと思いました(笑)
写真:インターン先はまるでライオンキングの世界!
吉田)ワイルドすぎます(笑)女性の労働環境はどうでしたか?
浪江)女性が観光業の最前線で働いているようなことは中々なくて、基本的には女性は家で家事をするようなことが多く、男性は外で働くケースが多かったですね。今回のボランティアは、サファリのど真ん中、ライオン🦁の鳴き声がアラームになるような場所(!)で、活動をしていて、そこで働いていた女性たちは泊まり込みで清掃員やお手伝いさんなどの「アシスタント職」に就いており、サファリで働くガイドなどの重職は男性が担っていました。あとはこの活動をしている団体のオーナーはドイツ人で、残念ながら現地の人に対して女性男性関係なく給料を低く設定し、日頃の会話の中でも黒人差別も目の当たりにしました。男女というよりも、まだ肌の色で物事を決める社会があることに幻滅した覚えがあります。私自身もドイツ人のオーナーから軽いいじめを受けていましたし。と、ふと思いましたが、多分これはこの団体が原因かもしませんね。ちょっと選択ミスでしたね。でもボツワナ人の女性スタッフ・男性スタッフともに、本当に仲良くさせてもらいました。それだけが宝物です。
写真:ボランティア先で働く女性たちと
浪江)余談ですが、サファリでカラハリ砂漠に住む狩猟採集民族・サン族に動物の生態系について教えてもらったりもしましたね。彼らは「地球最古の人類」と呼ばれていて、人類の祖先とされているなんて言われていて!舌打ちをするようにして発音されるクリック音を使った言語を使う、なんとも面白い民族で。この植物を煮た水を飲むと頭痛が治るとか、この植物を潰して水と混ぜて飲むと妊娠しない、とか、自然と共存するこのサン族の方々とのお話は本当に興味深かったです。
吉田)お〜私も習っていた南アフリカのコーサ語と同じクリック音!興味深い。
写真:サン族の方々と
留学を終えて
吉田)留学後はどのような進路に?
浪江)大学卒業後に印刷機のメーカーの海外営業本部で働いています!留学で魅了されたアフリカ、そして国際協力に何かしら繋がりたいっていう思いで就活をしていて、世界180か国以上に置かれる弊社の印刷機は、子供の教育のツールであり、間接的に国際協力に貢献しているなと思っていて。そしてソーラーパネルを設置した印刷機がアフリカで使われている写真に驚いて、入社は即決しました。今はアジアの地域を担当していますが、取引先のお客様に私の留学経験について話すとすごく興味を思ってもらえたり、留学中に会った人たちと、仕事の休みを使ってはまた繋がる機会もあったりして、留学で世界を飛び回った経験が活きてるなって感じています。3日間お休みがあったらまた世界のどこかを飛び回っています(笑)
写真:今まで旅をした国はなんと38カ国!
吉田)すごすぎます(笑)まさにTravel Addict!
浪江)留学で培った「どんなところでも生きていける自信」と「危険に対する鈍感力」に拍車がかかって旅行が大好きになっちゃって(笑)旅って「世界平和」の第一歩だと思っていて、旅を通して生まれる、人との繋がりが私はたまらなく好きですね。現地で出逢って、会話と笑顔を交わして、日本人としての私を通してコミュニケーションを取っていると、日本を意識してくれるようになる。ナミビアで会った青年にとって私は、彼が初めて見る日本人。私の印象=日本の印象になるわけです。つまり、「日本人である私を好きになってくれる」=「日本を好きになってくれる」と言っても良いと思っています。これが広がれば、国を愛するようになり、それが全世界の人々がそう思えば、世界ってそれで平和になると思うのです。これも一人ひとりがトビタテ生として、日本代表として海外の地に足を運んでいるのであれば、世界平和にきっと繋がっているはずだと思っています。今からでも全く遅くないので、トビタテに限らず海外に行くチャンスがある方、日本代表だと思って、あなたのファン、日本のファンを作ってきてください!それが世界平和に繋がっています。
吉田)共感します!アフリカにはこれからも関わり続けたいと思っていますか?
浪江)答えはもちろんYES!場所は決めていませんが、おそらくナミビアが一番行きやすいかなぁと思っています。トビタテで渡航した2015年以来、お付き合いしている恋人もいるので。それからずっと、14,000km距離のある遠距離恋愛中です(遠距離恋愛の相談あればいつでもどうぞ!)将来的に日本とナミビアを繋げたり、現地の雇用を生み出すビジネスを現地の人と一緒に作りたいと思っていますね。ズバリ夢は「年齢×2の国を周ること」「生まれた場所で差のない世界を作ること」!
写真:ナミビア人の恋人と南部のアフリカ布衣装を身に纏う
吉田)みなぎる挑戦心に圧倒されます。最後に浪江さんの魅了されるアフリカの魅力を教えてください!
浪江)そうですね。喜びを全身に表すこと、何を言っても笑いに変えてくれる楽観的なところ、失敗を恐れずむしろ失敗・経験から学ぶ精神がすごいこと、生命力にあふれていることですかね。日本と比べるとそれは病気が蔓延していてかわいそうって思われるのかもしれないけれど、彼らはいつ死んでもいいように「今」を一生懸命生きているし、自分の人生を喜びや幸せで埋め尽くしたいと思っているし、「明日やればいい」と思ってないですね。あとは人が好きで人懐っこくて、家族・友人を大切にする…(あげたらキリなくなっちゃいました笑)
吉田)最高です(笑)本日はありがとうございました!いや〜楽しかったです。ナイジェリア料理も美味しかったあ(インタビューは絶品ナイジェリア料理屋さんで開催しました🇳🇬)
浪江)こちらこそありがとうございました!アフリカ仲間としてこれからもよろしくお願いします!
吉田)こちらこそよろしくお願いします!
編集後記
第5回にわたるトビタテ!アフリカ留学特集は今回で一旦終了です。トビタテ生の中でもマイノリティな「アフリカへの留学」は、そこに飛び込む人の好奇心を上回る多くのエピソードや出会い、地球の裏側に行ったからこそ対比した日本との違いなどなど色んな各国での話を聞けました。留学のお話を聞いたり、執筆していたり、その作業全てをエンジョイしながら特集を書かせてもらっていました(笑)やっぱりアフリカも、そこに集う人々も面白いですね〜。
こんな面白い人たちと繋がりたい!と言うトビタテ生はぜひトビタテ!アフリカ会へのjoinしてみて下さいね!
追記:本特集以前もアフリカ諸国に留学していたトビタテ生のインタビュー記事も必見です!
向地 由さん(新興国コース・4期)
留学先:ルワンダ🇷🇼「ヒロシマ×ルワンダ×平和学」
赤尾 紀明さん(多様性人材コース・1期)
留学先:マラウイ🇲🇼、タンザニア🇹🇿、マダガスカル🇲🇬、ザンビア🇿🇲「BOP層ビジネス」
伊藤 勇気さん(国際ボランティア・高校3期)
留学先:モロッコ🇲🇦「マイノリティの文化に触れて」
篠田 萌子さん(理系、融合・複合系コース・5期)
留学先:チュニジア🇹🇳、イタリア「国内外問わず、活躍できる研究者へ!」
それでは次会うときまで、Sala kakuhle!(南アフリカ🇿🇦のXhosa語でさようなら!)